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「息ができない。助けて」刑務所でリンチ死亡の黒人男性が叫んだ、最後の一言(動画)

2016年11月24日 18時55分 JST | 更新 2016年11月24日 18時55分 JST

【閲覧注意】この動画は、刑務所の看守による暴力シーンが含まれます。

「息ができない」

専業主夫で4人の子供の父親だったマイケル・サビーさん(35)は、バイ・ステート刑務所で5人の看守に体の上から押さえつけられ、こう言った。刑務所はテキサス州とアーカンソー州のちょうど境にある。刑務所は、公的施設ではなく、時給10ドルから雇われている看守たちが働く営利目的の企業が運営している。

「息ができない」。法廷から帰ってきたあと、サビーさんは少し立ち止まった。少し息が乱れているのだが、それに構わず看守が彼を押さえつけて、ふりまわす。いくら訴えても聞き入れてもらえない。

サビーさんは、子供たちのために弁当を用意し、車で学校へ送り迎えし、課外活動のためにあちこちへを連れて行ってあげるような父親だった。逮捕されるわずか数時間前、Facebook上で子供たちのために神に感謝を捧げてもいる。

サビーさんは、床に倒れたときに6人目の看守から催涙スプレーをかけられ、もう一度こう言った。「息ができません。やめてください! お願いですから!」

「息ができません」。サビーさんは強制的にシャワーを浴びさせられた後、もう一度言った。「息ができません」とサビーさんは繰り返した。これは別の黒人男性で父親でもあったエリック・ガーナ―さん(43)の最後の言葉と同じだ。ガーナ―さんは2014年7月、ニューヨークで警官から違法なチョークホールドをかけられ、首を締められて亡くなった。

1人の看守がまた催涙スプレーをかけようとした。「ごめんなさい」。サビーさんは痛みのある薬品を2度もかけられたくなくてこう言った。「ごめんなさい。ごめんなさい」。それからサビーさんは倒れこんだ。時給10ドルから雇われている看守たちは、サビーさんが仮病を使っていると考えた。そして彼を監房に連れて行った。

マイケル・サビーさんは2015年、テキサス州とアーカンソー州の境にあるバイ・ステート刑務所で亡くなった。

「息ができない」。看守たちが手錠を外し、一晩中サビーさんを監房の床に横たわらせていたときも彼はこう言った。その時点で約48時間拘束されていたサビーさんは、朝になって亡くなっているのが確認された。

ハフィントンポストUS版が調査したところ、2015年7月13日に28歳の黒人女性サンドラ・ブランドさんが刑務所で亡くなってから、刑務所での死亡件数は800件以上あり、サビーさんの死も含まれる。しかし、こうした死にあまり疑問は沸かない。当初の報道によると、サビーさんは家庭内暴力で逮捕され、2015年7月22日の朝「反応がない」状態で見つかり、就寝中に亡くなったとされた。サビーさんが肥満で深刻な心筋疾患だったと記した監察医は、サビーさんの死を「自然なもの」、つまり避けられない悲劇だったと考えた。 2000年から2013年までに心臓病で亡くなった受刑者は平均226人。これは自殺に次いで多い死因だ。こうした状況からサビーさんの死は特に変わったものとみなされなかった。

しかしサビーさんの死を「自然死」と見なすことで事実を曖昧にし、防げた可能性の高い死を防げなかったという失敗を隠そうとしている。簡易的な内部調査のせいで、刑務所の職員は悪事を働いても罪に問われなかった可能性がある。

しかしサビーさんの場合、看守の1人が手持ちで撮影した動画がある。この動画はハフィントンポストUS版が最初に公開した。

サビーさんの遺族の弁護士エリック・J・ハイト氏はこう述べた。「死因を見ただけではマイケル(サビー)さんがある種の高血圧性心疾患で亡くなったと思うでしょう。それは本当にそうかもしれません。でも動画がなかったら、サビーさんが息切れや呼吸困難を起こして助けを求めたのを知ることはありませんでした。彼が9分間で19回も『息ができない』と言ったことも分からなかったでしょう」。

■ 「あまりに非人道的な対応だ」

弁護士のエリック・ハイト氏とエドウィン・バッジ氏は、定期的にアメリカ全土の刑務所で亡くなった人の家族の代理人を務めている。バッジ氏は、「この動画は間違いなく最も常軌を逸したケースだ」と述べた。

