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宮田拓弥 Headshot

「IoTコマース」時代到来。700ものAmazon Alexa搭載製品が登場した今年のCES。

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新年の恒例行事、毎年1月にLas Vegasで開催される家電見本市 CESに参加をしてきました。

4-5年前くらいの停滞感が嘘のように、ここ数年はIoT、自動車を中心に本当に大きな盛り上がりを見せています。今年もさらに参加者が増えたのではないでしょうか。

余談ですが、いつも悩まされる移動手段も、今年からUBER/Lyftが公式に認められるようになり、かなり改善されたような気がします。会場毎にピックアップ場所が決まっているので、それを頭に入れておけば悪夢のようなタクシーの列に並ばずに会場間をスムーズに移動できます。

ただ一部混乱もあり、初日にLyftには乗車できているのに会場から抜け出せず、10分の距離を1時間半!かかるという悲惨な経験もしました。こうした問題も解決してくれるスマートな自動運転ライドシェアの到来が待たれます。

さて、私の中での2015年のキーワードは「IoT」(ブログ:IoT大爆発。今年のCESは「スマホの次」へのターニングポイント。)、そして2016年のキーワードは「ライフスタイル」(寄稿:「ライフスタイル」──目新しさに欠けた中でも感じたIoTの第2フェーズ)、でした。

そして、本年2017年のキーワードは「IoTコマース」です。

(参考:二年前のポスト「「IoTコマース」生活に入り込むアマゾンの戦略」)

WiredWSJCNBCVergeなど多くのメディアがこぞって書いている通り、今年のCESはブースを出展さえしていないAmazonのボイスアシスタントAlexaが圧倒的な存在感を示していました。

現時点では、ほとんどが「家電と話ができるようになった」というレベルの実装なのですが、いくつかの調査結果を見て見ると「家電からモノやサービスを注文する」IoTコマースの時代の入り口に立ったのだということが分かります。

700ものAmazon Alexa対応端末が発表


#1年以上前に撮影した動画ですが、「そもそもAlexaって何?」という方はこちらの動画をどうぞ。

2014年に発売されたAmazon Echoですが、去年のCESの時点ではAlexaの3rd Partyへの組み込みの発表は、Fordの自動車くらいでした(展示はなく、提携に発表だけでした)。それが今年は、何と700ものAlexa搭載デバイスが発表されました。

下の写真はVolkswagenのブースですが、騒がしい会場でもちゃんとデモができるように防音室を設けているメーカーが多数ありました。アメリカの家電市場で最大のシェアを持っている総合家電メーカーWhirlpoolのホームページを覗いても商品数は100そこそこであることが考えると、700という数字はとてつもない数字だと思います。

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カテゴリーも様々で、自動車絵本読み上げスマホ冷蔵庫洗濯機ロボットテレビランプほとんどの家電製品といってもいいくらい大量のAlexa搭載製品が発表されています。去年の年末商戦で大ヒット商品となり、一年前の9倍のセールスを記録したAmazon Echoの総出荷台数は、ようやく1000万台に近づきつつあります。

今回3rd Party製品が大量に加わったことで、Alexa搭載家電は、スマホを追いかける億単位の台数に世界に入ることになりそうです。

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このFordの公式動画を見ると、どのようにAlexaが様々なデバイスに組み込まれるイメージが湧くと思います。

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最初の、「寒い日に家の中から車の暖房をつける」というのは先日のTeslaに関してのポストでも書きましたが鉄板のユースケースです。BMWHyundaiもすでに同様のSkill(Alexa向けのアプリのようなもの。開発者が開発キットを使って自由に開発可能。)を提供していますが、非常に人気があるようです。

