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「『生前退位』の表現に驚きと痛み」皇后さま、82歳の誕生日で心境 視覚障害者の転落事故にも心寄せる

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宮中晩さん会を終えてベルギーのフィリップ国王夫妻を見送られる天皇、皇后両陛下=11日、東京・皇居[代表撮影]  撮影日:2016年10月11日 | 時事通信社
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皇后さまは10月20日、82歳の誕生日を迎えられた。この1年間を振り返る記者の質問に対して文書で回答を寄せられ、8月の天皇陛下のビデオメッセージでのお気持ち表明について、「新聞の一面に『生前退位』という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした」と心境を記した。

「最近心にかかること」としては、「視覚障害者の駅での転落事故が引き続き多い事」をあげ、ホーム・ドアの普及が理想と訴えた。

また、熊本地震などの災害についても「誰もが災害に遭遇する可能性を持って生活していると思われます」とし、防災意識を高めることとともに「被災した人々を支え、決して孤独の中に取り残したり置き去りにすることのない社会を作っていかなければならないと感じています」と心を寄せた。

宮内庁が公式サイトなどで10月20日に公開した全文は以下の通り。

この1年も自然災害や五輪・パラリンピックなど様々な出来事がありました。8月には,天皇陛下が「象徴としての務め」についてのお気持ちを表明されました。この1年を振り返って感じられたことをお聞かせください。

昨年の誕生日以降、この1年も熊本の地震を始め各地における大雨、洪水等、自然災害は後を絶たず、これを記している今朝も、早朝のニュースで阿蘇山の噴火が報じられており、被害の規模を心配しています。8月末には、台風10号がこれまでにない進路をとり、東北と北海道を襲いました。この地方を始め、これから降灰の続くであろう阿蘇周辺の人々 ―とりわけ今収穫期を迎えている農家の人々の悲しみを深く察しています。自然の歴史の中には、ある周期で平穏期と活性期が交互に来るといわれますが、今私どもは疑いもなくその活性期に生きており、誰もが災害に遭遇する可能性を持って生活していると思われます。皆みなが防災の意識を共有すると共に、皆してその時々に被災した人々を支え、決して孤独の中に取り残したり置き去りにすることのない社会を作っていかなければならないと感じています。

今年1月にはフィリピンの公式訪問がありました。アキノ大統領の手厚いおもてなしを受け、この機会に先の大戦におけるフィリピン、日本両国の戦没者の慰霊が出来たことを、心から感謝しています。戦時小学生であった私にも、モンテンルパという言葉は強く印象に残るものでしたが、この度の訪問を機に、戦後キリノ大統領が、筆舌に尽くし難い戦時中の自身の経験にもかかわらず、憎しみの連鎖を断ち切るためにと、当時モンテンルパに収容されていた日本人戦犯105名を釈放し、家族のもとに帰した行為に、改めて思いを致しました。

夏にはリオで、ブラジルらしい明るさと楽しさをもってオリンピック、パラリンピックが開催され、大勢の日本選手が、強い心で戦い、スポーツのもつ好ましい面を様々に見せてくれました。競技中の選手を写した写真が折々に新聞の紙面を飾りましたが、健常者、障害者を問わず、優れた運動選手が会心の瞬間に見せる姿の美しさには胸を打つものがあり、そうした写真の幾つもを切り抜いて持っています。

前回の東京オリンピックに続き、小規模ながら織田フィールドで開かれた世界で2回目のパラリンピックの終了後、陛下は、リハビリテーションとしてのスポーツの重要性は勿論のことながら、パラリンピックがより深く社会との接点を持つためには、障害者スポーツが、健常者のスポーツと同様、真にスポーツとして、する人と共に観る人をも引きつけるものとして育ってほしいとの願いを関係者に述べられました。今回のリオパラリンピックは、そうした夢の実現であったように思います。

