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「ネットの言論空間、成熟中」 ハフポスト日本版の長野智子・編集主幹が語る

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TOMOKO NAGANO
ハフポスト日本版の長野智子・編集主幹=朝日新聞社・西田裕樹撮影 | The Huffington Post
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ハフィントンポスト日本版を統括するエディター・アット・ラージ(編集主幹)に、長野智子・報道キャスターが就任した。どんなサイトを目指すのか。抱負を聞いた。

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■ネット、テレビ、新聞 組み合わせたらいい

ハフィントンポストは、昨年5月に日本版のサービスが始まった際に存在を知り、ツイッターでもフォローしてきました。

毎朝6時から8時までは、インターネットを使う時間にしています。メールをチェックしたり、ニュースを見たり、ツイッターやフェイスブックを更新したり。

ネットのニュースサイトはよく見ます。新聞社や雑誌社のほか、ネット専用のニュースやブログにも目を通します。携わっているテレビ番組の報道内容について、人々がどんな風にとらえているのか、といった反応も知りたい。気になるニュースや情報があれば、番組の企画会議に出します。

ネットメディアと、新聞やテレビなど既存メディアには、それぞれにいいところがあります。ネットはスピードが断然に速いけれど、確度が高いものも低いものも玉石混交。ネットの面白い情報を番組で放送するには取材して事実関係を確認する「裏取り」作業をしないといけない。取材を途中で断念することも少なくありません。

ネットをよく使う人からすれば、テレビや新聞の反応が遅く、全く伝えていないように見えるのでしょう。東日本大震災による原発事故について、テレビ報道はネット上で「東京電力や政府の圧力を受けている」と批判されました。でも実際はそういった理由より、裏取りや、取材する側の知識不足が原因で時間がかかりすぎて、放送できないことが多かったように思います。

テレビや新聞の報道には慎重すぎる面があるし、公共性に対する責任をとても重んじます。ネットはその点について、良い意味でも悪い意味でも自由です。

一方、ブログなどで、海外や経済人の興味深い発言を見つけ、取材することもあります。ネットとテレビでは登場人物が違います。ネットで発言する人がテレビには出てこなかったり、テレビでよく顔を見る人がネットでは発言力がなかったり。そういった発見や広がりは楽しいです。

報道には多様性が大切です。ネットと、テレビや新聞など複数の媒体を利用し、テレビで見たことを後で新聞でじっくり読む。使い分けることで豊かになれます。ネットだけ、新聞だけ、テレビだけではなく、全部組み合わせたらいい。

tomoko nagano

■米国のメディア・リテラシーに見習う部分も

ネット上の言論空間が発達し、テレビや新聞の報道に疑問を持つ人が増えました。それはいいことだと思います。

1995年に米国へ渡り、6年間暮らしました。購読していたニューヨーク・タイムズは今でも電子版を読みますし、英BBCや米CNNのネット版も見ます。

日本人と米国人ではニュースへの接し方が違います。日本人は大手メディアの信頼性を重視し、誤報を許さない。一方、米国ではアカウンタビリティー(説明責任)を重視する。間違いがあれば、誰が責任をとってどう説明して謝罪するのかに重きを置く。誤報はよくないのですが、批判に終始してニュースの本質を見失わないためには、米国のメディア・リテラシーは見習う部分があると思います。

最近、日本では、ネット上の言論空間で大手メディアに対する不信感が増えています。いいことだと思います。ある情報について信用せずに考えてみる。本当なのか疑って、確かめてみる。成熟した言論空間ができつつあると思います。

メディアは「社会の映し鏡」と言われます。日本でも批判だけではなく、能動的に調べ、見つける風潮が強まれば成熟した議論形成につながると期待しています。

これから私はハフポストに携わりますが、ネットの持つスピードや自由さに加え、朝日新聞社が提携していることで、公共性や信頼性を兼ね備えたニュースサイトに成長していければと思います。

tomoko nagano

■異分子の発想を生かす

編集部を統括する編集主幹に就任するにあたり、三つの抱負があります。まず、多くの人に知ってもらうため、積極的に宣伝に励むこと。残念ながら、私の周りでは、まだ知名度が高くありません。

二つ目は、他国版とコミュニケーションをとっていくこと。海外の人とも気軽に意見交換ができたらいい。例えば、今回の都知事選で脱原発が争点になるのかという議論を各国版はどう伝えたのか、どんなコメントが寄せられたのか気になります。

日本語で意見を述べたら、自動翻訳機能で英訳されて世界に発信できたらいい。技術的な壁があるとは思いますが、創業編集長のアリアナ・ハフィントンに電話で話したら「とてもいいアイデアね」と言ってくれました。

他の国内メディアに比べ、国際的、グローバルな点が一番の強みです。シリア問題やアフガニスタン情勢、ニューヨーク経済など、週に1本はサイト上で世界の人と話せるようにしたい。原発、靖国神社参拝、沖縄の米軍基地、2020年の東京五輪などは国際的な関心事でもあり、世界の人々と意見交換したいテーマです。働く女性を取り巻く問題にも関心があります。

そして最後は、「異分子」の私が中に入って、ユーザーの立場でハフポストに物を言うこと。テレビ業界で生きてきて、ネットの世界は門外漢。ハフポストは、オンラインで議論の場をつくるのが大きな役割。戸惑うこともあるでしょうが、そんな私の発想もハフポストで実現できればいい。

なによりも「お得感」がほしいですね。俳優ジョージ・クルーニーさんが米国版にブログを書いていますが、ハフポストでないと読めません。ニュースも、もっとこだわりを持って発信したい。いまは様々なニュースを並べ、「コメントを寄せて」という形になっている。スタッフはみんな私より若い世代ですが、彼らならではの独自性や情熱を感じられるサイトにしたい。デザインや表記も日本人向けに直したい。

編集主幹として、ブログも書きます。ブロガーと対談する企画も考えています。いずれは私の番組でも、ニュースをどう報じているのか各国版ハフポストの編集長に聞ける機会もできるかもしれない。なにより、私が読んで面白いサイトにしたいなと思っています。(聞き手・中野渉)

ながの・ともこ 米ニュージャージー州出身。1985年にフジテレビにアナウンサーとして入社し、90年フリーに。99年ニューヨーク大・大学院卒。2000年にテレビ朝日系「ザ・スクープ」キャスター、11年から「報道ステーションSUNDAY」のメーンキャスターを務めている。著書に「踏みにじられた未来 御殿場事件、親と子の10年闘争」(幻冬舎)など多数。

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