後は、「今いる場所から一番近くのカフェへナビ」もかなり便利そうです。ミーティングの合間にカフェで時間を潰したいときにいちいち車を止めずに行けるのはいいですね。

それ以外にも、いくつかのユースケースが紹介されています。
  • ニュース:自分の好きなスポーツチームの試合結果を聞く。
  • コンテンツ:家で聞いていたAudible(本の読み上げサービス)の続きをきく。
  • スマートホーム:ガレージのドアを閉める、ライトをつける。
  • コマース:洗剤を買う。
「自宅から車を操作する」Skillは、これまでも自動車メーカーがEcho向けに提供していましたが、今回自動車自体にAlexaが実装されることで、「車から色々な操作をする」ことが可能になりました。

今回LGのプレスカンファレンスの中でAmazonのVPが言っていましたが、3rd PartyがAlexa向けに機能を提供できるSkillの数が7,000に達しているようです。つい先日までは1,000くらいしかなかったので、年末くらいから幾何級数的に増加をし始めているようです。

今回一気に700も対応デバイスが増えたことで、Skillの数もiOSやAndroidのアプリのように数十万、百万という単位の世界にまで行くのも遠くないかもしれません。

 「食材が届く冷蔵庫」がついにやってきた。


今回本当にいろんな家電にAlexaが実装されたわけですが、個人的に一番インパクトがあると考えているのが「冷蔵庫」です。

Amazon Echoに関して、二つの面白い調査結果があります。

一つ目は、「Echoのユースケース」に関して、実際のユーザ(約1,300人)に聞いた調査です。

非単身の世帯(82%)で、キッチンに置かれている割合が多い(51%)Echoですが、タイマーをセットする、音楽を聞く、ニュースを聞くというのが三大利用シーンのようです。我が家でも、毎日のようにEchoで好きなアーティストのプレイリストをかけています。

注目すべきは、買い物関連の利用の多さで、45%が買い物リストにものを追加し、32%が実際にAmazonでものを買っているのです。1/3のユーザが実際にものを買っているというのは想像以上でしたが、それを理解するヒントは先日日本でも発売された「Dashボタン」にあります。

私もコーヒーマシンにPeet's CoffeeのDashボタンを貼り付けて、コーヒーがなくなったらこのボタンを押して注文するのが習慣になっています。このDashボタンと同様に、洗剤などの家庭用品(31%)、ひげそり(26%)、ペット用品(15%)など、繰り返し注文する消耗品がAmazon Echoから注文されているのです。

台所で食器を洗っている時に洗剤が切れて、その場で「Alexa、洗剤買っておいて」というイメージでしょう。

二つ目は、2020年までの「Echoの売上予測」です。

昨年を見て見ると、Echoの「ハードウェア売上」が$1.058B、「コマース売上」は$279Mとハードウェアからの売上が多くを占めていることが分かります。来年以降ハードウェアの売上も成長していきますが、2018年にハードウェアとコマースの売上が逆転し、2020年の時点では6割以上がコマースからの売上で、$7B以上の規模に達すると予測されています。

金額はあくまで予測ですが、一つ目の調査結果でユーザがEchoから実際にショッピングをしているというデータを見ると、今後コマースの売上高が伸びて行くということは納得がいきます。

そして冷蔵庫の話です。当然のことですが、冷蔵庫は牛乳、肉など冷蔵保存が必要な食品を収納するための家電製品です。

今回、Alexa対応冷蔵庫を発表したLGとSamsungは、「冷蔵庫のコネクテッド化」に非常に積極的で、大きなタッチパネルを前面につけ、レシピや天気予報が見れる冷蔵庫を2-3年前からCESでも展示していました。しかしながら、冷蔵庫にそうした情報が表示されるだけというのは、あくまでNice to haveに過ぎないと感じていました。

ただ、今回の冷蔵庫へのAlexaとAmazon Freshとの組み込みはそれとは違う大きなインパクトがあると思います。

Amazon Freshは、2007年にスタートした「生鮮食品を即日で届けるサービス」で、現在17都市で展開しています。

LGが今回発表した冷蔵庫には29インチの巨大なタッチパネルがついており、メモがかけたり、中に入っている商品の賞味期限をトラッキングする機能などがあります。画像認識まではついていないようですが、冷蔵庫の中が見渡せるパノラマカメラまでついているといいます。

