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図書館で本を借りると、作家に1冊15円の印税 フィンランドの先進的図書館事情

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フィンランドの図書館で子どもの読書を助けてくれる「読書介助犬」(Sanna Pajusaari撮影)

高いレベルの教育で知られ、優れた文学を生み出してきたフィンランドでは、人々が日常的に読書し、本に触れているという。図書館では「読書介助犬」が子どもたちの読書を助けたり、従来のお堅いイメージから脱却して『市民のリビングルーム』になろうとしたり。図書館で本が借りられれば、作家に1冊15円の印税が入り、作家活動にも平均で一人あたり年間7000ユーロの補助金が出される。

なぜ、フィンランドではこうした先進的な取り組みが行われているのか。駐日フィンランド大使館(東京都港区)で9月23日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催中の東京国際ブックフェアに合わせ、フィンランドの司書や作家らが会見を開いた。

■図書館は「市民のリビングルーム」、ピアノの練習やカラオケも

駐日フィンランド大使館には、フィンランドと日本の学術や教育、文化などの橋渡しを行う機関である「フィンランドセンター」が設置されている。その司書であるタパニ・ハッキネンさんは、フィンランドの読書環境について説明した。

「家庭内で親が子どもに本を読み聞かせたり、学校での読書も盛んです。大人も趣味として本を読むことがよく行われています。年齢を問わず、親しまれている活動で、ブックフェアに行くのも大好きです。どのような本が読まれているかというと、ミステリーや手芸、料理といった実用書が好まれています。児童文学も人気です。本を誰かにプレゼントすることは、良い習慣として考えられています」

フィンランドでは図書館はすべて公立で、大学図書館も一般に公開されており、国民1人あたり年間貸出冊数は20冊近い。これは世界的にもトップレベルで、日本では国民1人あたり年間貸出冊数が約5冊であることと比べても、図書館はとてもよく利用されているといえる。

しかし、日本でも指摘されている若者の読書離れは、そんなフィンランドでもみられるという。そこで、図書館ではさまざまな工夫を始めている。

「その一つが、図書館が『市民のリビングルーム』になろうというものです。従来の図書館は本を借りることはできるけれど、少し堅苦しい場所というイメージがありました。しかし、現在は市民にとって、『もっと行ってみたい』という存在になりたいと試みています。本を借りるだけでなく、座ってコーヒーを一杯、飲むだけでもいいと考えています。図書館によっては防音室があり、ピアノの練習ができたり、雨の日に傘の貸出をしたりしています。本を持ち帰るためのバッグや、スノーシューズの貸出もあります」

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フィンランドセンターの司書、タパネ・ハッキネンさん。

他にも、最近ではカラオケルームを備えた図書館も登場したと報じられた。また、図書館はさまざまなイベントも実施している。

「フィンランドの図書館は、さまざまな年齢の人に来てほしいと考えています。特別な取り組みに、読書介助犬があります。子どもたちが図書館にきて、本を犬に読み聞かせるというものです。犬が相手だったら、恥ずかしがらずに読むことができます」

この読書介助犬はもともとアメリカからフィンランドに導入されたもので、主に12歳未満の子どもを対象に、1回15分〜20分間、実施される。特に読書に対して問題を抱えている子どもに効果があるといい、読書介助犬は子どもが本を読んでいる間は静かに「聞く」訓練を受けている。読書介助犬の「ごほうび」は、読書を終えてから子どもたちと遊ぶことで、現在、50頭を超える犬がフィンランド国内で活躍しているという。

また、フィンランドの図書館は、多様な国民に対してサービスを展開している。

「フィンランドでは、人口の少ない地域に移動図書館で行って本の貸出も積極的に行っています。中には、ボートも一隻、移動図書館として利用されています。また、フィンランドでは障害を持っているなど、図書館に来られない人に対して、図書館から訪ねていく訪問ライブラリーサービスもあります」

こうした図書館サービスを実現しているのが、高度な専門教育を受けた司書たちだ。司書になるには大学院の修士課程を修了しなければならない。司書のアシスタントも大学を卒業している必要がある。

■作家にも手厚い政策 活動に年間7000ユーロの補助

日本では、ベストセラーを図書館が大量に購入して貸出するために、本が売れないと、作家や出版社は指摘してきた。ともすれば、図書館は敵視されることすらある。しかし、フィンランドでは1人あたりの貸出冊数が日本よりも多いにもかかわらず、両者の関係は友好という。その背景には、作家に対する手厚い政策があるようだ。

「図書館で本を借りた場合、その作家には1冊につき15円の印税が国から支払われます。今年の予算は820万ユーロ(約9億3000万円)で、来年はさらに予算が増やされる予定です。また、作家には毎年、その活動に対して年間平均7000ユーロ(約80万円)の補助金が出る制度もあります。その予算はトータルで今年は260万ユーロ(約3億円)でした」

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東京国際ブックフェアで紹介されているフィンランドの作家たちの作品。

東京国際ブックフェアのために来日した作家の1人で、児童書や絵本を中心に作家活動をしている元小学校教師のティモ・パルヴェラさんは、こう語る。

「確かに作家が政府から補助金を受ける制度はありますが、何か創作活動を縛られたり、コントロールされたりすることはまったくありません。フィンランドは狭い国なので、一生懸命、一丸となって後押しするというのが方針なのです。

読書は家庭、学校、図書館のネットワークが機能することが大事ですが、残念ながら家庭でおろそかになりつつあります。しかし、本を読む、読解力をつけるということはとても大事です。木を切るために、チェーンソーのマニュアルを読むのにも、必要なことなのですから」

なぜ、そうまでしてフィンランドは、人々の読書や文学を支えているのだろうか。歴史的にフィンランドは長らくロシアやスウェーデンの統治下にあったが、フィンランド語の文学を発展させることで、自らのアイデンティティとして保ってきた背景がある。現在では、高い教育水準を維持、向上させるため、読み書きする力が重視されている。国やコミュニティが発展する基礎と考えられているのだ。フィンランドの図書館と作家、そして市民と読書の関係は、私たちも参考にできるところは多いだろう。

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フィンランドの読書介助犬は9月25日、東京国際ブックフェアで紹介される。詳しくは、フィンランドセンターのFacebookまで。