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エヴァ風の「クール・ジャパン法」啓発動画は若手官僚の手作りだった

2013年07月19日 23時32分 JST | 更新 2013年08月08日 00時26分 JST


7月5日に経済産業省がYouTubeで発表した「クール・ジャパン法 ~日本の魅力をビジネスへ~ 」という約3分ほどの啓発動画がネット上で大いに話題になっている。発表から2週間を経た現在、すでに9万再生を数えているほどだ。人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)を思わせる演出や、まるで素人が作ったようなゆるい構成が逆に話題となり、官公庁が作った動画としては異例なほど反響を呼んだ。ハフィントンポストでも7月9日に、エヴァンゲリオン風の「クール ・ジャパン法」啓発動画に唖然とする声 という記事を出している。

そのときから記者が疑問に感じていたことがあった。「クール・ジャパン」といえば、日本の文化を世界に発信する文化輸出政策のことだ。先月の6月に国会で成立した通称「クール・ジャパン法」では、政府が500億円も出資して機構を設立する。それを広報する動画が、こんな低予算で手作り感満載の物なんて違和感がある。もしかするとこれは、予算をかけてものすごく高いクオリティの動画を作っても「まあこんな物だよね」と話題にならない。あえてゆるい動画を作って「まさか経産省がこんな物を」とびっくりさせて、ネット上で拡散することを狙った「仕掛け」だったのでは……。

なんだか気になって眠れなくなったので、経産省に電話をかけたところ、まさかの取材OK。7月17日、30度を超す猛暑の中、セミの声が鳴り響く霞ヶ関の庁舎に行ってみた。今回の啓発動画を作った商務情報政策局クリエイティブ産業課の赤松寛明課長補佐と、坂本千典主任に話を聞いた。赤松氏は30代、坂本氏は20代の若手職員だ。

−今回、啓発動画をYouTubeにアップしたのはどういう経緯だったのですか?

赤松寛明課長補佐(以下、赤松):「できるだけいろいろな方々にこういう仕組みがあるということを知っていただきたいということで、いろんな広報の手段があると思いますが、ある種、クール・ジャパンって世界中の人々に呼びかけていくものであるので、ネット上で広めるために、試験的にこういう形を取ってみたということですね」

坂本千典主任(以下、坂本):「どうしても法律の条文って、我々でも読みづらいところがあります。ちょっとブレイクダウンというか、分かりやすくしてみたいなぁと思ったんです。見方によっては『逆に分からない』という声もあるかもしれないけれど、私どもとしてはそういう思いでした」

−法案が可決したのが、先月の2013年6月でしたが、以前から準備はされていたんですか?

坂本:「もう突発的に」

赤松:「割と短い期間で作りました」

−この動画は業者に委託に出して作ったのでしょうか?それとも、こちらの課のスタッフが独力で作った感じですか

赤松:「委託に出したわけではなくて、こちらで作りました。できるだけ思いが直接伝わるようにということで」

−いえ、ネット上ではどれぐらい予算がかかってるから不思議がる声があったもので。

坂本:「手弁当で作りました(苦笑)」

−フォントの配置やBGMが『エヴァ』に似ているという指摘もありますが、意識はされたんですか?

赤松:「そういう風に言われることはありますけど、それは……見られた方の………」

−ネット上でここまで反響があるとは予想されていましたか?

赤松氏:「あまりそこまでは……」

−予想外だったと?

赤松:「はい」

ーあえてアマチュア感を出したわけではない?

赤松:「いえ、これで精一杯。少ない人間が思いの丈だけで作った感じです」

二人は率直に取材に応じてくれたが、演出で『エヴァ』を意識したかどうかに聞いた瞬間に口が重たくなった。あまり触れたくない部分だったようだ。特定のアニメと公式にタイアップして予算をかけた動画を作る手段もあったのではと聞くと、「どこかの作品に寄ってしまうとバランスが取れなくなるので、それは難しい」という返答だった。

結局、ネット上での拡散を意識した高度なバイラル・マーケティングが奏功したわけではなく、若手官僚が手弁当で作った動画が、たまたま話題になった……という、ありがちな話だったようだ。「クール・ジャパン法」に基づいて、今秋にも「株式会社海外需要開拓支援機構」が設立される。日本文化を世界に発信する事業を側面支援する機構が華々しいスタートを飾るためにも、設立のあかつきには、今度は日本だけでなく世界をうならせてくれる動画がアップされることを期待したい。

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