ニッポンの良質な「中古住宅」という選択 社会変動の中で変わった市場

2015年06月24日 00時05分 JST

住宅市場の中で、国土交通省が活性化に力を入れ始めるなど「中古物件」が注目を集めている。

そこで改めて考えるのが「私たちは住宅に何を求めるのか?」ということだ。建物としての品質はもちろん、「安心して暮らせる」という面も大事にしたい。大震災や耐震偽装問題などを経た今だからこそ、求めるものがあるはずだ。

同時に日本の経済状況や価値観も大きく変わった。時代の変遷に伴い、改めて見直され始めたニッポンの中古住宅について、野村不動産アーバンネットの執行役員 神園徹氏に話を聞いた。

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「家を買う=新築」という傾向が強いのは、先進国では日本だけ?

日本では、長期にわたって住宅市場における新築の割合がとても高かった。しかし、この傾向は、先進国では日本特有と言われており、フランスやアメリカでは中古物件が6割〜8割ほどを占めている。日本は「新築信仰」が強かったのだ。

「中古住宅」と聞いてどんな印象を持つだろうか? 古いという言葉に連想され、「使われていない」「朽ちた建物」「雑草の生い茂った庭」などをイメージするかもしれない。

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千代田区の中古物件

ただ、たとえばバブル期以降に造られたマンションは、コンクリートの耐久性が高い。そのため老朽化に強く、内装を少し直すだけで、新築と同じくらい快適なマイホームを手に入れることができる場合もある。

「特に首都圏のマンションは、堅牢なだけではなく、質も高いです。木造と異なり数十年で傷んでしまうこともないため、再生しやすく、中古物件として販売しやすい側面もありますね」(神園氏)

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港区の中古物件

「本来、不動産というものは戸建であれマンションであれ、人が住まう『家』なわけです。それは資産であり、相続――つまり、引き継いでいくものであったはず。資産であり住まいである、そういった両面の価値を持つのが不動産なのです」と神園氏。

氏の意見と同様に、国交省も「いいものを作って、きちんと手入れして、長く使う」社会への移行を目指し、5年ほど前から中古住宅流通市場の活性化に力を入れている。

では、日本における中古住宅市場を取り巻く環境とは一体どうなっているのだろうか?

経済、ライフスタイル、価値観の変容の中で変わった「住まい」のあり方

日本は、もともと木造建築が主流だった。木造は石造と比べると寿命が短いため、「住宅」よりも「土地」を受け継ぐイメージが強かったという。戦後からの経済成長に土地神話が相まって「高いお金をだして新しい家を買う」ことがある種の理想となっていたようにも見える。さまざまな要因が絡みあい、敷地の上に新しい“ハコ”を作っては壊す「スクラップアンドビルド」が当たり前のように行われていた。

しかし、戦前—戦後−成熟社会へという流れにともなってライフスタイルの変化もあり、求められる間取りも変わった。その1つの例が、今日におけるマンション市場だろう。木造一軒家が主流だった日本市場で鉄筋コンクリート製の集合住宅が増えていったのだ。

たとえば、1都3県における新築マンション供給データによると、ピークは1994年〜2002年で年間供給数が10万戸を超えていたこともある。そのため、90年代後半から2005年あたりまでは「大量供給時代」と呼ばれている。

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新築マンション供給データ(1990〜2014)/東京カンテイデータ

ただ、一種バブル状態だった不動産市場にも陰りが見えてきた。そのきっかけとなったのが、サブプライム危機やリーマンショック。2006年辺りを境に、ピーク時に10万戸を超えた新築マンションの供給は4万戸台にまで落ち込んだのだ。

一方落ち込んだ新築市場に取って代わり、1都3県における中古住宅市場が盛り上がりを見せ始めたのもこの時期である。先述の通り、国が活発化を促進させた背景もあるが、「自然な流れ」だったと神園氏は語る。

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中古マンション成約データ(1990年〜2014)/レインズ

「近年における消費者の土地に対する価値観の変化、不動産を取り扱う企業が次世代に向けた資産価値提示のフェーズに入ってきたのではないか、と見ています。土地よりも『家』である住まいの価値が見直された結果、中古市場が伸びたのだと思います」(神園氏)

