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北朝鮮、アートもやっぱりミステリアス(画像)

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「屋外でのダンスパーティー」 Han Guang Hun(MANSUDAE ART STUDIO)

朝鮮民主主義人民共和国は、1948年の9月9日に建国された。指導者となった故・金日成(キム・イルソン)国家主席 は独裁体制を敷き、その後数十年間に渡って西側諸国との交流を絶っている。

私たちは北朝鮮での生活についてあまり知らない。脱北したユン・ミナによれば、仕事は政府から与えられ、最も優秀な人たちだけが裕福になり良いコネを得ることができるという。2008年の推定値によれば、国家で雇用されている人々の約37%は農業に従事し、63%は製造業、鉱業、交通、政府、そしてその他の分野で就業している。ほとんどの女子は中学卒業後に仕事に就き、男子は軍隊に入隊するが、身長の高い女子は、男子と同様に軍隊に入隊させられる、ともユン氏は述べている。誰が肉体労働に割り当てられ、誰が高等教育を受けるべきかは、軍当局によって決められることが多いそうだ。

一握りの幸運な人々は、国家の教育機関で工学、医学、教育学、それに音楽、外国語、演劇、美術などの専門教育を学ぶことができる。

北朝鮮の芸術の中心になっているのは、首都ピョンヤンの北にキャンパスを構えるマンスデ・アートスタジオだ。700人のアーティストと4000人のスタッフが、絵画やポスター、彫刻を制作するこのスタジオは、世界最大の芸術センターと言ってもいいのかもしれない。もちろん国営で、主に国家の指導者や軍隊を称賛する作品を量産しているが、海外のクライアントからの注文も受けている。最近は西側諸国でも、彼らの作品を見ることができるようになった。

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作品名なし。Gong Chong Kwon (KAESONG ARTS COLLECTION)

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「バスに乗る人々」Jong Chol (KAESONG ART COLLECTION)

驚くかもしれないが、マンスデ・アートスタジオにはウェブサイトがあり、自宅のリビングから作品を購入できる。ただし、アメリカに住んでいる場合、注文した作品が届くことはほとんどないので注意してほしい。ウェブサイトを管理しているイタリアのPier Luigi Cecioni社はニュースサイト「Vice News」に、安価で見栄えがするプロパガンダ・ポスターが、売れ筋だという。

ほとんどが社会主義リアリズムをテーマにした作品で、普通の人たちが仕事を通じて喜びや満足を得る様子を描いている。田園風景や伝統的な朝鮮のスタイルを描いたものも多い。

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「Bongsan Mask Dance」Kim Song Hui(KAESONG ART COLLECTION)

2015年1月、韓国で北朝鮮アーティストの作品を取りあげた展示会が開催され、大きく報道された。非武装地帯から南に約10マイル離れたコヤン市で開かれた展示会では、投資家のフランス・ブローセン氏が所有するケソン・コレクションの一部が紹介された。

150の作品は70人のアーティストが1960年から2008年までの間に創作したもので、風景、肖像、動物、季節といったテーマごとに展示された。

ウォールストリート・ジャーナル紙の取材でブローセン氏は、北朝鮮には価値のあるアート作品がありそうだとほのめかしている。

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ロンドンの北朝鮮大使館で開催された展示会(ANADOLU AGENCY VIA GETTY IMAGES)

2014年11月には、ロンドンの北朝鮮大使館でアート・ショーが開催され、数人の選ばれたマンスデのアーティストたちがショーを訪れた。なかには早目に到着して、ロンドンの街路風景を描いたアーティストたちもいた。

BBCの取材で、北朝鮮での創作活動について聞かれた42歳のスン・ホー・ジェは「私たちは、描きたいものを自分で決めます。芸術には完全な自由が与えられているのです」と語った。またテレグラフ紙のインタビューでは、ロンドンは美しい物や美しい人々に溢れていてピョンヤンを思い出す、と述べている。

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北朝鮮大使館での展示会

2013年には、ロンドンギャラリーでも北朝鮮の軍隊と政府を讃える文化フェスティバルをテーマにした写真展が開催されている。写真は、当時ピョンヤンを訪れていたフォトジャーナリストのジェレミー・ハンターが撮影した。フェスティバルの名前「アリラン」は、朝鮮の魂について歌った伝統民謡から名付けられた。このアリランのために大勢の人々がバスに乗ってピョンヤンのメーデー・スタジアムを訪れ、6カ月以上練習を重ねた10万人のシンクロ・ダンスショーを、2時間にわたって観覧した。

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ピョンヤンで開催されたアリランフェスティバル

一方で、北朝鮮での暮らしはクリエイティブな仕事に就いている人たちにとっても楽なものではないようだ。2002年に韓国に亡命した元アーティストのソン・ビェオク氏は、彼の母親と姉妹は1990年代から続いた飢饉で餓死し、父親は中国から違法な補給品を受け取ろうとして川で溺死した、とハリウッド・リポーター誌に語っている。ビェオク氏自身は捕虜収容所に入れられて、殴打され指を切断された。

脱北以来、彼は反体制アートを創作している。中には北朝鮮にいた時に強制的に暗記させられた「自由な人として暮らしますか? それとも奴隷としてくらしますか? 最後まで、革命の赤いバナーを高く掲げましょう」という北朝鮮のプロパガンダをテーマにした作品もある。

「皮肉なことに、奴隷は彼らなのです」と、ビェオク氏はハリウッド・リポーター誌に語っている。

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故・金正日(キム・ジョンイル)国家主席の頭をマリリン・モンローの体につけた作品(ASSOCIATED PRESS)

北朝鮮には才能あるアーティストたちがたくさんいるようだが、彼らには自由があるというのは神話かもしれない。北朝鮮市民が受ける芸術教育は、政府によって厳格にコントロールされている。ブローセン氏が、北朝鮮のアーティストに、筆使いがゴッホを思い出させるといった時に、彼はゴッホが誰か知らないと答えた。ブローセン氏は、彼が知っていたヨーロッパのアーティストは、ピカソだけだったとウォールストリートジャーナル紙に語っている。

いつか北朝鮮のアーティストが、政府の政治思想や検閲を受けずに創作活動をできる日がくるかもしれない。それまでは、私たちは鉄のカーテンの後ろから、北朝鮮のアートシーンを垣間みることになるだろう。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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北朝鮮の建築家が描いた未来予想図
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