あの人のことば

日本人学校が人気? 税金・学費・医療費のない資源豊かなUAEの暮らしとは

2014年12月26日 21時10分 JST | 更新 2017年08月21日 00時55分 JST

UAE(アラブ首長国連邦)人男性と結婚後、現地に移住した美奈子アルケトビさん(写真)は10月、写真集『砂漠のわが家』(幻冬舎)を出版。動物たちとの種を超えた交流や、広大な砂を描き出す写真は「すごい」「癒される」など反響を呼んでいる。

砂漠の家で、11種約200匹の動物たちとの暮らす日々を聞いた前編に続いて、後編では、大都市ドバイなど発展目覚ましいUAEの現状や教育環境、家族のつながりや結婚の慣習など、日本との違いについて話を聞いた。

minako

■UAEの環境や文化について

——今の家は、UAEの郊外でしょうか。どんな環境ですか?

UAEは、もともと砂漠だったところに街ができているので、ドバイのような大都市でも、少し移動すれば砂漠が広がっています。わが家の庭側は地平線まで砂漠が広がっていますが、表側はそれほど遠くないところに大きなハイウェイがあって、ドバイまで車で約1時間半のところにあります。

この10年で道路が整備されて、砂漠にも人が入ってくるようになり、サンドバギーを楽しむ人が家のすぐ近くまで来るようになりました。落ち着いて散歩できなかったり、ゴミも増えたり......環境はずいぶん変わりました。

世界一高いドバイのビルは、私が来てから建設されました。ドバイには、ダイソーや紀伊國屋書店のほか、日本食レストランもできて便利になりましたね。以前は、包装紙を探すのも大変で、大事にとっておいたものですが、今は何でも手に入るようになりました。

——UAEの家族とは、どんな交流をされていますか?

UAEでは、毎週金曜に家族で集まる習慣があります。普段からお祈りしていますが、毎週金曜は、キリスト教の日曜礼拝のように、モスクに集まって1時間ほどお説教のようなものを聞きます。その流れで、親戚が実家に集まります。結婚して遠くに暮らしている夫の妹も来ますね。

UAEの休日は、もともと木金でしたが、世界の国々と休みが違うと経済活動がストップしてしまうので、あるときから、金土が休みになりました。

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毎週金曜日は、夫の妹も、離れて暮らす夫の兄家族も大集合。

——UAEはイスラム教の国ですね。結婚などの文化は、日本とどのように違いますか?

夫の妹の結婚式に、親族として参加したときに撮影を頼まれたことがありました。結婚式は通常、1000人くらいの来賓を招待して、男女に分かれて一日中盛大にお祝いします。

夜10〜11時頃になると、新郎が親族の男性と一緒に、新婦をお祝いしている女性だけの会場に来て、そこで初めて2人は顔を合わせます。新郎が来た瞬間、お祝いしていた女性たちは、ばーっと壁の影に隠れるんです。そして新郎の顔を見た後は、みなさん満足して自然に帰っていかれました(笑)。

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男性陣は新郎を残して退場。新郎と新婦が壇上に残ってみんなにお披露目。

よいご縁であればいいですけど、会ったら「え......」となって結局離婚するケースもよくあるようです。UAEでは離婚する人は多いですね。結婚するときにも「離婚するときは、(夫が妻に)いくらの保証金を渡します」と申請するので、離婚はそれほど難しくないです。

■UAEと日本、教育の違いについて

——UAEでは、連邦予算の21%が教育予算に投じられているそうですね(※)。大学まで授業料が無料だと聞きました。※日本は、公的支出の中に占める公的教育費の割合と、GDPに占める公的教育費の割合もOECD諸国の中で最低のグループ。

そうですね。小学校や中学校、高校も無料です。私立の学校は学費もかかりますが、国立の大学であれば、国民は無料で通えます。

病院も、国立の病院は無料です。資源があるので税金もありません。自分で働いて稼いだ分は、自由に使えます。

——税金がない。すごいですね。みなさんの働きかたはどうですか。勤勉な日本人と比べていかがですか。

うーん、もちろん勤勉な方もいますが、もともとは砂漠で暮らす遊牧民ですし、日本と比べると勤勉ではないと思います。今は、経済成長している資源豊かな国なので、短時間の勤務でもけっこうな給料をもらえるんですね。