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港区の中古物件

家は「財産」でもあり「人の生命を守るもの」だ。優良物件が増えているといえど、より安全・安心なものを選びたい。そこで鍵となってきているのが仲介のプロフェッショナルたちなのだ。

見えないものを“見る”プロの目

「日本の最先端の住まいは一級品です。海外のものに比べ、日本の物件は細やかなところまで気を使って設計されています。それは一級のホテル以上、世界にも類を見ないほど高品質と言っても過言ではないと私は感じています」と神園氏。

加えて、地震大国の日本の物件は、耐震性において世界最高水準を誇るため、中古市場に長く流通させられるそうだ。「建物としての耐久性が高いため、たとえ見た目が古くなったとしても、入念に点検をし、リノベーションした物件は、再び快適な空間に生まれ変わらせることができます。日本の中古市場はそういった面でもとても優良だと思います」

しかし一方で、数多く続いた偽装問題は中古住宅のリスクを我々に突きつけたのも事実だ。

「中古物件といえども、何千万、時には億単位のお金を出して買うこともあります。しかも、生命を預ける『家』を買っている。買ったあとに『失敗しました』では済まされません。特に、耐震性やもともと建物を建てた企業の情報などは、目で見ることはできない。表面のデザイン以外の部分こそが、安全性などに影響してくるものですから、そこをサポートするのがわれわれ不動産仲介の重要な役目です」と神園氏は語気を強める。

なぜ、仲介業者の役割が大きくなってきたのか?

素人目には気がつきにくい部分まで調べ、さらにその品質を保証して仲介する責任がある、と神園氏は考え、「ホンキの補修保証」を立ち上げた。これは、検査から補修、保証まで専門の事業者と野村不動産アーバンネットが協力して築きあげたもので、他にはあまり例を見ない保証だ。

「言わば、車でいうところの『車検』と『整備』をあわせもったような制度です。私たちは中古不動産市場にこの考え方を持ち込もうと考えたのです」(神園氏)

野村不動産アーバンネットは、専門家による検査と補修を行い、その箇所についての保証までを一貫して行うサービスをはじめたのだ。マンションなら、所定の住宅設備機器が検査、補修、保証の対象となる。「ホンキの補修保証」では、専門家が第三者的立場で検査を行っている点も特徴的だ。通常は営業担当が確認を担うことがほとんどだが、より大きな安心感を提供するために専門業者と協力する道を選んだ。だからこそ、客観的で公正なレポートを出し、不具合が発覚した際は、その場ですぐに修理に着手することも可能なのだ。

これまでこの制度を利用した中古物件のうち半数以上が補修を要すると判定されており、結果として事故を未然に防ぎ、質を担保した形での中古不動産流通に寄与していると神園氏は胸を張る。

「さらに、保証期間を伸ばし、「ホンキの補修保証」付きの物件については保証期間をマンションの住宅設備保証では最長5年、戸建の建物保証では2年間としました。これは、不動産流通業界でもほとんど例がないものです。『保険』の役割も担いたいと思い、長い保証期間にしました」(神園氏)

ここまでするのはどのような信念からなのだろうか。「わたしたちは決して“エージェント”となることはありません。“仲介”業者のプロ集団を目指しています。つまり、人と人との幸せや願いを結び合わせる仲人のような存在を意味しています。同じ不動産は2つとして存在せず、「売りたい」というニーズと「買いたい」というニーズを結びつけ相互が納得し、幸せになってもらうことを信念としているからです」(神園氏)

不動産業に関わって20数年となる神園氏はその栄枯盛衰を見てきた。その結果として、不動産取引におけるポイントは “人”だという想いを強くしている。

「新人には、不動産仲介の意味をよく考え、野村の仲介+(PLUS)が何を仕事としているかをはっきり理解してもらうよう徹底した研修を行っています。信頼を得られるよう服装も含め、誠実さを体からも表現して、『あの人に、頼んでよかった。』と売主様からも思っていただけるよう、引き続き切磋琢磨していきたいと考えています。結局大切なモノを託すのはどこかの“会社”ではなく“人”なのですから」と締めくくった。