「明らかに彼は急病人で、治療が必要な状態で助けを求めました。医療的な助けを求めた彼の訴えへの対応としてはあまりに"非人道"的です。普段は軽々しく使わない言葉ですが」と、バッジ氏は語った。

防ぐことのできた死は全米の刑務所で「自然なこと」「よくある現象」「非常に大きな問題」とされている、とアメリカ自由人権協会(ACLU)の全米刑務所プロジェクトのディレクター、デビッド・ファティ氏は語った。

「誰かが死ぬと、『自然死』とみなされることが多いのです。癌だったかもしれないし、心臓病だったかもれません」とファティ氏は述べた。「しかしカルテを調べてみたら、治療を放置したり拒否しているケースもあるのです。誰かがまったく治療を受けずに癌で亡くなったら、それは自然死ですか?」

マイケル・サビーさんと妻のテレサさん。

マイケル・サビーさんと4人の子供たち。

警察の発表によると、2015年7月19日、サビーさんは妻と金銭問題で激しい口論をし、逮捕された。妻は警官に、夫が自分を脅した後、車から降りてその場を去ったと説明した。別の警官がサビ―さんを見つけたが、彼は妻を脅したことを否定した。しかし脅迫の疑いでサビーさんは家庭、家族の1人に対する第3級傷害罪、不品行で逮捕された。

サビーさんはバイ・ステート刑務所に連れて来られた。この施設は10月現在ベッド数が164あり、受刑者134人を収容している。営利目的の企業ラ・サル・コレクションズが、以前運営していた企業が利益を出せずに撤退した2013年から引き継いで運営している。バイ・ステートの拘置所に受刑者を収容するために政府が払う費用は、1日あたりわずか39.5ドル(約4400円)、ボウイ郡の施設には46.5ドル(約5200円)のみだ。近隣にあるこの施設もラ・サル・コレクションズが運営している(この企業は競合入札で受刑者1人につき1日あたり56.25ドル(約6300円)とした以前の契約を破棄した)。ボウイ郡との契約では、ラ・サル・コレクションズが医療費を負担し、受刑者やその家族からのあらゆる請求について郡を補償することになっている。

ABC系列の地元テレビ局KTBSによると、ボウイ郡の施設は近隣の郡と契約を結んでいるため、郡が被収容者を拘束する「費用が安くなり」、刑務所の収益は「ボウイ郡の予算の中で最も大きな部分を占めている」とボウイ郡の保安官が証言している。 求人情報を見ると、ボウイ郡刑務所での仕事は時給10ドル(約1100円)で「看守未経験者」歓迎とある。2016年7月時点で、この刑務所は人手が足りず、数十人の募集をかけていた。

収容人数わずか134人のバイ・ステート刑務所は、アメリカ国内で最も小さな刑務所の1つだ。しかしハフィントンポストUS版が刑務所での死亡について調べると、2015年7月13日〜2016年7月13日の間に2人が死亡していた。近くにあるボウイ郡刑務所にはさらに2人の死者がいた。そこは10月時点でベッド数が748あり、674人の受刑者が収容されている。ラ・サルの施設では収容人数を合わせてもたったの808人だが、1年間だけで合計4人の死者が出た。ハフィントンポストUS版の調査で年間4人の死者が報告されている刑務所は、収容人数がここの2倍か3倍、さらに4倍のところもあった。

■ 「最も安全性の低い刑務所」

バイ・ステート刑務所で亡くなった別の受刑者遺族の代理人マシュー・キャンベル氏は、この施設は今まで入った中で「最も安全性の低い刑務所」だと述べた。キャンベル氏はブリーフケースを持って中に入ったが、何のチェックもなく身分証の提示も求められなかったという。

「大きなガラス窓の後ろにいた男は私に署名も、身分証も求めません。金属探知機もなく、かばんの中身もチェックされず、ブザーを鳴らして弁護士の面会部屋に私を入れました」とキャンベル氏は語った。「コカインと銃を詰めたブリーフケースを持っていても、私がそれを部屋の中に置いてきたとしても、誰も気がつかなかったでしょう」。

7月20日午前3時30分ごろ、逮捕から12時間も経たないうちに、サビーさんは刑務所の職員に呼吸が苦しく、寝ている間息を吸うことができないと訴えた。看護師が低くなった血中酸素濃度の手当てをし、サビーさんに呼吸が苦しくなったら起き上がるようにと言った。

