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ベトナム漁師に「中国船の恐怖」 南シナ海、対立激化の煽りで困窮

2014年07月28日 17時27分 JST | 更新 2014年07月28日 17時27分 JST
Reuters

[リーソン島(ベトナム) 28日 ロイター] - ベトナム人漁師Dang Van Hoanhさん(27)らが乗った漁船は今年5月、ベトナムと中国が領有権を争う南シナ海で、正体不明の船舶に衝突され沈没、Hoanhさんは脚の骨を折るなどの重傷を負った。

この衝突事故で乗組員1人が死亡し、今も1人が行方不明のままだ。

「その漁を終えたら結婚する予定だった。それが、すべてを失う結果になった。一文無しだ」。脚に包帯を巻いたHoanhさんはこう話し、古びた漁船でリーソン島に向かった。同島にはHoanhさんら漁師が多く住んでいる。

中国が5月2日に西沙諸島(英語名:パラセル)近海に石油掘削装置(リグ)を設置したことを受け、ベトナムと中国の対立が激化。Hoanhさんはその対立の巻き添えになったと思いをぶつけた。

中国は今月中旬にリグを移動したものの、10週間にわたって毎日のように両国の巡視船や漁船がにらみ合いを続けた。ロイターの記者は、5月と7月にベトナムの巡視船に乗船して取材した際、スピードと装備で勝る中国船がベトナムの巡視船を追跡するのを確認した。

5月25日の衝突事故についてHoanhさんは、暗かったため確証はないとしながらも、中国船が漁船に衝突してきたようだと強調。リーソン島当局も衝突してきたのは中国船とみられるとしていた。

この事故に関して中国からのコメントはない。ただ、中国側はしばしば、衝突が起きるのは攻撃的なベトナム船に非があるためだと主張してきた。

Hoanhさんは「リグが設置されてからは、中国船を避けるため、われわれはさらに北に移動した。それでも沈没させられた」と唇をかみ、ベトナム人漁師にとって安全な場所はどこにもないと訴えた。

5月26日には別のベトナム漁船がリグ付近で沈没し、乗組員10人が救助される事故も発生している。

<政府支援の格差>

ベトナム本土から約28キロ離れたリーソン島には、約3000人の漁師が居住。ここは、数世紀にわたって南シナ海に漁に出かけるベトナム人漁師の拠点となってきた。

リーソン島当局者は、5月2日のリグ設置以降、同島の漁船426隻のうち14隻が、中国船との衝突で激しく損傷したと説明。被害総額は28万ドル(約2850万円)に上ったという。

Bui Van Minhさん(33)は今年に入って、中国船から約20回妨害され、先月にはリグ近くで、中国の巡視船から放水を受けた。Minhさんは「われわれは激怒したが、何もすることはできなかった」と嘆く。

また、漁師に対する支援も課題となっている。ベトナム政府は7億5000万ドル規模の支援策を承認。漁船購入のための低金利融資や保険料を国が負担する策などを打ち出したが、80万人いるとされる漁師すべてが支援を受けるのは難しい状況だ。

実際、ベトナム当局者は、中国当局による漁業支援と同じ規模の経済的支援を行うのは困難だとこぼす。

ベトナムの漁業組合の幹部は、「この政策は魔法の杖ではない。中国人漁師のための投資と比べることなどできない」と指摘。「彼らの戦略は、足を踏み入れた場所ならどこでも占領することだ。そのため、彼らは近代的な装備が整った大型船の建造に力を入れている」と続けた。

(Nguyen Phuong Linh記者、翻訳:野村宏之、編集:本田ももこ)

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