「4メートル先は"自分と関係ない世界"。だから人はゴミを捨てる」社会に混ざらなかった「森の遊び人」が子どもたちと見つけた希望

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「川や海は“きれい”であるべきって意見、ありますよね。僕はそういう人に聞きたい。“きれい”とは、どういう状態なのか?って。水の透明度なのか、たくさんの生物がいることなのか。そもそも、どうして“きれい”なことが正解と言えるのか」

山田陽治さんは神奈川県を活動の拠点に置く環境活動家だ。「ふるさと侍従川(じじゅうがわ)に親しむ会」の代表を務め、「森の遊び人」を愛称に、小中学校などの環境アドバイザーとしても活躍している。

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山田陽治さん(45)

侍従川は、横浜市金沢区を流れる都市河川。1970年代〜80年代にかけて生活排水や不法投棄によって、メタンガスが発生するほど汚染されたという。この河川で育った山田さんは約20年の間、地元を中心とした環境保全活動に取り組んできた。一度は汚れてしまった環境を改善する中で、ある発見をしたそうだ。それは一体何なのか? 話を聞いた。

「大人の認識」を越えた「子どもの感覚」が生み出した環境活動

−−20年間、どこかで働きながらではなく、環境保全活動一筋。これってなかなかできないことだと思うのですが、きっかけは何だったのでしょうか?

最初にこういう活動に踏み込んだのは、母校の大道小学校に生物が住めるような池、ビオトープを作るプロジェクトでした。当時20歳くらい。僕は、時間はもちろん約束が守れない、社会的にダメ人間でした。普通に働くことが出来ないといいますか……。そんな時にのめり込めたのが、子どもたちと原風景を取り戻す作業でした。最初は友人に誘われて始めたのですが、夢中になりましたね。

もともと自分は、人から野生児と言われるくらい自然の中で遊ぶのが大好きな子どもでした。住宅地に残された斜面緑地ではあったのですが、原体験は大きかったと思います。

——都市型の採集狩猟民族…みたいな感じでしょうか?

そうですね。原体験からくる「呼び戻される」感覚と、生徒たちと一緒に泥だらけになりながら遊ぶのが純粋に楽しかった。今思えば、こういうことを仕事にできるんだと、子どもたちに逆に教えてもらったような感じです。

「ふるさと侍従川に親しむ会」は、結成されて23年になります。最初は、大道小学校の先生方や地域の人たちで、学内に原風景を造り、そこで子どもたちが自然に親しむことができれば……という想いからプロジェクトがスタートしました。自分たちで池を造ったところ、オタマジャクシが住める環境ができ、カエルが棲息するようになったんです。

−−池作りが、侍従川流域の活動に幅を広げるきっかけは何だったのでしょうか?

この活動によって、生物がいなくなってしまった風景にトンボやメダカが戻ってくるようになりました。そんな中、メダカが雨水管を通じて、この池から侍従川に流れていることを発見した子がいたんです。

当初、大人たちは「侍従川は汚くてメダカなんて生きられるわけがない」と言っていたのですが、生き物が戻ってきていたんです。これは、下水道が整備されるなどインフラの力が大きかったのだと思います。次第に活動のエリアが広がっていき、現在の「ふるさと侍従川に親しむ会」が組織されました。

社会不適合者、ダメ人間だからこそ「見える」何かがある

NPOやボランティアって仕事の合間……余暇にするのが一般的だと思うのですが、僕はフルタイムでそれをやっていました。子どもたちと仲良くする様子を見て、親御さんたちは自分のやり方に理解を示してくれました。ただ、子どもたちと関わりのない大人の中には「あいつはちゃんと働かないし、指導もしない」と陰でクレームをする人もいました。でも、そういう時も子どもたちが僕を守ってくれたんです。「山田さんはそんな人じゃない!」って。

−−それだけ、子どもたちに必要とされていた…のかもしれませんね。

友だち感覚に近かったんでしょうね。それこそ兄貴分というか。大人は「子どもたちに川をきれいにさせろ」と言うのですが、拒否しました(笑)。僕はやりたくないことを強く拒絶してしまうので、そういうところが社会と折り合いが付けられなかった理由なんだと思います。

強制的に「させる」のではなくて、単純に川を好きになってもらいたい。自然の中で友だちとの思い出が増えて、ここが自分の場所だとわかってもらえば、自ずと「そこ(の環境)を守りたい」って思うようになるんじゃないでしょうか。少なくともゴミを投棄する側にならない。僕自身も、「掃除しろ」と言われるのって嫌ですし。「大好きな場所だから守りたい」という風になってほしいと思っていました。

−−子どもたちの中に大人が混ざって環境活動するとなると、教訓じみたものになりそうですが、もっと自然な学びですね。

自分自身、そういうのが嫌いだからかもしれませんね。先ほども言ったように、僕は普通の人ができることが全然できなくて。若い時はすごく悩みました。でも、だからこそ「人にはできることと、できないことがある」ことを前提に活動ができるんです。子どもたちにも「何かできないことがあっても、それは普通のこと。責めちゃいけない」と言っています。

「ふるさと侍従川に親しむ会」の中にも、人間関係を上手く構築できない子、不登校の子、ひきこもりの子もいます。でも、いいんです。良い部分は必ずあるので、そこを伸ばしていけばいい。自分もそうでしたから。

−−自発性をもって「みんなそのままでいいんだよ」というようなスタンスなのでしょうか?

