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シェンゲン協定崩壊まであと2ヶ月、メルケル首相はEUをまとめられるか

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先日の記事でも書いた通り、昨年末の集団暴行事件を受けて、メルケル独首相の支持率は急落している。

独ビルト紙が19日に伝えた与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の支持率は、2013年の総選挙以来最低水準の32.5%になった。

極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、支持率をさらに伸ばし、12.5%となっている。

こうした中で、与党内からも移民・難民受け入れを制限するよう求める声が日々強まっており、メルケル首相は厳しい状況に追い込まれている。

国外では、スウェーデン、ドイツと並び難民受け入れに寛容な態度をとってきたオーストリアが20日、難民を制限する政策を導入すると発表した。すでにスウェーデンも難民の制限を始めており、ドイツが取り残されている状況だ。

難民受け入れを制限するには憲法改正が必要


しかし、メルケル首相は、ドイツの隣国であるオーストリアが決定した難民受け入れの上限を決める「キャップ制度」導入は、EUにとっての解決策にはならないと断言。

与党内でオーストリアに追従して上限を設けるべきだとの声も出たが、難民受け入れの制限は、憲法によって不可能だとし、制限を拒否している。

ドイツの憲法である基本法には、「政治的に迫害される者は庇護権を享有する」と明記されている。ドイツの憲法は、亡命権を人間の基本的権利の一つと規定しており、これはナチス時代の反省からきている。そしてその上限は明記されていない。

上限を設けるためには、憲法を改正しなければならない。

しかし、もちろんこのままただ受け入れるわけにはいかない。

そこで、解決策として、レバノンやヨルダンにあるシリア難民キャンプの改善、トルコには資金援助をする代わりに人々が流出するのを防ぐよう求め、EU加盟国には難民の受け入れ分担を求めている。だが、この提案はEU各国から賛同を得られていない。

また、21日には、オバマ米大統領と電話会談し、シリア情勢について、最終的には軍事力に頼らない政治的解決が不可欠だとの認識で一致したが、複数の勢力が拮抗しておりすぐには解決しないだろう。

急すぎた移民・難民受け入れ


メルケル首相は以前から、国境を自由に行き来できるシェンゲン協定がなくなれば、ユーロやEU単一市場は意味を持たなくなると警告してきた。

さらに、ドイツとしてはEU統合をリードしてきた経緯と経済的に最も恩恵を受けているため、EUを成功させなければいけない責任もあるだろう。

また、ドイツは少子高齢化社会を迎えており、近年積極的に移民受け入れ策を行ってきた背景もある。2013年には123万人の移民がドイツに入国している(流出は79.8万人)。国連によると、ドイツにいる移民の規模は世界でも3番目に大きく、人口約8100万人のうち約1600万人が外国人か移民の家族である。

この労働力不足はドイツに限った話ではなく、2014年にはOECDが「2020年までにヨーロッパの労働力人口は750万人減少し、移民を受け入れなければ、最大1170万人の労働力人口が減少することになる」と指摘している。さらに、20日に発表されたIMFの試算によると、難民受け入れはEU全体のGDPを0.25%押し上げると指摘されている。

しかし、昨年からのこの100万人を超える急激な移民・難民流入に、人々は不満と恐怖を抱えている。今までの移民はほとんどがEU諸国の人々で、社会に適応しやすかった。だが現在流入している多くはバックグラウンドが大きく異なり、その分恐怖も大きい。アメリカで未だに黒人差別があることを考えれば人種を越えることがいかに難しいかはわかるだろう。

長期的に見れば、民族の多様性はEU統合を後押しする。しかし、短期的には過度な移民・難民流入が悪影響を与えつつあり、反対する声が増している。

ドイツには、毎日約3000人の移民・難民がオーストリアから流入しており、このままいけば2016年末までにさらに100万人流入すると予想されている。

シェンゲン協定崩壊まで残された時間はたった2ヶ月


この現状に対し、EUのトゥスク大統領は今週「事態を掌握するための期間はあって2カ月だ」と述べ「3月のEU首脳会議が、我々が効果的な方策を打ち出すタイムリミットになる」との見方を示している。冬を越えれば難民の大量流入が再開し、限界を迎えるからだ。

そして、域外との国境を適切に管理できなければ、EUは「政治的プロジェクトとして失敗」することになると述べた。

また3月にはドイツで重要な地方選がある。その意味でもこの2ヶ月がEU、メルケル首相の未来を左右することになるだろう。

もちろん、トゥスク大統領はただ警告しているだけではなく、具体的な対策も考えている。

欧州委員会は昨年からEUレベルで域外との国境警備にあたる「欧州国境・沿岸警備隊」を創設するよう主張し、今年6月までに結論を得ることで合意しているが、各国が自国で国境を強化し始めており、EU内で足並みが揃っていない。

難民認定手続きの全面的な見直しについても提案している。現行規則(ダブリン協定)では、難民が最初に到着した国が難民認定申請に責任を負う。難民と認定されれば、その国が保護しなければならない。欧州委員会はこの原則の破棄を提案し、認定された難民をEU各国が経済規模に応じて受け入れる分担案を主張している。

現在は、中東や北アフリカからの難民はその多くがまずギリシャやイタリアに入国する。ただ、その経済的な弱さから受け入れには限界がある。そのためこれを分担する、という合理的な提案だ。しかし、この提案には、ハンガリーやチェコなど難民受け入れに抵抗感の強い中・東欧諸国が反対している。

現状は、急激な移民・難民流入に欧州全体が混乱している状態だ。しかし、域内を自由に行き来できるシェンゲン協定による中長期的なメリットを失ってまで、難民受け入れの負担を請け負わない方がいいかは疑問である。各国はシェンゲン協定を一時的に無効化しているつもりかもしれないが、一度閉ざしてしまえば再開できるかはわからない。

シェンゲン協定が崩壊すれば、EU統合の道も閉ざされるかもしれない。もちろん、理念だけではやっていけないが、一時的な感情に流されるのではなく、短期的な負担と中長期的な恩恵を比較した上で結論を出してくれることを期待したい。それでも、難民を平等に受け入れるべきではない、という判断を出すのであれば、シェンゲン協定の廃止もしくは縮小はやむを得ないだろう。

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