今年の嬉しいニュースの一つに、日本の研究者により新しい元素が発見され、ニホニウムと名付けられたことがありました。またこの10月には、大隅良典博士がオートファジーの優れたご研究により生理学・医学部門でノーベル賞を受けられました。

50年以上にわたり世界の発展途上国で地道な社会貢献を続けて来た日本の青年海外協力隊が、本年フィリピンでマグサイサイ賞を受けたことも嬉しいことでした。この運動は、今ではシニア海外ボランティア、日系社会青年ボランティア及び日系社会シニアボランティアと更にその活動の幅を広げています。

ごく個人的なことですが、いつか一度川の源流から河口までを歩いてみたいと思っていました。今年の7月、その夢がかない、陛下と御一緒に神奈川県小網代の森で、浦の川のほぼ源流から海までを歩くことが出来ました。流域の植物の変化、昆虫の食草等の説明を受け、大層暑い日でしたが、よい思い出になりました。

最近心にかかることの一つに、視覚障害者の駅での転落事故が引き続き多い事があります。目が不自由なため、過去に駅から転落した人の統計は信じられぬ程多く、今年8月にも残念な事故死が報じられました。ホーム・ドアの設置が各駅に及ぶ事が理想ですが、同時に事故の原因をホーム・ドアの有無のみに帰せず、更に様々な観点から考察し、これ以上悲しい事例の増えぬよう、皆して努力していくことも大切に思われます。

この1年間にも、長年皇室を支えてくれた藤森昭一元宮内庁長官や金澤一郎元皇室医務主管、「名もなく貧しく美しく」をはじめ数々の懐かしい映画を撮られた松山善三氏等、沢山の人々との別れがありました。

国外では、この9日、文化の力でポーランドの民主化に計り知れぬ貢献をされたアンジェイ・ワイダ氏が亡くなりました。長年にわたり、日本のよき友であり、この恵まれた友情の記憶を大切にしたいと思います。

日本のみならず、世界の各地でも自然災害が多く、温暖化の問題も年毎に深刻さを増しています。各地でのテロに加え、内戦の結果発生した多くの難民の集団的移動とその受け入れも、世界が真向かわねばならぬ大きな課題になっています。そのような中で、この夏のリオ五輪では難民による1チームが編成され、注目を集めました。4年後の東京では、この中の一人でも多くが、母国の選手として出場出来ることを願わずにはいられません。世界の少なからぬ地域で対立が続く中、長年にわたり国内の和平に勇気と忍耐をもって取り組んで来られたコロンビアのサントス大統領が、今年のノーベル平和賞を授与された事は感慨深いことでした。

8月に陛下の御放送があり、現在のお気持ちのにじむ内容のお話が伝えられました。私は以前より、皇室の重大な決断が行われる場合、これに関わられるのは皇位の継承に連なる方々であり、その配偶者や親族であってはならないとの思いをずっと持ち続けておりましたので、皇太子や秋篠宮ともよく御相談の上でなされたこの度の陛下の御表明も、謹んでこれを承りました。ただ、新聞の一面に「生前退位」という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした。それまで私は、歴史の書物の中でもこうした表現に接したことが一度もなかったので、一瞬驚きと共に痛みを覚えたのかもしれません。私の感じ過ぎであったかもしれません。

この1年、身内の全員がつつがなく過ごせたことは幸いなことでした。1月には、秋篠宮の長女の眞子が、無事留学生活を終え、本格的に成年皇族としての働きを始めました。真面目に、謙虚に、一つ一つの仕事に当たっており、愛いとおしく思います。

この回答を書き終えた13日夜、タイ国国王陛下の崩御という悲しい報せを受けました。私より六つ七つ程お上で、二十代の若い頃より兄のような優しさで接して下さっており、御病気と伺いながらも、今一度お会いできる機会をと望んでおりました。王妃陛下、王室の皆様方、タイ国民の悲しみに思いを致しております。

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