夫の両親の世代は遊牧民で、ラクダで点々と移動する暮らしをしていましたが、この20〜30年の間に定住するようになり、石油が発掘されて豊かになって、出稼ぎの人が来て、家々にお手伝いさんがいるような暮らしぶりになりました。ものすごく環境は変わっていったようです。

例えば、スーパーのレジで働いているのは、出稼ぎの人がほとんどでUAEの人はほぼいません。フィリピンやインドの人が多いですね。ラクダなど家畜の世話は、バングラデシュやパキスタンなどから来ている人が多いようです。都市部は、ほとんど英語が通じます。

——教育環境も整っているUAE、若者の暮らしはいかがですか?

こういう社会になると、若者は働かなくなっているように感じます。正確には、若い人たちは、生まれたときから裕福な国で育っているので、ものすごく職種を選ぶようになっているようです。夫の会社では、大学を卒業して若者が、就職面接で未経験なのに「マネージャーに就きたいです」といったケースもありました。

私も、高校生が高級車に乗っているのを見かけたりすると「この子たちが大人になったら、この国はどうなるんだろう......」と、ちょっと心配になることもあります。

そんなUAEでは、今日本人学校が人気みたいです。日本人学校は、ドバイとアブダビに2つあって、ドバイの方は知りませんが、アブダビの学校は、国がUAE人を年に2〜3名受け入れるように定めて、毎年すごい倍率だそうです。

——日本人学校が人気の理由はなんでしょうか。

サウジアラビアのテレビ局が放送した「日本の教育」を特集した番組が反響を呼んだようです。私は観なかったんですけど、夫の妹からも「日本の教育は素晴らしい」といわれたほどです。

私たちには当たり前ですが、例えば「食べ終わった食器を、自分で片づける」「帰るときに教室を掃除する」といったことが素晴らしいといわれましたね。

朝日新聞では、一番上の子がUAEの学校に、2番目の子が日本人学校に通っているという、3人のお子さんがいる家族が紹介されていました。

上の子は、部屋にゴミを捨てても家政婦さんが掃除してくれるので、家のことができなかったんですが、2番目の子は、脱いだ服や靴、食べ終わった食器などを自分から片付けたそうです。トイレ掃除もして「お客さんが来たときのために、きれいにしておきたい」」と。日本でも、そんな子なかなかいないんですけど(笑)、お父さんが3番目の子も日本人学校にいれたそうです。

——そんな反響を呼んでいたとは。日本の教育はUAEに輸出できるかもしれないですね(笑)。

■UAEでの10年間の歩みについて

——この10年間で、動物たちと大きな家族を築かれました(前編)。最後に、文化の違う国で過ごして、戸惑ったことや、何か困難に感じたことはありましたか?

今は本当に、夫の家族に大切にしてもらっていますが、結婚した当初は、実は夫と夫の母親が断絶状態だったことでしょうか。断絶しているときに、日本人の私が嫁として来たので、2人の関係に火に油を注いでしまったようです。

夫も、実家のサポートなしに私と暮らすのは大変だったと思います。私も最初、両親に結婚を反対されたので、心配させたくなくて、両親に「家族や親戚とはうまくやっているか」と聞かれるたびに「うんうん......」と答えることしかできませんでした。

UAEでは、結婚の手続きには誰か証人が必要なんですが、私たちは親族にお願いできなかったので、家を建てるのを手伝ってくれたバングラデシュの男性に来てもらいました。でも、バングラデシュの人の本名って、ものすごく長くて、裁判所の人が名前がわからないというので、結局、他の手続きで来ていた一般の人に声をかけて、証人になってもらいました(笑)。

でも、UAEに移住して4〜5年経った頃だったでしょうか。あるとき、夫が母親と雪解けをしました。それからは、いまだにアラビア語がよくわかっていない私ですが、本当にかわいがってもらっています。

——UAEの現状や美奈子さん一家の暮らしがよくわかりました。ありがとうございました。

写真集『砂漠のわが家』

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