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警官が10代の白人少年を殺害した。でも、白人の事件には誰も抗議しない

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7月26日夜、19歳の白人少年ザッカリー・ハモンドは、サウスカロライナ州セニカにあるハンバーガーショップ「ハーディーズ」の駐車場に車を入れた。彼の隣には、1人の少女が乗っていた。そこで、マリファナを1袋売るため、人に会う予定だった。ハモンドが取引のことを知っていたかどうかは明らかではない。しかし、ハモンドも同乗者の少女も、実はその買い手がおとり捜査官だとは知らなかった。その後すぐ、別の捜査官が、ハモンドに致命傷となる銃撃を加えた

ハモンドがささいなマリファナの偽装取引で死亡した経緯について、我々に分かることは、どの言い分を信じるかにかかっている。

地元のセニカ警察は、「おとり捜査官の援護をしていた制服警官が、ハモンドの車に近づいていった」と話している。だが、その次に起こったことには言い分が分かれている。セニカ警察のジョン・コヴィントン署長は、「ハモンドが警官に対して車で向かっていったので、彼は命の危険を感じ、車に向かって2発発砲した。ハモンドの上半身に当たった一発が、致命傷となった」。と話している。ハモンドの家族が雇ったエリック・ブランド弁護士は「警官はハモンドの背後から2発発砲している。これは検死解剖からも裏付けられる」と語っている。銃撃から1週間以上経過しているが、オコニー郡の検視官、カール・アディス――真実を知るであろう数少ない人物の1人だが――は、どの方向から銃弾が撃たれているかについて、いまだに何も公表していない

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ザッカリー・ハモンドは少量の大麻を手に入れようとして警官に射殺された

銃弾がどこからハモンドに命中したかについて、警官は、「運転席横の開いていた窓から、ほぼ至近距離で発砲した」と述べている。この供述は、警官による一連の殺害について、警察の話が必ずしも説得力を持たないという意味でとりわけ疑問となる点だ。

こうした出来事が積み重なり、ハモンドの家族には悲痛な疑問が残った。ハモンドの車は、警官にまっすぐ向かっていったのだろうか、あるいは、ハモンドの父親が言うように、警官は、彼の息子が逃げようとしたから撃ったのではないか? 警官は本当に危機的状況だったのか? 事実は、警官が別の物を狙って発砲した時、ハモンドの車にあまりに近寄りすぎていたのではないか? 報道によると、ダッシュカム(ダッシュボードカメラ)の動画が連邦捜査局に提出され、地元の報道機関からも公開請求されているという。この動画は何か答えを呈示してくれるのだろうか?

こうした疑問は過去にも出てきているから、聞き覚えのあるものとなった。私たちは、このような疑問を持つことに慣れてしまっているからだ。そして私たちは、このように唐突に命が奪われることにつきまとう混乱や不信感にも慣れてしまっているし、「発砲する以外に方法がなかった」という警官の主張を聞くことでストレスを感じることにすら慣れてしまっている。ハモンドの殺害について、警察は最小限の情報しか公開しない。しかし、この慣れ親しんだ疑問は、今のところ慣れ親しんだ回答に行きつくのだ。

ハモンドの事件は、2014年に起こった別の警官発砲事件を思い起こさせるものだが、一つ異なる要素がある。ハモンドが白人であったということだ。ただし、ハモンドを撃った警官の人種は特定されていない。

ザッカリー・ハモンドは、ささいな薬物犯罪の逮捕の場面で、撃たれて死亡した。ここ最近、国民の関心が警官によるアフリカ系アメリカ人の殺害に向けられる中、ハモンドが白人であることは(唯一の理由ではないにしろ)この事件が今まで報道されない原因のひとつだ。

ハモンドが白人だったことで、彼の死に対する反応に影響を及ぼした。メディアが歯列矯正器具を付けた若い頃のハモンド少年の家族写真を使うことに、何の抗議も起きなかったし、ネットの住民は、彼の死が自業自得だと何とかして糾弾するために、ハモンドのソーシャルメディアのプロフィールを徹底的に調べようとするような流れも起きなかった。

