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【地域発】地方自治体を赤字にするのは難しいです(林和弘)

2013年10月23日 23時34分 JST | 更新 2013年12月23日 19時12分 JST

先月末、総務省が「平成24年度市町村普通会計決算の概要」の速報値を発表しました。

全国の1742市区町村の中で、「赤字」だった団体は"ゼロ"。1つもありませんでした。

「市町村の財政は厳しいはずだから、赤字決算のところはたくさんあるだろう。」

「無駄遣いが多いので、きっと、赤字が出るに違いない。」

これが世間一般の感覚でしょうが、自治体財政のしくみは、非常に特殊です。

■赤字決算は至難の業

自治体の予算は、歳入=歳出です。

歳入も歳出も、個々に金額を見積もり、年度が始まる前の議会(通常2月議会)に予算案を上程し、審議・議決を経て、新年度から執行される流れです。

年度途中でも、必要な歳出・歳入予算の変更は、基本的に6月、9月、12月、翌2月(もしくは3月)の定例議会で、補正という形で行われます。

 

歳出予算は、色んな費目や項目、細節、事業に分かれており、原則的には、決められた個別の枠の範囲内で執行するので、その総計である歳出予算総額を超えて支出されることはありません。

一方、歳入ですが、主なものには、税(住民税や固定資産税、自動車税など様々)や、地方交付税、国庫支出金(いわゆる国からのひも付き補助金など)、起債(いわゆる借金)などがありますが、これらは、年度が始まると、徐々に金額が判明していき、最終的に、年度末の3月の時点で、概ね、収入額が固まります。

 

通常、歳出は"多めに"、そして歳入は"少なめに"見積もり、予算計上します。

歳出を"多めに"見積もるのは、税金の使途がきちんとチェックされるように、予算の変更には議会の審議・議決が必要であり、制度的に予算の流用や機動的な変更ができないためです。そのため、特に法律等で定められた義務的な経費などは、不足が許されないので、足りなくならないよう"多めに"見積もるわけです。

逆に歳入は、必ず収入できる見込みのあるものを、堅めに見積もります。

そのため、普通に必要な分だけ執行していくと、年度末(お金の動きの期限である出納閉鎖は5月末日)に会計を締めると、必ず、なにがしかの余り(不用額と言います)が生じ、結果的に、黒字決算となります。

また、仮に、3月の時点で、「予想外に税収が上がらなかった」とか「予定していた地方債が借りられなかった」といった突発的な事情が判明した場合には、もう支出済みの歳出を戻すわけにはいかず、歳出の執行を抑制するにも、残りの日数が少ないと効果も限定的だったりするので、やむを得ず「財政調整基金」などを取り崩し、歳入予算に計上して、帳尻を合わせる、という方法をとることになります。

財政調整基金は、財源不足時の緊急穴埋めや、災害時の復旧対策など、いわゆる非常時に使うためのお金を貯めておく、自治体の「貯金箱」のような存在です。

一般的に市町村では、その規模により、数億から数十億円以上の財政調整用基金を持っているので、赤字決算になることは、まず考えられません。

1年前、平成23年度の決算では、赤字の団体が、千葉県銚子市と青森県鰺ヶ沢町の2団体ありましたが、いずれも、簡単に言えば、貯金箱が空だったのが原因です。

今回は両団体とも赤字から脱却し、すべて黒字団体になっています。

■綱渡りの財政運営が続く町

鰺ヶ沢町は、平成20年度の決算で、自治体健全化法における「財政健全化団体」への転落が懸念されるなど、これまで5年連続で赤字決算を繰り返してきました。

その間、職員の給与削減や建設事業の抑制などの歳出削減を続けた結果、普通会計の予算規模約70億円弱の団体が、やっとの思いで、730万円の黒字に転換することができたのです。

平成21年の就任以来、最重要課題として行財政改革に取り組んでこられた現町長は、「やっと黒字になった。町と一緒になって辛抱してくれた町民に感謝したい」とコメントされたそうですが、人口減で、税収増が見込めない中での行革努力の苦労は、察して余りあるものがあります。

今後も、少子化による人口減少は続きます。一方で、高齢化に伴う社会保障費の増大、老朽化した社会インフラ(水道管や浄水場、町道など)の維持補修など、避けて通れない支出が控えており、綱渡りの財政運営が続くでしょう。

■財政運営と国

自治体の財政破綻についてのしくみや、住民への影響などについては、またの機会に書こうと思いますが、決算関連で言えば、市町村の場合、標準財政規模(ざっと地方税収+普通交付税額)の20%を超える赤字決算を出すと、一発で「財政再生団体」へ転落します。

人口5万人程度の市なら、20~30億円程度(レベル)といったところでしょうか。

財政破綻(財政再生団体に転落)すると、北海道夕張市の例のように、市民負担は著しく増え(公共料金のアップなど)、市民サービスは激しく低下(小中学校の大幅統合、公共施設の閉鎖、福祉など幅広い分野での施策カットなど)する事態に陥ります。

こうなれば、自治体の役目(最低限の住民保障など)はほとんど果たせなくなり、人口は大幅に流失し、実質的に、まちは崩壊の道を辿ります。

そうならないための、自治体歳入の生命線とも言える地方交付税は、国が握っています。地方債の実質的な発行権限も、同様です。

平成16年に、三位一体の改革の下で、国は突然、極めて多額の交付税をカットしました。いわゆる、交付税ショックです。予期せぬ歳入の大幅な減少に、あれから、地方自治体は用心深くなり、多くの自治体が、国に先駆けて職員の給与カット(国の削減を大きく上回る)を含む行革を行い、不測の事態に備えて財政調整基金を積んで(蓄えて)きました。

しかし、国はこう思っているでしょう。「最近、地方に交付税を多く配りすぎた」「自治体は余ったカネを、財政調整基金に蓄えて(隠して)いる」「だから交付税を少し抑えてやろう」

交付税は、そもそも「地方固有の財源」です。国から恵んでもらうものではありません。

にも関わらず、国の判断によって自治体財政が左右され、主体的な財政運営ができないのはおかしなことです。それも含めて、自治体財政のしくみは特殊です。