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絶滅危機の渡り鳥シジュウカラガンが復活、そっくりのカナダガンは消えた

2016年01月21日 18時39分 JST | 更新 2017年01月19日 19時12分 JST

日本に古くからいる在来種シジュウカラガンと外国から持ちこまれた外来種カナダガンは、黒い首や白い頬などの特徴、そして運命が人の都合で翻弄されたことも共通しています。

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越冬のために日本に飛来したシジュウカラガン=2015年11月21日、大崎市美里町、日本雁を保護する会の瓜生篤さん撮影

この冬、絶滅危惧種のシジュウカラガンが、ロシアから宮城県大崎市などにたくさん飛んできています。1月初旬までに2千羽以上確認されました。昨シーズン(2014年11月~15年1月)、絶滅をのがれる最低の数とされる1千羽を超え、今シーズンはその倍に増えました。

数の回復をめざして、仙台市八木山動物公園と日本雁(がん)を保護する会が30年前に始めた取り組みが実を結びました。八木山動物公園副園長の阿部敏計さんは「こんなに早く、これだけの数になるとは思っていなかった。シジュウカラガンの未来はさらに明るくなった」と喜びます。

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シジュウカラガンの飼育スペースで話す八木山動物公園副園長の阿部敏計さん=猪野元健撮影

シジュウカラガンは、北海道の北東の海に連なる千島列島やアメリカのアリューシャン列島で繁殖します。冬はきびしい寒さをしのぐために南へ向かいます。えさが豊富で、生息しやすい湿地がある宮城県が国内最大の越冬地です。

数が減ったのは、20世紀はじめに千島列島周辺の島々に天敵のキツネが放されたことが原因です。キツネを育てて、毛皮を人用のコートに使う目的でした。シジュウカラガンは羽が生えかわる夏の時期、空をうまく飛べません。キツネにおそわれました。

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ロシアのエカルマ島での放鳥のようす=日本雁を保護する会提供

日本へは少なくとも100羽単位で飛来していたシジュウカラガンは、1960年代には数羽に減りました。八木山動物公園と日本雁を守る会は、アジアでの羽数回復計画をつくり、83年に実行に移しました。シジュウカラガンを繁殖させ、協力を得たロシアのカムチャツカ半島南部の研究施設に運び、ヘリコプターでキツネのいない千島列島に運んで放鳥しました。

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ロシアのヘリコプターでシジュウカラガンを運ぶ阿部さん=本人提供

2010年までに計13回、551羽を放鳥。約10回の放鳥を経験した阿部さんは、「群れをまとめる10歳以上なら日本に引き連れてきてくれる」などと考えていましたが、失敗の連続でした。日本に来た数少ない個体が2歳未満だったことがわかり、放鳥の中心を2歳未満に変更しました。05年の大寒波をきっかけに、日本に飛来したシジュウカラガンが子どもや孫を連れて宮城県に渡ってくるようになりました。

国を越えての挑戦は、資金面でも苦労がありました。ヘリコプターなどの費用が足りず、08、09年は放鳥ができず、寄付金を呼びかけてお金を集めました。阿部さんは「数が増えたのは、30年間苦しくてもみんなで協力して続けてきたから。一度失われた生態系をもどすのには、長い時間と労力がかかることを、子どもたちに知ってほしい」と話します。

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上がシジュウカラガン、下がカナダガン。似ていますが、シジュウカラガンの方が首とくちばしが短い、胸は灰褐色といった違いがあります=八木山動物公園のガン生態圏

一方、カナダガンは、日本の自然に悪影響を及ぼす海外起源の動物として、特定外来生物に指定されています。環境省は12月に「カナダガンの防除を完了した」と発表しました。特定外来生物の根絶は初めてといいます。

カナダガンは北米原産で、日本に持ち込まれた観賞用の個体が野生化しました。1985年に初めて静岡県富士宮市で2羽が確認され、富士五湖周辺に定着。2010年には、関東地方で約100羽に達しました。異種間での交雑が確認され、14年に特定外来生物に指定されました。

特定外来生物とは、人間の活動により他の地域から持ちこまれた外来生物で、生態系や農林水産業、人の生活に害をおよぼす可能性がある生き物。カナダガンは、在来種のシジュウカラガンと交雑する恐れがありました。環境省は、民間グループなどと協力して成鳥79羽、卵150個以上を駆除し、「国内ゼロ」を達成したといいます。 

かながわ野生動物サポートネットワークの獣医師、葉山久世さんは、環境省のカナダガンの調査に協力したメンバーの一人です。2004年に釣り糸に足をからませて弱った個体を治療したことが、カナダガンとの出会いです。それから野生化したカナダガンの生息状況を調べてきました。

葉山さんは「本来、日本にはいない野生のカナダガンを自然の中で放っておくことはできない。でも、悪いのはカナダガンではない」と話します。「鳥だけでなく、カブトムシやクワガタなどもふくめ、外来の生物を飼育する人は最後まで責任をもってほしい」