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2014年06月29日 00時06分 JST | 更新 2014年06月29日 14時17分 JST

熊切和嘉監督『私の男』がモスクワ国際映画祭グランプリ 「二階堂さんに演出をするほうが楽しかった」

世界4大映画祭のひとつ、第36回モスクワ国際映画祭の授賞式が6月28日開かれ、日本から唯一、ノミネートされていた熊切和嘉(くまきり・かずよし)監督(39)の「私の男」がグランプリ(最優秀作品賞)を受賞した。主演の浅野忠信さん(40)には最優秀男優賞が贈られた。

日本作品によるグランプリ受賞は1999年の新藤兼人監督作品「生きたい」以来15年ぶり。日本人俳優の最優秀男優賞受賞は1983年「ふるさと」の加藤嘉さん以来31年ぶりの快挙だ。

「私の男」は、桜庭一樹さんの直木賞受賞作を映画化したもの。北海道を舞台に、奥尻島地震により10歳で孤児となった少女・花と、その少女を引き取った遠縁の男・淳悟との禁断の愛を描いた。浅野さんと二階堂ふみさん(19)が、16年に及ぶ父と娘の濃密な関係に繊細かつ迫真の演技で挑んだ。

■北海道出身の監督、見どころは「流氷」

熊切監督は、1974年9月1日、北海道帯広市に生まれた。大阪芸術大学芸術学部での卒業制作「鬼畜大宴会」が、「第20回ぴあフィルムフェスティバル」で準グランプリを受賞し、話題になった。

北海道出身の熊切監督が、「私の男」で最もこだわったのは「流氷」。最初はプールに発泡スチロールを浮かべる案もあったが、実際には流氷に覆われた真冬のオホーツク海でロケを敢行した。

「流氷は何としても35ミリフィルムで撮りたかった。じゃないとただの雪原に見えてしまう。でも一本丸々35ミリで撮る予算はない。それで思いついたのが、東京での場面をデジタルで撮ることでした。フィルムの奥まった感じに対し、東京に出てからは近さが出ればいいなと思ったんです」
 
この極寒の流氷の海に花役の二階堂が飛び込むシーンは圧巻だ。二階堂は「今日は死ぬ気で来ました」と言い切ったという。
 
(MSN産経ニュース『流氷迫る北の果てで寄り添う 「私の男」熊切和嘉監督』より 2014/06/13 08:33)

■海外の記者からの監督へのインタビュー

父と娘の禁断の関係というタブーを描いたこの作品は、この映画祭で一番の問題作として注目を集めた。熊切監督は6月13日、同映画祭の記者会見で「今回は一番内容的にも映画化しにくい内容だったが、やりたい放題自由にやった」などと話していた。

――経験が豊富な浅野さんと仕事をするほうが良かったか。それともまだまだこれからで、指導をしやすかった二階堂ふみさんのほうが、調整がしやすかったですか。
 
指導をするというわけではないですが、二階堂さんに演出をするほうが楽しかった。浅野さんは、あれだけキャリアがありますし、一言言えば変わりますし、そういう意味では二階堂さんに演出するほうが楽しかった。ただ、それは役柄かもしれませんね。二階堂さんの演じた花のほうが動きがありますから演出がしやすいというのもありましたし、浅野さん(の演じる淳悟)は受けの芝居であったから、何かを発するというのはなかったですから。
 
――今回の作品を含めて、監督の映画はあまり肯定的ではない人物を描いていることが多いと思います。共感することが難しい人物が多い気がします。これは、監督自身が、曖昧な性格を持つ登場人物に惹かれるからですか。それとも、監督自身が人間嫌いだからですか。人間をあまり信じていないからですか。
 
