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組織活性化のヒント byソフィア Headshot

幸せな職業病

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バスの中で子どもを泣き止ませてくれた見知らぬ女性


上の娘がまだ赤ちゃんだった頃、飛行機で帰省した帰りに、羽田空港からのリムジンバスを利用したことがある。時刻は20時過ぎ、バスは渋滞にはまってなかなか動かず、抱っこ紐の中の娘がぐずり始めた。疲れて居眠りをしている出張帰りのビジネスマンが多い車内で、ギャン泣きされるのは困る。揺すってみたり話しかけてみたり、私は娘をあやすことに必死になった。

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写真素材:ぱくたそ

とつぜん娘が泣き止んだ。不思議そうな顔で一点を見つめている。その方向を見ると、遠くの席に仕事帰りらしき女性が座っていて、自分のバッグについた花のチャームを振りながら、こちらを見てニコニコしていた。その女性のおかげで気分が変わったのか、娘はそこから泣くこともなく、無事に最寄りのバス停に到着した。本当に救われた気分だった。

バスを降りるとき、感謝を伝えたくてその女性の方を見た。彼女は、「私は別に何もしていませんよ」というような顔で窓の外を眺めてていて、目を合わせてはくれなかった。きちんとまとめた髪に、上品なメイク。私服ではあったが、おそらく航空会社の客室乗務員か、グランドスタッフだろう。

自分の仕事が好きだから「幸せな職業病」になれる


仕事以外の場所で、つい仕事上のくせが出てしまったとき、人は苦笑いしながら「職業病でね」と言う。バスで出会った女性もきっと、子どもがぐずって困っている乗客を助けることが仕事中によくあって、仕事帰りのバスでもとっさに同じ行動をとったのではないだろうか。

劣悪な労働環境が原因でかかる本来の意味での職業病はなくしていくべきだが、前述の女性の行動のような、幸せな職業病は大歓迎だ。

かくいう私も、顧客企業の組織内コミュニケーション支援、という仕事をしている関係で、「人の職場をじろじろ観察してしまう」という癖がある。

仕事で客先を訪れた時であればまだしも、自分が消費者として何かのサービスを受けたり、買い物をしたりする際にも、働いている人の表情や対応、バックヤードの様子(カウンターの中が片付いているか、どんな掲示物が貼られているか)などが気になってついつい見てしまう。

たまに自分にあきれるが、嫌な気はしない。単に興味があるし、面白いからだ。

有名な「3人のレンガ職人」の寓話ではないが、やはり、自分の仕事の目的を理解していてこそ、仕事を好きになり、仕事に誇りを持てるのではないか。

たぶん、仕事の目的を理解していなかったら「幸せな職業病」にはならないだろう。なぜなら、仕事以外の時間に自分が直面することと、自分の普段の仕事を結び付けて考えることができないだろうから。

また、「職場の人間関係が悪い」「仕事がきつく、待遇が悪い」「仕事量や仕事内容が、自分のキャパシティーを超えている」「キャリアビジョンを描けない」など、さまざまなきっかけで、人は仕事に対する意欲を失う。それは、仕事内容にはかかわらない。

地域のお祭りで目撃した、残念な会社員


職業病ゆえに人の仕事を観察していて「残念だなあ」と思ったエピソードがある。

子どもと一緒に地域のお祭りに出かけたときのことだ。ローカルアイドルグループのライブがあり、私たちも人だかりの中で鑑賞していた。

私たちのすぐ後ろに、周囲に聞こえる声で雑談している数人の男女がいた。お互いに突つきあい、ニヤニヤしながら、そのアイドルグループの容姿やパフォーマンスに散々ケチをつけている。

彼らは、消費者向けのサービスを全国で展開する企業の社員だった。近くの商店街に新しく出店したばかりで、宣伝を兼ねて、お祭りに子供向けの屋台を出していたのだ。お祭りの客がみんなライブの方に集まって手が空いたので見に来たのだろう。

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写真素材:ぱくたそ

私は気が気ではなかった。周囲はみな地元の人で、大人も子どももそのアイドルグループが好きで集まっているのだ。しかも、彼らのすぐ近くにいたのは、もちろん彼らはそんなこと知らないだろうが、そのアイドルグループのメンバーの家族や友達だったのだ。

何を思い、どう働くのか


その会社員たちは、もしかしたら普段は都市部のオフィスに務めていて、休日出勤を命じられてここまで来ていたのかもしれない。何で自分がこんな仕事を、と不満もあったかもしれないし、田舎のお祭りでローカルアイドルのライブなんて冴えないと思っていたかもしれない。こんなところで宣伝してもたいして売上にはつながらないと、やる気になれなかったのかもしれない。

でも、このお祭りに集まっているのは彼らの新しい顧客になるかもしれない人たち。そんな中で彼らは、胸元に社章をつけたまま、どれだけの敵を作ったのだろう。

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写真素材:ぱくたそ

彼らの仕事は地域の顧客がなければ成り立たないものだ。

自分たちの生活が何に支えられているのか、普段意識することはないのだろうか。自分たちの会社の事業に誇りを持ってはいないのだろうか。創業者がどんな思いでこの事業を立ち上げたのか、どんなビジョンのもとに、どんな風に社会の役に立ちたいと思っているのか、もっと社員一人ひとりとコミュニケーションされていたら。そして一人ひとりの社員が「大切にされている」と感じられるような職場環境だったら。

ほんのささいな出来事だったが、そんなことを考えずにはいられなかった。これも職業病だ。

あなたの職場では創業者の想いや、会社のビジョンが語られているだろうか。それぞれの仕事の目的について、日頃考える機会があるだろうか。ところで、あなたの職業病は、何ですか?

Text by seo
Sofia コラムより転載