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ワールドカップを支える日本の技術 「自分で汚れを落とす屋根」から「アフリカでのパブリックビューイング」まで

2014年06月11日 19時23分 JST | 更新 2014年06月11日 22時18分 JST

サッカーの第20回ワールドカップ(W杯)が6月12日(日本時間13日)、いよいよ開幕する。世界各国のトップアスリートがフィールドを駆け回るなか、数多くの日本のテクノロジー・サービスが舞台裏を支える。日本が世界に誇る「技」の数々を紹介しよう。

■自分で汚れを落とす「屋根」

estádio nacional mané brasília

テントメーカーの太陽工業が建設に参画した「エスタジオ・ナシオナル・デ・ブラジリア」など3会場の巨大ドーム屋根には、厚さ0.8mmの特殊なテント素材が使われている。

このテント素材は「酸化チタン光触媒膜材」といい、太陽光に反応して屋根に付着した汚れを分解する、セルフクリーニング機能(自分で汚れを落とす機能)を備えている。

makmax

■抜群の「水はけ」で雨のぬかるみから選手を守る

kananet

ピッチ(グラウンド)の水はけを画期的に向上させているのが、建材メーカーのカナフレックスが提供している排水パイプだ。開会式が行われる予定のアリーナ・コリンチャンス(イタケロン)や、決勝戦が行われるマナカラン・スタジアムなど、10会場で使われている。

この排水パイプには、無数の小さな穴が開いているなどの独自の工夫がなされており、水の吸収率を格段に高めている。

サンパウロ新聞によると、同社の開発・マーケティング部長、金子アントニオ氏は、「おそらく私だけ」と前置きしているが、ワールドカップで雨が降ればとの思いもあるという。「観戦者や視聴者に水がたまらないことを証明できますから。6、7月は雨が少ないですけどね」

construction brazil stadium field

■透明感のある選手ベンチで会場に一体感

glass roof bench

全12会場で使用される選手ベンチを提供しているのは、ガラスメーカー大手の旭硝子だ。スマートフォンやタブレット用の強化ガラスを、大型のベンチルーフに転用した「ガラスルーフベンチ」は、繋ぎ目が少ないうえに、反射率を通常の13分の1に抑えた設計。一般のガラスと比べ約8倍の強度がありながらも、まるでベンチの背面にはガラスが存在しないようなクリアなつくりで、選手や監督の存在がより身近に感じられる。

強度テストでは、ビール瓶を投げてチェックしたり、フレームにぶら下がったりもしたという。

■開幕戦が行われる「イタケロン」、ビデオスクリーンも兼ねる壁面ガラス

arena corinthians

旭硝子は、ワールドカップの開幕戦・ブラジル対クロアチアの試合が行われるイタケロンのオフィシャルサプライヤーでもあり、同会場で使用される全てのガラス製品も提供している。

イタケロンの外壁は、LEDを用いた幅170m、高さ20mの世界最大のビデオスクリーンも兼ねており、これを旭硝子の1300枚のガラス板が覆っている。ガラス独特の青みが無く、透明度が極めて高くなっており、ガラス越しに見た物を本来の自然な色で見ることができる。

coutinho corinthians

「アレーナ・コリンチャンス」の東側外壁

なお、旭硝子は、日本代表がグループリーグでコートジボアールと対戦する「ペルナンブコ・アリーナ」の外壁も手がけている。この競技場で使われたフッ素樹脂フィルムは光の拡散性にも優れるため、夜間はライトアップが行われるという。

pernambuco arena illumination

「ペルナンブコ・アリーナ」の外壁

■サポーターの暴動を防ぐ監視技術

arena das dunas

ペルナンブコ・アリーナのほか、日本代表がギリシャと戦う「アレーナ・ダス・ドゥーナス」などの3会場で、ITCシステムを担当したのがNECだ。世界各国の企業の様々なシステムを統合し、入退場や警備などのセキュリティ、映像、音響、広告、WiFiネットワークなどを、1カ所で管理するシステムを整備した。

セキュリティ面では、140〜200台近くの監視カメラをネットワークでつなぎ、顔認証により個人を特定したり、過激なファンなどを見つけ出すなどの防犯システムを採用。ベルナンブコ・アリーナでは、不測の事態が発生した際には満員の観客全員を8分間でスタジアム外に誘導して避難させることができるという。

■輸出された日本の「交番システム」

koban system

会場の外でも、日本発祥のセキュリティーシステム「交番」が、目を光らせている。治安の改善が急務となっているブラジルだが、なんとサンパウロの州警察は1997年、日本を参考にした独自の「交番システム」をつくった。

2000年からは日本も協力。独立行政法人・国際協力機構(JICA)と警察庁が支援を行っており、2018年までにブラジル全土で整備することを目指している。

日本側からは、パトロールのノウハウや、地域住民とより良いコミュニケーションを取る方法、子供の非行を防止する手段としてスポーツを奨励する方法などを提供。サンパウロのラニエリ地区の交番は、かつて国連から世界一危険な地区と認定されたが、交番導入後10年で、殺人事件数は2割程度にまで減少した。

地元警察官と住民の間には確実に信頼関係が築かれており、地元コミュニティーの出来事を相談するため、交番に気軽に立ち寄る住民も増えているという。

■大会を高画質で記録する「4K」

sony

大会後にも使われるオフィシャル・フィルムづくりを支援するのはソニー。ソニー製の4K放送業務用機材を使用して、エスタジオ・ド・マラカナンで行われる決勝トーナメント1回戦、準々決勝、決勝が撮影される。撮影した4K映像は、大会終了後に4Kコンテンツ配信サービスなどを通じてFIFAから配信される予定だ。

sony 4k

■コートジボアールでパブリックビューイング

ivory coast world cup public viewing

ソニーはワールドカップの期間中、JICAと共にコートジボワールの17都市を訪問し、ハイビジョン映像で200インチの屋外スクリーン上に無料放映するパブリックビューイングを行う。

コートジボワールは、日本代表が15日に対戦する国だが、1990年代以降、社会的・経済的・軍事的混乱にさいなまれている。そんな中でも国民に平和と再統合への希望を与え続けてきたのがサッカーで、2005年12月、コートジボワールが翌年のワールドカップ出場を決めた瞬間には、内戦のさなかにあった同国代表選手はピッチに座り、国民に平和を呼びかけていた。

【6/12 10:17】初出時、「旭化成は、日本代表がグループリーグでコートジボアールと対戦する「ペルナンブコ・アリーナ」の外壁も手がけている」と記述しておりましたが、旭化成ではなく、旭硝子の誤りでした。お詫びして訂正します。