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ウクライナにロシアはすでに侵攻している:アメリカのタルボット元国務副長官インタビュー

2014年08月19日 22時56分 JST | 更新 2014年08月19日 22時56分 JST
ALEXANDER NEMENOV via Getty Images
A man with a Russian flag greets armed men in military fatigues blocking access to a Ukrainian border guards base not far from the village of Perevalne near Simferopol on March 3, 2014. About 1,000 armed men surrounded the base of the 36th detached brigade of the Ukrainian Navy's coastal guards since yesterday in a tense standoff in the flashpoint Crimea peninsula. Russian troops and military planes were flowing into Crimea today in violation of accords between the two countries, Ukrainian border guards said. AFP PHOTO / ALEXANDER NEMENOV (Photo credit should read ALEXANDER NEMENOV/AFP/Getty Images)

アメリカ屈指のロシア専門家であるストローブ・タルボットは、旧ソ連のニキータ・フルシチョフ元首相の回顧録を英訳した経験もあり、1994~2001年にかけては国務副長官を務めた。現在はシンクタンク「ブルッキングス研究所」の所長である。8月18日、ワールドポスト編集長ネイサン・ガーデルズが彼にインタビューした。

ワールドポスト:プーチン大統領が実際にウクライナ侵攻を行った場合、欧米諸国はどう対処すべきですか?

ストローブ・タルボット:ロシアは既にウクライナへ侵攻しています。各国の政府やメディアがロシアによる侵攻の可能性、危険性や脅威について語り続けていることについては苛立たしく、理解できません。

ロシアは今春の初めにウクライナを侵攻しています。いわゆる「リトル・グリーン・メン」、つまり緑の軍服でバッジを付けていないロシア兵を皮切りに、肩章を付けてクリミア併合を掲げる兵を送りました。ロシアはウクライナ東部にいる親ロシア派の後ろ盾であり、現地でも戦力となっているのです。

これは侵攻がすでに行われている状態であると言えます。ロシアがウクライナへ侵攻していないという、ロシアが主張する見え透いたウソに同調して行動するのは、現在の状況を対処するにあたって好ましくないことです。

ワールドポスト:現在、欧州諸国が制裁を強めてきていますが、これは対応として十分ですか?

タルボット:はい、十分だと思います。もっと厳しくしても良いのは明らかですが、大西洋同盟の結束力を維持し、戦争に疲弊しているアメリカ国内への逆風にならない方法で制裁を強めることができるのかどうかが、課題となっています。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相が先頭に立ち、オバマ大統領とほぼ足並みをそろえているという事実は大きなプラスになっています。制裁はロシアに効果的に働いています。8月中旬の時点で、ロシアは次にどのような行動を取るべきか、決めかねているようです。彼らが次の段階に踏み込めないでいるのはおそらく、欧米諸国が一体となった対応がロシアにとって極めて効果的であるという、不愉快な驚きが要因だと思います。

ワールドポスト:ポーランドのラデック・シコルスキ外相は、北大西洋条約機構(NATO)はさらに活動を推し進め、「東側を強化する」べきであると主張しています。これはロシアへの一層の抑止力、あるいは挑発となるでしょうか?

タルボット:彼の発言の意図ははっきりとはわかりませんが、NATOはポーランドを含め、多くの観点ですでに強化されてきています。さらに、「NATO発足時メンバー」つまり冷戦終結以前から加盟していた国々からバルト三国、特にエストニアへ軍を派遣するために、故意に見える形でなされた対策もあります。イギリスとドイツは米国に対して航空支援を行っています。

ひとつの必須条件が満たされました。NATOの正式加盟国はすべてNATOの条約第5条の対象となっているということをロシアに納得させるということです。この条約では、危険が生じた場合、NATO加盟国は、脅威にさらされている国を防衛するために参戦しなければならないと定めています。これはひとつの抑止力となっています。

ワールドポスト:結局のところ、プーチン大統領の追い求めているものは何なのでしょうか?