白人対白人の犯罪については、誰も議論をしたがらないように見える。少なくとも今のところは、ハモンドの両親に犯罪歴があるかどうかは何も報道されていないし、ハモンドが学校で問題児であったかどうかも問われていない。

こうした点は、19歳の少年が殺されたことに対して何の慰めにならない。しかし一方で、黒人たちが同じ状況下で日常的に向き合っている現実とは異なるものだ。

また、ハモンドの死から多くのアメリカ人が不本意ながら向き合っている真実も浮き彫りになる。つまり、警察の暴力は誰に対しても(彼らの白人の友人やいとこ、兄弟、姉妹、そして彼ら自身にさえ)振るわれる、ということだ。悪質な警察の行動が有色人種のコミュニティに不公平な犠牲をもたらしているが、有色人種が声高く叫ぶ改革の要求は、私たち全てに恩恵をもたらすものだ。

多くのBlack Lives Matter(黒人の命は大切だ)運動に携わってきた人々は、このことを当初から言っている。そだから、主要メディアの多くがこの事件を取り上げない中で、アフリカ系アメリカ人のツイッターが、ハモンドの名前、そして彼に起きたことを知らしめるのに大きな役割を果たした。

サウスカロライナ州セネカの警察が、ザッカリー・ハモンド少年を後ろから撃ち致命傷を負わせた。家族が言うには、正当防衛ではない。

19歳のザッカリー・ハモンドが警官に背中を撃たれて殺された。50ドル相当の大麻を持っていた。大きなメディアは取り上げない。これをシェアしてくれたら、俺は堂々と言うぞ。ザッカリーのために、政府の腐った「麻薬戦争」に反対するために。そしてそれを止めるために、俺の力でできることは何でもやると約束する。

彼には凶悪犯のレッテルは貼られないだろう。しかし、だからといって警官がとんでもなく踏み外した行為をやっていなかったということではない。俺たちを殺すのはやめてくれ。

もう1人
10代の少年が
警官に殺された
背中を撃たれて。19歳になったばかりの子が。これは狂気だ:(

このようなツィートが数多く投稿された。ある者は単に、悲劇的なハモンドの死を語っていたが、他の者は、一部の人々の間からしか大きな反応が起こらなかった事実に対し皮肉を込めた投稿をした。ここでいう一部の人々というのは、アフリカ系アメリカ人の命の価値について関心を高める努力は、彼ら自身のためだけにやっていると非難されている人たちだ。こうした非難は、主に白人から出ている。

#AllLivesMatter(すべての命が大切だ)の運動家はどこにいるんだ。彼らはいつザッカリー・ハモンドの問題を取り上げるんだ。みんな明るいところではおかしく見えるんだ。

もし、#BlackLivesMatter(アフリカ系アメリカ人の命が大切だ)への悪意に満ちた反論が#AllLivesMatterなら(それは完全に的外れで浅はかな反論だが)、ハモンドの死について完全に沈黙していると、彼らが何度も繰り返してきた過ちの病巣が明るみになる。それは、アフリカ系アメリカ人が経験してきたことについて腹を割った話し合いを押さえ込もうとする狭量さだ。

もし、こうした人々が本当に#AllLivesMatterを信じているのであれば、彼らはハモンドの死について意見を述べるべきだし、アフリカ系アメリカ人のエリック・ガーナー、タミル・ライス、ナターシャ・マッケンナー、または6月、アイオワ州の警官に殺された白人男性ライアン・ボリンガーといった人たちの不審な死についても声を上げるべきであった。

ハモンドの死に注目している白人の中には、彼のケースを、Black Lives Matter運動の中核となるポリシーに照らして、世に広めることを提案している人もいる。もし警官の不正行為が人種問題だとしたら、アフリカ系アメリカ人の活動家たちが白人の射殺事件をどうやって説明するのだろうかと尋ねるだろう。

