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「マタハラ白書」で被害実態明らかに 女性上司からも暴言「堕ろすのは簡単。十数えれば終わる」

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MATAHARA
マタハラ白書の発表を行う(左から)渥美由喜さん、小酒部さやかさん、圷由美子弁護士 | 猪谷千香
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働く女性が出産や妊娠をきっかけに、職場で嫌がらせをされたり、解雇や降格などの不当な扱いを受けたりする「マタニティ・ハラスメント」(マタハラ)。その被害女性が中心となって活動しているマタニティハラスメント対策ネットワーク(マタハラNet)は3月30日、厚労省で会見、マタハラの実態を調査した「マタハラ白書」を発表した。

それによると、マタハラが長時間労働によって引き起こされていることや、マタハラ加害者は男性ばかりではなく女性の上司や同僚も多いことがわかった。マタハラNetの代表で、3月にアメリカ国務省が選ぶ「世界の勇気ある女性賞」を受賞した小酒部(おさかべ)さやかさんは、「この調査結果を企業は受け止めてほしい」と話した。

■「小さな企業だからマタハラが起こる」というイメージは誤り

「マタハラ白書」の調査は被害者の実態を可視化するために行われた。調査期間は1月16日〜26日、マタハラNetのサイト上で調査し、被害者186人から回答があった。雇用形態別では正社員が7割、非正規社員が3割だった。マタハラを受けた年齢は20歳から45歳までで、29歳から39歳までの人が多い傾向にあった。

社員規模別に見ると、「10人〜100人」規模で約32%、「100人〜500人」規模で約19%、「1000人以上」約13%で、大企業であってもマタハラは行われていた。中には東証一部上場企業も約19%あったという。「マタハラが行われる企業は規模を問わないというイメージがあるが、上場企業も19%入っています。企業の皆様にはこの数字を受け取ってほしい」と小酒部さんは話した。

また、職場環境については、「残業が当たり前で8時間以上の勤務が多い」が約38%、「深夜に及ぶ残業が多い働き方」が約6%と、合わせて44%となっており、長時間労働がマタハラの温床となっていることがうかがえた。有休取得率も良いとはいえず、「毎年1日〜2日しか取得できなかった」が約22%、「1度も取得したことがない」が約20%で、合計約42%の人が、産休や育休以前に有休が取りづらい環境に置かれていた。

■ケガや病気の休みは「不可抗力」で、妊娠の休みは「自己責任」という意識

マタハラの加害者は「男性上司」というイメージが強いが、必ずしもそれだけとは言い切れない結果も得られた。最も多いのは「直属男性上司」で30.1%、次いで「人事部」と「男性の経営層」がそれぞれ13.4%だった。

「人事部」がマタハラをするケースについて、「そもそも法律の知識がない会社も多いです。産休、育休中のお給料を会社が出すと誤った考え方をしていたり。悪質なのは、違法だとわかっていた上でマタハラをする企業もあります」と小酒部さん。「相談を受けたある大学4年生の女性は、内定式で経営者から『妊娠しないでください』と言われたそうです。女性は内定を蹴って、その企業への就職を辞めました」

続いて多かったのが「直属女性上司」の12.5%、「女性の同僚」10.3%で、女性の上司や同僚からのマタハラも少なくなかった。女性が加害者の場合は、「妊娠をきっかけに女性の同僚に無視された」、「大事なことを自分の不在時に伝達、教えてもらえなかった」といった事例があった。女性上司からは、「それぐらいで流れる(流産する)ならもともとダメな子よ」「あんまり太るとお産が大変よ、働け」「私は育児休暇を取らなかったけどね」「堕ろすのは簡単。十数えたら終わってるから」など、心ない言葉を言われるケースがあったという。