タルボット:ミハイル・ゴルバチョフ大統領によって開始され、ボリス・エリツィン大統領によって上向きになり、推し進められた改革の逆戻しを求めているという見方は、少し話を単純化しすぎかと思います。

旧ソ連の最後の大統領と旧ソ連崩壊後初のロシア大統領の任期は連続していました。その中でゴルバチョフ、エリツィンの二人の大統領は20年以上に渡ってロシアを新たな、そして前途有望な軌道に乗せたのです。ロシアそのものにとって勝算のある軌道です。

改革の基本的な内容は、ロシア社会の開放、旧ソ連の民主化と連邦化であり、国民に責任と、政府が構成する政策について発言権があるという感覚を与えることが目的でした。改革の目的は「大きな嘘」を取り除くことでした。ロシア国民を欺き、ロシアが世界中で画策していたことを隠すために存在したウソです。これがエリツィン大統領の「開かれた社会」で継続された「情報公開(グラスノスチ)」、つまり透明性によって置き換えられました。

彼らの外交政策では、外部世界に対して極度に競争が求められるゼロサム主義を勝算のないものとして放棄し、代わりに欧米諸国、国際社会とのパートナーシップとそれらの政策に従うことを求めたのです。

今や、それらはすべて、プーチン大統領により危機にさらされ、無力化されています。ウクライナ問題から見て取れるように危険であるだけでなく、長期的にロシアに悪影響を及ぼします。

旧ソ連の解体を成し遂げた、旧ソ連後最も影響力のある指導者としてエリツィン大統領が下した重大な決断の一つは、共和国間の境界線は、新独立国家の国境線であることを保証するというものでした。

この決断が、旧ソ連を、大まかに言って平和的に非暴力で比較的順序立てて解体することを可能にしたと言えます。ユーゴスラヴィアで起こったような流血を伴う戦争のようなものを回避できたのです。

プーチン大統領はこの決定を破棄し、セルビアのスロボダン・ミロシェヴィッチ氏の方針に倣っています。この方針を実行する中で、プーチン大統領はまさにロシア連邦の暴力的な解体を引き起こしてしまうかもしれません。

ワールドポスト:武力行使による境界線の変更と、それに対する反応は、国際秩序全体に対して一層幅広い影響力を持ちます。ロシアへの制裁がとれほど正当化されても、ロシアを中国と共に反欧米陣営へ押し込むことになります。中国は米国の「アジアへの方向転換」を中国の成長を抑制するためのものと見なしていますから。

それは懸念されますか?

タルボット:これはさしたる根拠のない、非常に表層的な現象だと思っています。プーチン大統領と中国の習近平国家主席が発表した意向からは、この現象が複数のブロックに分裂していることが表れている感じがします。しかし、長期的に見ると、継続していくものだとは思いません。

何よりもまず、 ロシアと中国は彼らの言うところの米国の「覇権主義」が大きな脅威であるということに固執しています。これが脅威なのではありません。

ロシアと中国の両国にとっての本当の脅威は、それらの国が将来孤立してしまうことです。

ロシアと中国は違いが大きく、同時にこれは複雑な問題です。中国は世界経済に深く組み込まれており、そこから利益も享受しているので、その利益を危険にさらしたくないと考えます。このことが中国にブレーキをかけています。

ロシアは世界経済に組み込まれていませんが、これはロシアが圧倒的に石油製品の輸出に頼っているという要因が大きいです。ロシアには近代的製造やサービスによる経済が存在しません。

したがって、ロシアと中国はしっかり適合するとは言えないのです。

二つ目の問題として、相容れない地政学的、民俗学的な現状があります。ロシアは世界で一番広い領土を持つ国で、世界で一番人口の多い中国と、国境線の多くを共有しています。ロシアは中国の欲しがるものを多量に保有しています。原料のことです。

これは将来の激化する競争、またさらには紛争に対する打開策です。

長い目で見れば、プーチン大統領はそうは見ていませんが、彼はむしろ、中国が狙っている資源があるにも関わらずそれを守る人がほとんどいないロシア東側の広大な地域をロシアが支配できるかどうかについて懸念するべきです。

ワールドポスト:つまり、プーチン大統領は未来でなく、過去に目を向けているということですね。

タルボット:それよりひどいですね。彼は未来のモデルとして、過去を見ているのです。これは極めて軽率なやりかたです。ロシアにとっても、また他の人々にとっても。

English Translated by Gengo

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