運動の提唱者たちは、警官の暴力が人種の不平等を強化するものだと見る一方で、彼らは、多くの白人を傷つけてきた警察についても非難する。

ガーディアン紙により蓄積されたデータを見ると、なぜ警官による殺害が、国家と人種双方の問題であるかが明らかになる。アメリカの警官は、2015年の7カ月間で、他の人種と比べて白人を多く殺害してきた――その数は現在少なくとも335人となる。これらの数を人口で 調整すると、警官は白人の2倍の割合でアフリカ系アメリカ人殺していることが分かる。また、殺人の統計値に限らず、より幅広い研究が存在する。それによると、警官がアフリカ系アメリカ人の容疑者に対してより強制力を働かせ、虐待し、嫌がらせをする傾向にあることを示す。繰り返しになるが、これは白人も頻繁には不当な扱いを受けない、ということを意味するわけではない。

ハモンドの事件があまり報道されなかったことについて、メディアやアフリカ系アメリカ人を非難すべきだという者もいる。メディアとアフリカ系アメリカ人は、警官の不正行為がある種の人種に行われた時だけ報道することに関心があるのではないか、という主張だ。7月19日、アフリカ系アメリカ人男性サミュエル・ドゥボーズがシンシナティ大学の警官に車内で銃撃された事件と類似しているにもかかわらず、ハモンドの事件が全国的に報道されなかったのはどう説明がつくのか。

第一の理由として挙げられるのは、ハモンドの事件では動画が公開されていない、そしてケーブルテレビのニュースはショッキングな暴力の映像を繰り返し流すことしか関心がないといったものだ。

第二に、メディアは警官の発砲事件を真っ先に全国規模の議論へと加速させる原因となる人種的な背景をはっきりと意識している。

報道機関は人種問題を強調した記事を取り扱う。だから「白人の警官がアフリカ系アメリカ人の容疑者を殺した」という記事が頻繁に出てくる。なぜなら、詳細に報道する価値がある、当然の関心事であり、人種間の緊張を生み出すためではない。こうした事件が定期的に何度も起こり続けるのだから、警察への監視が高まる中であっても、人種問題を煽るだけになる。

ハモンドの事件では、人種の話はなにも出てこない。しかし、ハモンドの死の周辺には、第三の理由とも言うべき、より根本的な違いがある。

若い白人少年が殺されたことに対する白人の冷淡な反応は、Twitter上だけではない。それは、住民のほとんどが白人のセニカや、住民の90%が白人のオコニー郡周辺でも、普通に見られる。この地域では、抗議行動やデモが起きていない。

彼らは集会を開いたこともなければ、徹夜で祈りをささげたこともない。少なくとも地元の新聞が取り上げるほど多くの人々が集まったようなものはない。ハモンドの両親が重大な事件と考えているのは別にして、全国規模のメディアは、誰も集まらない地元の話を現地取材しようとはしない。

おそらく私たちは、白人の大多数が警官の暴力に関心がないといってもに驚くことはない。世論調査によると、白人は警官に対してより信頼をおく傾向にあることが、繰り返し明らかになっている。これは、警官の暴力行為が正当だと進んで信じるか、あるいは制度を変えれば解決できると信じていることを示唆している。アフリカ系アメリカ人向けのニュースサイト「Ebony」のシニアエディター、ジャミラ・レミューはTwitterでハモンドの事件が多くの人々の衝突を生み出しかねないと懸念を表明している。

ザッカリー・ハモンドは、銃撃されるのが当たり前ということにはならない。なぜなら、一貫して警察を擁護する連中に、それは間違いだと認めさせることになるからだ。

そして、ハモンドの悲劇的な死は、警察の改革を支持する白人たちを触発させるまで至らないかもしれない。しかし、今、ハモンド事件に目を向けた人々は、Black Lives Matter運動が、人種差別に反対し、全ての命が大切だというより広い信念に基づいていることに改めて気づいている。この信念は、#AllLivesMatterというハッシュタグでは支持されていない考えだ。

ザッカリー・ハモンドの死にスポットライトを当てる人々は、#AllLivesMatterが根本的に、多くの人たちが未だに理解できない運動に対する中身のない反応であったことを改めて明らかにしたのである。

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