翌21日午前10時30分、サビーさんは独房の床に横たわっているのを発見され医務室に運ばれた。サビーさんはまた呼吸が苦しいと訴え、肺炎にかかったようだと述べた。しかし看護師はサビーさんを部屋から出して監房に戻るように言い、サビーさんを失望させた。警察の発表によると「それじゃあ(あなたたちは)助ける気がないんですか」と彼は尋ねた。彼は独房に戻ったが、途中で床に倒れて助けを求めた。看護師ティファニー・ベナブル氏は朝の面会で肺炎の兆候や症状は感じられなかったと語った。この時、問診票を書いたが、「間違って別のファイルに入れたと思う」と捜査官に話した。

サビーさんはその日の午後出廷し、無罪を求め、保釈金が2500ドル(約26万円)に決まった。廷吏はサビーさんが「ものすごい汗をかき、咳をしている」のを見たと語った。裁判官もサビーさんが息苦しそうにしているのを見て、喘息か気管支炎ではないかと言った。サビーさんは法廷で、吐血したので病院に行かなくてはと述べた。

出廷後、サビーさんと他の受刑者たちは午後4時15分ごろに刑務所に戻された。動画はここから始まり、サビーさんが立ち止まって壁に寄りかかる姿が映っている。

看守のクリント・ブラウン氏がサビ―さんの方に歩いて行った。ブラウンさんによると、サビーさんは記帳デスクにある電話を使いたがっていたが、ブラウン氏は独房に戻れと言ったという。するとサビーさんが攻撃的になって自分に向かってきたため、彼を掴んだと主張した。他の看守たちもすぐに駆けつけた。

ナサニエル・ジョンソン氏は、その日の早朝にサビーさんを医務室に連れて行った。催涙スプレーを顔に直接かけられ、呼吸が苦しそうで「息ができない」とサビーさんが言ったためだ。

その日の早朝にサビーさんを診察した看護師のベナブル氏は朝5時からの勤務で、看守たちがサビーさんに暴力をふるうのを目撃し、医務室で簡単に彼を診察した。ベナブル氏は記載しなかったが、その症状は催涙スプレーをかけられたときによくある反応だと思ったと述べた。

「ベナブル氏は娘をピッチングレッスンに連れて行かなければならないので、定時で仕事を終わらせたいと言っていた」とある警察の報告書に記載されている。「彼女は今朝出勤したとき仕事が終わりそうだと言っていましたが、サビーさんが亡くなったことを知りました」

サビーさん家族の弁護士の1人ハイト氏は、サビーさんは肺水腫、つまり心臓の問題で肺の中に過剰な液体が溜まる病気だと思われると述べた。緊急に治療が必要ではあるが治療可能で、適切な評価と診察がされるべきだったとハイト氏は述べた。州立犯罪捜査研究所の検死局はサビーさんの死因を「高血圧性動脈硬化性心疾患」と判断し、口論が「故人の死に与えた可能性は低く、死因とは思われない」と断定した。

マイケル・サビーさんの写真(遺族提供)。

看守のシモーネ・ナッシュ氏は一晩中サビーさんの監視を任されていた。ナッシュ氏は30分ごとに担当する全ブロックと独房の安全チェックを、また1回のシフトで4回の点呼を義務付けられていた。テクサーカナ警察の報告書によると、記録には30分ごとにチェックされたことになっているが、本人は「すべてをチェックした訳ではなく記入しただけ」と認めた。報告書の中で、ナッシュ氏は決められた通り「30分ごとに毎回監房に入ってチェックをしていた訳ではなかった」と認めた。彼女は点呼のとき、サビーさんはまったく返事をしなかったが、呼吸をしていたのは確認したと主張している。

ラ・サル・コレクションズの従業員は、サビーさんの死から1年近く経った2016年7月18日時点でもまだ適切な対面観察はしていない。これは2016年7月、モーガン・アンガーバウアーさんの死後に刑務所監視団体「TCJS」(Texas Commission on Jail Standards)の調査で分かった。20歳のアンガーバウアーさん(キャンベル氏が家族の代理人を務めている)は糖尿病で、刑務所の看護師ブリタニー・ジョンソンは8月

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