同じ女性が妊娠した同僚や部下にマタハラをしてしまう事例について、小酒部さんはこう指摘した。

「1週間休むとしても、病気やケガは不可抗力になりますが、妊娠に関連することだと自己責任という捉え方をする会社や社員が多いです。男女関係なく、仕事に穴を空けることが悪という価値観から、マタハラ被害が起こるのだと思います。女性加害者の中にも、ご自身が出産、育児をしている方もいますが、それぞれの女性によってリソースは違う。親御さんが近くにいらっしゃる女性もいれば、地方出身の女性もいる。『私ができたのにどうしてあなたにはできないの』という意識があるのでは」

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マタハラ白書の発表を行う(左から)渥美由喜さん、小酒部さやかさん、圷由美子弁護士

■社内で相談しても7割以上で被害は継続、労働局の対応に不満も

マタハラ被害にあった場合、社内で相談しても「対応せずにそのままにされた」という人が47.5%にのぼった。「余計に傷つく言葉を言われた」人は12.9%、「不利益を強要された」人は9.9%に及び、マタハラを放置されたり、さらに被害が広がってしまったりした人は7割を超えた。

社内だけでなく、労働局に相談したと回答した人は24.7%だったが、その対応に不満を訴える人が多かった。「親身になって相談に乗ってくれたか?」という問いに対して、「不満足」「そのような対応はなかった」と答えた人は58.5%。同じく「解決に導こうと対応してくれたか?」という問いに対しても、64.2%の人が対応に満足していなかった。

「マタハラ白書」の監修を行ったダイバーシティ・コンサルタントの渥美由喜さんは、日本労働組合総連合会が実施したインターネット調査などから、マタハラ被害者は17.5万人に及ぶと推算。「マタハラは単なる被害者の問題でも関わらず、社内だけでなく社外にも拡散していきます。これは企業にとって大きなリスクであり、一件でも起こしてはいけない。誰でも妊娠、出産を経て、働ける、昇進昇格を目指していける職場風土を作る必要があります」と語った。

■セクハラ・パワハラと並ぶハラスメントとして対策を

また、渥美さんは、「マタハラだけではなく、イクメンの男性に対しても、『なんで男のお前が育休を取るんだ』と責められるパタニティー・ハラスメント(パタハラ)や、介護をしている人へのケアハラもあります。最近、そういうファミリー・ハラスメント(ファミハラ)が最近、増えています」と指摘。「ハラスメントをなくす社会を目指す上で、今回のマタハラ白書は有意義だと思います。マタハラをひとつの切り口にして、企業は職場風土改善に取り組むべきです」と話した。

マタハラNetを支援、「マタハラ白書」の監修も行った圷由美子弁護士も、2015年1月にマタハラ被害者の訴えを認める結果となった最高裁判断を受けて、「マタハラが社会問題化し、最高裁判断、通達も出た今、職場のマタハラ対策はセクハラ・パワハラと並び、必須となりました」とコメント。「マタハラ対策は企業にとって、これから大介護時代を迎えるにあたり、要介護者を抱える管理職対策にも通じます。今こそ好機、これをリスク管理の対応にとどめず、むしろ戦略的に、大胆な働き方改革に乗り出すべき」とした。

マタハラNetでは今後、実施したアンケートデータを盛り込んだ「マタハラ白書」の詳細版を書籍として発刊。企業向件研修や立法提案などを引き続き行っていく。

アメリカ国務省から「世界の勇気ある女性賞」に選ばれたことを受けた小酒部さんは次のように語った。

「国務省が出す国際的な賞としては最大のものですが、日本ではあまり知られていません。どうしてかといえば、発展途上国の方が選ばれることが多く、ノーベル賞や芥川賞と違ってすでにある功績よりも、この賞の名前を借りてその活動をより充実させてくださいという賞になっています。私もそのミッションを受けています。そしてこれは、日本企業に課せられたミッションとも思っています。ぜひ、企業の皆さんにマタハラ白書の結果を取っていただき、私たちと一緒にこの問題に向き合っていただけたらと思います」

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「世界の勇気ある女性賞」に選ばれた小酒部さやかさん

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