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2014年12月22日 16時24分 JST | 更新 2014年12月24日 18時09分 JST

「ハイスコアガール」刑事手続きに反対 有識者27人が共同声明(全文)

square-enix

人気漫画「ハイスコアガール」が著作権侵害だとして、著者や編集者が大阪府警に書類送検された問題で、著作権に詳しい大学の研究者や弁護士ら有識者27人が、刑事手続きに反対する共同声明を12月22日に発表した。

この声明では、「著作権侵害の成否が明らかではない事案について、強制捜査や公訴の提起等の刑事手続が進められることは、今後の漫画・アニメ・ゲーム・小説・映画等あらゆる表現活動に対して重大な委縮効果をもたらし、憲法の保障する表現の自由に抵触し、著作権法の目的である文化の発展を阻害することとなりかねない」と慎重な判断を訴えている。

「ハイスコアガール」は90年代のゲームセンターを舞台に、少年少女の淡い恋愛を描くラブコメディー。スクウェア・エニックス(スクエニ)社がこれまでに5巻まで発行しており、累計部数は約110万部。実在のゲームが登場するのが特徴だが、大阪府吹田市のゲーム会社「SNKプレイモア」が、「自社が著作権を持つゲームキャラクター多数を無断で使っている」として刑事告訴した結果、東京都新宿区のスクエニ本社ビルが8月5日に家宅捜索を受けていた

作者の押切蓮介氏と出版元のスクウェア・エニックス社の役員・担当者15人の計16人が、11月17日に大阪府警に書類送検されるなど刑事手続きが進んでいる。もし大阪地検が起訴すれば刑事裁判がスタートするが、今回の声明が一石を投じるかが注目される。

声明文の詳しい内容と賛同者は以下の通り。

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「ハイスコアガール」事件について
―著作権と刑事手続に関する声明―

月刊ビッグガンガンに掲載された漫画作品「ハイスコアガール」内でのゲームのキャラクターの利用について、著作権法違反を理由とする刑事告訴が行われ、家宅捜索や出版社の担当者・役員、漫画の著作者についての書類送検が行われている。

出版社は、家宅捜索後「ハイスコアガール」の回収・販売停止・一時休載の措置をとるとともに、著作権侵害の事実がないことの確認を求め債務不存在確認の民事訴訟が提起されている状況にある。以下の理由から、本件のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について、刑事手続が進められることに反対する。

刑事手続・民事裁判で問題となっている「ハイスコアガール」内でのゲームのキャラクターの利用態様については、著作権侵害の要件としての類似性が認められない可能性、また適法な引用(著作権法 32条)に該当する可能性等があり、著作権侵害が明確に肯定されるべき事案とは言い難い。

著作権を巡る紛争では侵害の成否が「微妙」な事案が少なくない。民事裁判においても第一審、第二審、上告審とで侵害の成否の判断が分かれることがしばしばある。過去の刑事事件においても「微妙」な事案につき公訴が提起され、最終的に無罪とする判決が確定した裁判例がある(仙台高判平成 14 年 7月9日判時1813号150頁〔ファービー人形〕、最決平成23年12月19日刑集65巻9号1380頁〔Winny〕) 。

著作権侵害に係る刑事罰・刑事手続は、典型的な海賊版の事案等、明らかな著作権侵害行為が行われている事案であり、かつ民事訴訟では十分な権利行使ができない状況においては、実効性の点で重要な意義を有するものである。

しかし本件のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について、強制捜査や公訴の提起等の刑事手続が進められることは、今後の漫画・アニメ・ゲーム・小説・映画等あらゆる表現活動に対して重大な委縮効果をもたらし、憲法の保障する表現の自由に抵触し、著作権法の目的である文化の発展を阻害することとなりかねない。従って、著作権侵害に係る刑事手続の運用、刑事罰の適用に対しては謙抑的、慎重であることが強く求められる。

以上のことから、本件のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について、刑事手続が進められることに反対する。

■賛同者(50音順)

・今村哲也 (明治大学情報コミュニケーション学部准教授)

・大野幸夫 (明治大学法学部教授)

・桶田大介 (弁護士、一般社団法人日本アニメーター・演出協会 監事)

・金子敏哉 (明治大学法学部准教授)

・田中辰雄 (慶應義塾大学経済学部准教授)

・中山信弘 (明治大学研究・知財戦略機構特任教授、東京大学名誉教授、弁護士)

・野口祐子 (クリエイティブ・コモンズ・ジャパン)

・福井健策 (弁護士、日本大学芸術学部客員教授)

・藤本由香里 (明治大学国際日本学部教授)

・三村量一 (弁護士、元・知的財産高等裁判所判事)

* 以上、明治大学知的財産法政策研究所コンテンツと著作権法研究会内の賛同者

・相澤英孝 (一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)

・井関涼子 (同志社大学法学部教授)

・井上由里子 (一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授)

・熊谷健一 (明治大学法科大学院教授)

・栗田昌裕 (龍谷大学法学部准教授)

・鈴木將文 (名古屋大学大学院法学研究科教授)

・高倉成男 (明治大学法科大学院教授)

・辰巳直彦 (関西大学法学部教授)

・田村善之 (北海道大学大学院法学研究科教授)

・張睿暎 (東京都市大学メディア情報学部准教授)

・長塚真琴 (一橋大学大学院法学研究科教授)

・中山一郎 (國學院大學法科大学院教授)

・平嶋竜太 (筑波大学大学院ビジネス科学研究科教授)

・宮脇正晴 (立命館大学法学部教授)

・本山雅弘 (国士舘大学法学部教授)

・山神清和 (首都大学東京大学院社会科学研究科教授)

・吉田広志 (北海道大学大学院法学研究科教授)

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