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福島県広野町に開校した「ふたば未来学園高校」入学式で、校長が1期生に語ったこと(全文)

2015年04月15日 15時10分 JST | 更新 2015年04月15日 15時18分 JST

東日本大震災による津波と原発事故の二重の被害を受けた福島県双葉郡の広野町に、県立ふたば未来学園高校が開校しました。入学式で校長先生が新入生に向けて語ったこととは――。(全文)

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福島県立ふたば未来学園高校の入学式で式辞を述べる丹野純一初代校長=福島県広野町

新入生152人のうち、東京電力福島第一原発がある双葉郡の出身者が約100人をしめます。原発事故により県内外に避難し、再び双葉郡に戻ってきました。校長に若くして抜擢されたのは、県教育委員会高校教育課に務めていた丹野純一先生(48歳)。生徒たちへの思い、学校運営の決意をこめた4月8日の入学式の式辞を紹介します。

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 先ほど、入学を許可いたしました152名のみなさん、入学おめでとう。みなさん一人ひとりの入学を心から歓迎します。

 ここまで本当に良く頑張りました。震災と原発事故という人類が経験したことのないような災害に見舞われ、ふるさとを離れた地で5度目の春を迎える生徒もたくさんいます。避難先を点々とし、慣れない土地や学校での生活で筆舌に尽くし難い困難に遭い、いまだにそれに向き合っている生徒も少なくないと思います。避難している人に限らず、地震、津波などによる様々な被災、被害からの復興と放射線に対する不安など、多くのみなさんが様々な困難に直面している状況はいまも続いています。

 少子高齢化、過疎化、産業空洞化などが全国的に深刻化する中、震災と原発事故はこれらの課題を先鋭化させ、双葉郡をはじめとする福島県は、いわば「課題の先進地域」となっています。私たちはこれまでの価値観や社会のあり方を根本から見直し、持続可能な循環型社会の実現、自立した新たなコミュニティや町づくり、再生可能エネルギー社会の実現など、新しい生き方、新しい社会の建設を目指し、変革を起こしていくことが求められています。震災と原子力災害を経験した私たちに未来から課せられた使命、ミッションということもできます。

 私たち人間は、理想とする未来の姿を思い描きながら、いまここにある現実を少しずつ少しずつ変えることができる存在です。それは、未来を創造することに他なりません。逆に人間は、既存の生き方や価値観、システム、社会のありかたに黙従し、思考を停止したままでも生きていくこともできるのです。しかし、そこに自由はありません。もはや約束された未来もないのです。震災と原発事故を経験した私たちは世界中の誰よりもそのことをわかっています。 

 この学校は、双葉郡の方々の「双葉の教育の灯を絶やすことなくともし続けたい」という強い願いと、復興を実現し、先進的な新しい教育を創造しようとする国など関係機関の熱い思い、そして何より震災後、子どもたちの中に芽生えた復興を成し遂げようとする強固な意志、夢を実現しようとする意欲、新しい価値観を創造する高い志を礎として誕生しました。

 みなさん一人ひとりがこの学校の歴史と伝統を築き上げるパイオニア、開拓者です。目の前には大きな海原しか見えません。道はあなたたちがつくるほかないのです。この地から、この時から、未来創造をはじめようではありませんか。

 校章が示す通り、未来は私たち一人ひとりが互いに手を取り合って、建設していくものなのです。人間は自分の生き方を自分で選ぶことができるのです。私たちは私たちの手で社会を変えていくことができるのです。自らを変革し、地域を変革し、社会を変革する「変革者たれ」。この言葉をこの学校の建学の精神を表す言葉としてここに刻みたいと思います。

 私たちが変わるために、社会が変わるために大切にすべき価値観や考え、変革のための理念は何か、それは「自立」「協働」「創造」であります。既存の価値観やシステムに過剰に依存することなく、自立心を持って、自分の頭で考え抜く、主体性を身につける「自立」。そして、どんな困難な課題であっても力を合わせて立ち向かう「協働」。さらにこれまでの社会の良さに磨きをかけながら、新しい生き方や社会をつくりだしていく「創造」。ふたば未来学園高等学校は「変革者たれ」という建学の精神のもと「自立」「協働」「創造」を校訓として、未来創造型教育を力強く展開していきます。地域とともに。世界とともに。

 次に、未来創造型教育の方針と生徒のみなさん一人ひとりに期待することについてお話しします。

 第一に、生徒が主体的に動く学校にしていきます。生徒のみなさんは受け身ではなく、自ら動いてください。動くと何かが変わり、いろいろな人との出会いの中で、自由で豊かな学びの空間がつくり出されていくことでしょう。

 第二に、失敗を恐れず、困難な課題に挑戦していく生徒を支え応援していく学校にします。答えの見つからないような課題でも、果敢に挑戦してください。若者は、失敗や挫折を糧に成長していきます。失敗を恐れず、自分が新しい生き方、新しい地域、新しい価値の創造者となる気概を持って、いろいろなことに挑戦し、本校での先進の学びに取り組んでください。中学校時代に思うように力を発揮できなかった生徒は、じっくりとやり直していきましょう。先生と仲間は失敗と挫折から何度でも立ち上がる君を全力で支え、応援します。

 第三に、現実社会のなかで学ぶ学校にしていきます。困難な課題が山積する現実社会での課題解決型学習、アクティブラーニングといいますが、これを中心にして主体的な学び、協働の学び、創造的な学びにより、未来を創造する新しいタイプの授業を展開していきます。どんどん現実社会に飛び出してください。そして、原子力災害からの復興や地域再生、スポーツを通して、みんなに元気や勇気を与えるなど、それぞれの夢を現実社会のなかで膨らませ、鍛え、学校で学んだ知識を現実世界でいかして、未来につなげていってください。

 第四に、地域コミュニティや世界とともに学ぶ学校にしていきます。国内外の高校生と積極的に交流したり、地域コミュニティと変革のための理念を共有し、困難な課題の解決のためにともに学び、変革を成し遂げていきましょう。

 第五に、夢を開く窓がたくさんあるような学校にしていきます。そのために、教育復興応援団のみなさまをはじめ、ご来賓のみなさまの力添えをいただきたいと存じます。生徒のみなさんはいろいろな窓を開き、本物に触れてください。そして、将来、夢を実現したあかつきには、本来の窓のひとつになってください。

 

 第一期生のみなさん一人ひとりが未来です。それぞれの思い描く未来をこの学校で実現していきましょう。背負いすぎないで、つながりあって、このすばらしい校歌を口ずさみながら。そして、みなさんが蒔いた一粒の種が、この地に根をはり、双葉から出た芽がやがて見上げるような木となり、たくさんの実を結んでいくことを夢見て、ともに歩んでいきましょう。(保護者向けの言葉など一部を省略しました)

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福島県立ふたば未来学園高校の記事は、朝日小学生新聞4月10日、朝日中高生新聞4月12日付に掲載しました。新聞についてくわしくはジュニア朝日のウェブサイト(http://asagaku.com)。