そうですね。だいたい何をもって「いい子」と言うんでしょう? 勉強ができる子、学校にちゃんと通っている子だけじゃないんです。大人が勝手に決めたルールで縛りたくない。いろんな人がいることを認めることこそが、生物多様性につながっていくと思います。

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例えば、僕はよくフナムシなどの生き物を子どもたちに紹介するんですね。大きくプリントした写真を見せて。ほとんどの人が一瞬見ただけで「気持ち悪い」って言うでしょう。極論、それが非寛容な思想になっていくんだと思います。よーく目を凝らしてフナムシを見ると、意外と目がかわいい生き物に見えてきます。確かに、好きにはなれないかもしれない。でも、フナムシがそこにいることを享受できるくらいには、愛着を持って欲しい。見方を変えるきっかけを提供できたら、と思っています。

水が濁っている海を、どうして「悪い」と言い切れてしまうのか。

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−−最近では、トヨタのハイブリッドカーAQUAと地方紙が協力して行う環境保全イベントAQUA SOCIAL FES!!など、県外での活動も多いと聞きました。

はい。AQUA SOCIAL FES!!は、保全活動の中で知り合った「野鳥の会」の方に紹介してもらって、お台場会場でのアテンド役を担当しました。

−−東京の海はどうでしたか?

濁っているものの、かつてよりは格段にきれいになったと思います。でも、なんと言うんでしょうか……お台場は、お台場なんです。きれいとか汚いじゃなくてお台場。確かに地方の河川のほうが澄んでいる。でも、東京湾にはアカクラゲやカニなどの住民が「いる」んです。

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人だってそれぞれ長所や短所がある。性格がいい人もいるし、見た目がいい人もいる。それと同じで、澄んでいるところや濁っているところがあっていい。きれい・汚いという二元論で決め付けるのは、浅はかだと思うんです。人間目線でしか自然を見ていない。そうではなくて生き物目線で環境を見るべきだと思っています。その場所自体に愛着を持つことが、「環境を守りたい」という気持ちにつながっていく。

−−水がきれいなことが必ずしも正解ではないと。

そうですね。僕は、葉山の森戸川によく行くのですが、そこは下水普及率が約60%と低いんです。一般論で言うと、水質があまりよくないと言える。でも、そこは生物が豊かなんです。その理由は、急勾配のため酸素が入りやすいこと、相模湾が近いためいろんな生物が入れることなど地形由来なのかなと。場所が固有に持つ特性や地域性、そこでつくられた生態系は「一般論」よりずっとリアルなんですよね。

−−それぞれの場所で、個性がある環境がある……そのなかで私たち市民はどう環境にむきあっていけばいいのでしょう?

生き物の目線で考えることでしょう。僕の理念は、「今そこにいる住人(生き物)に対して思いを馳せる、知る、興味を持つ」ことなんです。まずは知ることが第一歩ですね。

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かつて、中学生たちと一緒に「イキモノ看板」を侍従川に作りました。汚いと言われるこの川にも多くの生物がいることを知ってもらうためのものです。活動当初はバイクや廃材の遺棄がひどかったのですが、こういった取り組みの効果なのか、少しずつ減っていきました。

侍従川は陸と水面まで、3〜4メートルほどしかありません。でも、ゴミを捨てる人たちにとっては、こんなに近くでも「自分と関係ない世界」なんですね。そこにどんな生物がいるのか知らなければ、自分たちにとっては存在しないのと同じ。だから、そこに生きる生物が傷ついても関係ない、心も傷まない。でも、「ここにはこんな生き物がいる」とか「子どもたちの遊び場」だとわかると違うと思うんです。

−−それこそ多様性を認めるってことですね。

川や海、森を掃除するのは手段の1つでしかありません。通過点に近い。かつて海外から視察に来た方が「川がきれいになったらどうするの?」と質問をしたことがありました。そのとき川掃除をしている大人たちはこの問いに答えられなかったんです。ビジョンがないままに、1つの正解を実践している人が多いのかもしれません。僕はそれをゴールにしたくない。


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自然での遊びを通して、自分の居場所を見つけて欲しい。その活動の中で、いろんな生物に、自然に思いを馳せる感性を身につけるのが子どもたちにとって豊かなことなのではないか。これが20年の活動を通して発見した答えです。

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