夕食の準備をしていて足りない食材に気づいた時にAlexa経由で注文し、すぐに届けてもらうというシーンは容易に想像がつきます。また車で帰宅途中にレシピを考えて、それに足りない食材を車からAlexa経由で注文するというシーンもあるのではないでしょうか。

現時点では、ユーザのアクションを必要としますが、早晩、牛乳がなくなると自動的に届く、という世界になるでしょう。

すでにコネクテッド対応している既存の車に今月からAlexa対応のアップデートをしていくFordに比べれば普及スピードは遅いかもしれませんが、トータルで全米25%程度の家電シェアを持っているLGとSamsungが対応製品を出すことで、「食材が届く冷蔵庫」は今後大いに普及が期待できます

バリューチェーンを押さえるAmazonとどう対峙するか


今回のCESを踏まえて、Amazonの今後、家電の今後を考えると非常に面白くもあり、恐ろしくもあります

Amazonは、急成長している自社製品のEchoだけでなく、今回一気にAlexaファミリーの製品が 増えたことで、スマートホームのOSとなったと表現するメディアも多数ありました。確かに、去年まで存在感があったGoogle傘下のNEST、Samsung傘下のSmartThingなどはどこに行ってしまたのかという感じでした。

またこれまで見てきたように、Echoの1/3のユーザはAlexaでショッピングを楽しんでおり、Alexa搭載製品が、Amazonでのショッピングをドライブすることは間違いありません。

さらに、Amazonはプライベートブランドにもどんどん力を入れています。新しいところではファッションなどもどんどん自社製品を展開しています。電池などではすでにオンラインショッピング全体の1/3がAmazonブランドという調査もあります。

そして、年末には革新的なリアル店舗Amazon Goの発表もありました。まだ開店していませんが、テクノロジーとデータを駆使した店舗は、既存のリアル店舗チェーンの強力なライバルになることは間違いありません。

Amazonは、「ハード」「コマース」「プライベートブランド」「店舗」とショッピングに関わるバリューチェーンの全てを押さえにかかりつつあります。これは家電メーカーだけでなく、食品メーカー、小売など様々な業界にとってインパクトのある話になりそうです。

唯一、Amazonと正面からぶつかる戦略をとっていると言えるのが、中国のAlibabaです。

今回Alibabaは自社ブースを出しており、自社OSのYunOSを搭載した自動車や冷蔵庫を展示していました。地味ではありますが、中国市場ではAmazon同様ハードからショッピングまで押さえにいく戦略です。

それでは、家電メーカーはどんな戦略をとり得るでしょうか?

今回、家電メーカー、自動車メーカーとも日本メーカーでAlexaを前面に出した発表や展示はなかったようですが、Alexaを組み込むのは「無料」なので、LGやSamsungのようにAlexa搭載製品を作るというのは一つの手です。

ただ、スマホでApple/Googleが一人勝ちなのを見てわかるように、単純にプラットフォームに乗っかれば良いという話ではありません。しかも、AlexaはショッピングというAmazonの強力なマネタイズエンジンと結びついており、PB戦略を推し進めてマージン率の改善を実現しつつあるAmazonが、今後IoTでどのような戦略をとってくるのかに大いに左右されます。

「Alexa祭り」に沸いた2017年のCESですが、家電メーカーにとっては、Alexaを組み込むのか、それとも自社で開発するのか、また第三の道を選ぶのか、何れにしても非常に難しい話です。

何れにしても、少し停滞していたスマートホームの市場も、Alexaという強力なプラットフォームの登場で大きく動きそうです。Amazon、Alexa、そしてそれを取り巻く家電、自動車業界には今後も注目したいですね。