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ブラック企業のブラックたる原因は経営者にのみあるのか

2013年07月07日 14時26分 JST | 更新 2013年09月05日 18時12分 JST

先日ブラック企業大賞2013のノミネート企業が発表されました。会長の渡邉氏が自民党から出馬を決めた矢先にワタミが2年連続ノミネートされるという、期待(?)に違わない話題性溢れる展開を見せています。

第2回ブラック企業対象2013ノミネート企業発表

理想的な働き方や就労環境・労使関係を考えるにあたり「その真逆をやれば良い」という意味で反面教師となる企業は沢山ありますが、その最たる例がブラックと形容される企業群です。それら企業の特に過労を常態化させている悪習慣は無論あってはならないもので、経営者層は糾弾されて然るべきでしょう。

しかし、

ブラック企業の社名を公開すべき(自民党雇用問題調査会による提言)とか、ブラック企業は悪だ!経営者に制裁を!という声で、当該の企業や経営者に矛先を向けているだけで本当に問題は解決するのでしょうか。経営者が全員退陣すれば全てのブラック企業はホワイトになるのでしょうか。

以下は自戒も込めて書いているのですが、最近、ブラック企業問題の原因は企業や経営者以外にもあるのではないかと思うようになりました。実は我々顧客の側が、「経営者が従業員の労働力を搾取して死に追い込む程の事をしなければ採算が取れない」ほどのサービス・商品を求めてしまっている事に「も」原因があるのではないかと。

価格相応のサービスやモノで顧客が満足せず、あれもこれもと求めたり、当たり前と認識する事が多くなると、いずれどこかで提供されるモノと対価の天秤は狂い始め、企業はその存続の為、とれない採算をどこかで辻褄合わせする必要に迫られます。機械による自動化や業務フローの改革で吸収出来れば良いですが、吸収仕切れない時、そのひずみは組織内の地位的弱者たる被雇用者に集中します。

「お得だね」「コスパ高いよね!」

安さだけを評価軸とする時、こんな感想の先に我々顧客は将来の自殺者や過労死事件が発生するフラグを次々と立てていってるのかも知れません。過労状態を生み、労働者を死へ追いやっている悪の根源は実は我々顧客の意識である可能性も否めないのではないかとさえ感じるのです。

冒頭のワタミを例にすれば、あの接客やサービスのレベルが本当に必要なのでしょうか。あの価格で。お客様におしぼりを渡す時、膝をついて目線を合わせる必要がありますか。あの価格で。料理が手作りにこだわられている必要がありますか。あの価格で。アツアツが食べれるようにと運ばれる料理の多くが鉄板や鉄の器に入っている必要がありますか。あの価格で。机が汚い、コップが汚れていた、店員の態度が悪い、と何故ハガキに平然とクレームが書けるのでしょうか、あの価格で。

リーズナブルである事はワタミの特徴でもありますが、あの価格ならもっともっといい加減で適当であってもぶっちゃけ仕方無い筈です。それが「価格相応」というものです。オーダーの際は膝を床につけ、上げ膳据え膳してくれて、片付けもしてくれて、それでお好み焼きが399円(税別)です。たったの。万が一、鰹節が振られてなかったり、アツアツでなかったりしたら顧客である我々は「やり直して」とクレームを言う訳です。当然とばかりにワタミはそれを作り直し、一度出したものは破棄します。逆の立場で個人として399円貰って見知らぬ人にそこまでやるかと考えれば、明らかに価格に合っていません。

お好み焼きはあくまで一例ですが、別にこれをおかしいと思わない我々顧客サイドの感覚は本当に正しいのでしょうか。中国のように食べ物が爆発するというような、空腹感を満たすという目的がそもそも果たせないケースは別ですが、我々顧客の側はそろそろ、常におもてなしが当たり前的な感覚、お客様は神様だという感覚を捨て、価格に見合わないものを求め過ぎじゃないかと自問自答してみるべき時ではないでしょうか。自己の要求は果たして「価格相応」なのかと。

「価格非相応」は企業の利益圧迫要因になりえます。ワタミのスタッフが膝をつくのは確かに数秒の事かも知れない。でもそういった積み上げが膨大な経費となる訳です。経費削減の常識的な企業努力が限界に達した時、利益圧迫回避の為に被雇用者が犠牲となり、非人道的な事を常態化させるのでしょう。過サービスは、サービス残業と過労を前提としなければ回らない経営に企業を追い込む可能性があるという事です。

私事ですが先日、米国で仕事をしている弟が5年ぶりに一時帰国した時、とある食事の席で「やっぱり日本の接客やサービスは半端無く良いよね」と言っていました。日本人として誇りと思うと同時に、日本以外で過労死や過労を苦にした自殺が少ないという理由と関係しているかも知れないと思うと複雑な気分になりました。

企業をブラックたらしめるのは明らかに経営者の倫理欠如でしょう。しかしその一方で「価格に見合わないおもてなしやサービスを求める顧客」にも原因があるかも知れません。ブラック企業を晒して経営者を問責するのも有意ではありますが、実のところ我々顧客の側が「価格相応」の意識を高める事の方がもっともっと重要な気がします。冒頭のブラック企業大賞2013にノミネートされた企業の大半が、対企業ではなく対消費者のB2Cビジネス企業である事は、それを示唆しているように思えてならないのです。

ちなみに僕は単なるIT企業経営者で、別にワタミの関係者であるとか、取引先にワタミやそのグループ会社があるとか擁護したいとかそういう事は特にありません。信奉者でもないし、あのような経営者になりたいとはこれっぽっちも思いません。例が分かり易いのでワタミに言及したのみで、ワタミ以外にも価格非相応が跋扈する現場は幾らでもあります。「安さのみが評価軸となる事が大勢を占める歪み」という問題提起をしたかったのが本稿の主旨です。