わかりやすい人物を描いていないというのは、自分でも自覚しています。それは、映画の物語を語るために都合のいい人物ではなくて、身近にいる人であったり生身の人って、すごく曖昧であったりすると思うんです。そこを何とか描きたいというのはあります。あと、どちらかと言うと、皆から愛される人を描くよりは僕は、どっかで皆から嫌われてしまう人とか、過ちを犯してしまった人であったり、自分でもどうしていいかわからない、そういう人物に何とか光を当てたい。人間のきれい事の部分は、信じてはいないと思います。
 
――この世に幸福が訪れること、また、幸福そのものは信じていますか。
 
幸福は信じていますし、瞬間、瞬間であるものだと思います。ただ、それが永遠であるとは思わない。
 
――では、この登場人物にとって、一番幸せなのはどの時だと思いますか。
 
淳悟と花に関しては、淳悟が帰ってくるのを、坂道で花が待ち構えているというシーンが、僕にとっては彼らの幸福の瞬間だったと思います。
 
――監督の作品はいつも音響が面白くて好きなのですが、音響を作るときにどういう工夫をされているのか。また、この作品に限らず、下駄ではないですが、何か靴の音が聞こえましたが、それは何ですか。
 
音に関しては、確かに他の作品とは違うかもしれません。映画を撮り上がってから、単なる目に写っているものの音を入れるのではなくて、映画全体の裏にあるテーマであったり、もっと奥行きを付けたくて、編集と同時に、音で再び演出をし直すような感覚でやっています。
 
下駄の音に関しては、よくぞ、というか、たまに聞かれるんですが、実は僕の母親が、ああいう靴を履いていて、実家には猫が何匹もいたんですけれども、夜、母親が猫を連れて散歩するときに、下駄の音に猫がついていくのが今だに焼き付いていて、本当にあれは、いつも入れたくなる音なんです。
 
――監督が映画を作るときに重視するのは、観客の気持ちやどういう視点で観るのかということなのか、それとも、自分のメッセージを映画を通して伝えること、どちらですか。
 
どちらもあるんですが、観客と一言で言っても色々なひとがいますから、大勢にウケるようにはつくらないですね。大勢いるなかでも、どちらかというと自分と共有できる、それは身近にもいないかもしれないし、目に見えるところにはいないかもしれないし、もしかしたら地球の裏側に共感している人がいるだろうと信じて、つくっている部分があります。

kazuyoshi kumakiri

■熊切監督らからの喜びの声

なお、受賞について、熊切監督、浅野さん、二階堂さんはそれぞれ、報道各社に対して次のようなコメントを発表した。

熊切和嘉監督 『私の男』は企画段階から完成に至るまで、様々なトラブルに見舞われた映画でした。それが、モスクワ国際映画祭でグランプリ&主演男優賞だなんて、神様もいたんだなあと!最高です!映画監督になって15年になりますが、結果的に『私の男』が今までで一番、「やりたい放題」やらせていただいた映画でした。映画を志していた少年時代に抱いていた想いが、確信に変わりました。これからは、より気合いを込めて「やりたい放題」やっていこうと思います。スタッフ、キャストはじめ、この映画に関わった全ての人に感謝致します!本当にありがとうございました。

浅野忠信さん とても嬉しいです!この作品に対しての意気込みや思い入れは、誰にも負けないものでしたし、役作りに関しても、与えられた時間を活かし見えてくるものが大きかったため、力が入ってました。正直思い入れが強すぎて、焦ってしまったり、熱くなりすぎてしまうことがありました。まさかこんな形で報われるとは思っていなかったので、今は

素直に皆さんに感謝しております。自分はまともでない時もありますが、自分の好きなことに対しての情熱を強く信じております。ですからどうかこれからも見続けていただけると嬉しいです。

二階堂ふみさん 熊切監督おめでとうございます。浅野さんおめでとうございます。映画『私の男』おめでとうございます。モスクワの地でこの作品が評価された事を幸せに思います。この作品に関われたことを誇りに思います。

なお、「私の男」は、新宿ピカデリーほか全国でロードショー展開中だ。

》「私の男」公式サイトはこちら

「私の男」画像集

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