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オリンピック成功への課題、大会組織委会や政府の手腕が問われる【争点:アベノミクス】

2013年09月08日 20時52分 JST | 更新 2013年09月08日 20時52分 JST
AFP時事

2020年オリンピック・パラリンピックが東京で開催されることを受け、政府は9月10日の閣議に合わせ、大会の施設整備や選手強化などの準備作業の検討を本格化する。政府はJOC(日本オリンピック委員会)や東京都と立ち上げる東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会を全面的に支援するため、競技施設や交通網の整備等、必要な対応の検討をすすめる。NHKニュースなどが報じている。

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■巨額のオリンピック施設整備

オリンピック東京招致委員会の開催計画書によると、2020年の東京オリンピックでは、開閉式会場となるオリンピックスタジアム(新国立競技場)や、競泳や飛び込みの会場となるオリンピックアクアティクスセンターなどが新設される。また、国立代々木競技場、東京体育館、日本武道館など、1964年オリンピック大会時の施設を含む15の主要コミュニティ・スポーツ施設が改修されるとされる。

これらの施設整備にかかる総工費は、選手村(工事費1057億円)や水泳会場(397億円)、バスケットボール会場(369億円)、新国立競技場(1338億円)など4554億円を見積もる

■輸送手段や宿泊施設の整備も加速

竹中工務店の話では、関連施設以外にも、「東京都内の地下鉄や高速道路など交通網整備、ホテルの新築・改装が加速する」のも確実と言われている。

選手や大会関係者を円滑に輸送するため、都などは、選手村と競技会場、空港を結ぶ延べ約317キロの道路に「オリンピックレーン」を設定する予定だという。オリンピックレーンは、選手らを乗せた大会関係車両だけが通行できる車線で、設定区間では、一般車両やトラックが走行できる車線が制限される。観戦のため都内外から都心部に向かう多くの車が加われば、渋滞の可能性が高まると見られる。

さらに、選手村と都心を結ぶ環状2号線も整備され、さらには、中央環状線・外環・圏央道の3つの環状線がほぼつながる予定。鉄道でも、品川駅の近くには山手線の新駅が造られる見込みだ。

■防災や電力の確保も課題

海外からの参加選手や観光客が、台風の多い日本に安心して来日できるよう、防災対策の徹底も課題となる。東京都などは、湾岸や河川での津波や高潮の被害を防ぐ堤防整備を急ぐほか、競技施設ごとに避難計画も策定する。

IOC委員は開催地の1次選考の際、東京に対して「電力の確保」の点で低い点を付けている。招致委員会が試算したところ、オリンピック期間中の電力使用料は、通常の0.1%増ぐらいでまかなえるとしているが、電気料金が値上がりを続けている中、2020年においても同様の料金でまかなえるのかは疑問が残る。

■進行をまとめる大会組織委員会

これら以外にも、聖火リレー、開会式を含めた大会運営、マスコットの決定やチケットの販売など、オリンピックの開催に向けて各種の準備が必要になる。これらの取りまとめを行うのが大会組織委員会である。東京都によると、大会組織委員会は来年2月をめどに立ち上げられる予定とされる。

開催資金の手当てが重要になるため、財界人の起用が有力で、経団連など主要経済団体の首脳クラスやOBに就任を要請するとみられている。1998年の長野冬季五輪では、経団連会長を務めた斎藤英四郎が就任し、2002年の日韓共催のサッカー・ワールドカップでは、当時東京電力会長で経団連副会長だった那須翔氏が組織委員会の会長に就任し、寄付金集めなどに尽力した。

東京オリンピック開催決定を受けて経団連の米倉弘昌会長は、次のような談話を発表している。

「1964年の東京オリンピック開催は戦後の復興に取り組んでいた人々に活力を与え、その後の高度成長につながった。今回の開催決定も、日本国民に元気と明るさをもたらすものである。とりわけ、東日本大震災の被災地の方々には、勇気と希望を届けることになると思う。


東京開催が決定されたことで、首都圏の再開発やインフラの整備、外国人観光客の誘致などにも弾みがつく。これらによって、日本経済の回復も一層力強いものとなろう。」


(経団連「2020年オリンピック・パラリンピック東京開催決定に関する米倉会長コメント」より。2013/09/08)

東京都は、オリンピックの経済波及効果を、全国で3兆円弱と試算した。その内訳は、東京都が1兆6800億円でその他地域が1兆2900億円。雇用誘発では東京都で8万3700人、その他で6万8500人と予想した

東京都が費用を積み立てているほか、東京五輪自体もコンパクト化が目指されており、工面が必要な資金はそれほど多くないとの観測も出ている。しかし、万が一、大会組織委員会が資金不足に陥り東京都が資金を賄えなかった場合は、最終的に政府が保証することになる。

■大会成功には政府の法的支援も必須

東京都は、大会組織委員会への補助金や、企業などから寄付金を集めやすくするための税制上の優遇措置など、財政的な支援を求めている。このため政府は、関連する法律を整備するなど、必要な対応の検討を急ぐことになる

これらを考えると、7年後はあっという間だ。オリンピックの内容だけでなく、震災復興の加速を望む声も多々上がっている。IOC総会での汚染水めぐる安倍首相の発言に、批判の声も出ている。

「成長戦略実行国会」に位置づけるとした秋の臨時国会は、10月15日に召集する方針だ。成長戦略を後押しする産業競争力強化法案のほか、機密情報を漏らした公務員への罰則を強化する特定秘密保護法案、外交・安全保障政策の司令塔として1月にも発足させる「国家安全保障会議」(日本版NSC)設置法案なども提出されるとされている。

さらには、公務員制度改革関連法案も用意されており、政府にはますます機能の効率化が求められる。オリンピック開催準備も加わり、官民ファンドなど「民間企業をうまく使う」ことが、支出を抑え財政の改善にもつながることになりそうだ。

安倍首相は8日にブエノスアイレスで開かれた記者会見で、「まさにわたしたちは、東京が、日本が、世界の真ん中で輝いていく大きなチャンスをいただいた。五輪、パラリンピック招致は、インフラ整備、観光など、幅広い分野にもよい影響を与える。五輪ムーブメントを世界に広げ、安全で確実に五輪を実施するという期待にこたえていくこと。これが私たちの課題だ」と述べた。

オリンピックの開催準備と成長戦略をどのように進めるのか。「強運」との評価を得た安倍首相だが、その手腕の「実力」がいよいよ問われることになる。

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