女子高生がアニメ監督に「人生の宝物になった」原発事故から復興する郷土を描く

2016年7月に避難指示が解除された福島県南相馬市小高区の魅力を伝えるため、地元の高校生たちが郷土のPRアニメを制作している。
小高商業高校の遠藤早也乃さん
小高商業高校の遠藤早也乃さん

2016年7月に避難指示が解除された福島県南相馬市小高区の魅力を伝えるため、地元の高校生たちが郷土のPRアニメを制作している。3月12日、東京・池袋にニコニコ本社で予告編の上映と舞台あいさつがあった。監督と声優を務めた小高商業高校2年の遠藤早也乃さん(17)は「人生の宝物といってもいいくらい。体験できて良かったです」と喜んでいた。

■4月の開校に合わせて小高区をPR

福島第一原発事故を受けて小高商業高校と小高工業高校は、避難指示地区に指定された。両校は住民が県内外に避難したことで、生徒数が激減。残った生徒は小高区に隣接する原町区の別々の仮設校舎で授業を受けてきた。

両校が4月に統合されて「小高産業技術高校」として、小高地区で新たなスタートを切る。短編作品の上映を通じ、福島第一原発事故からの復興と学校のアピールしようと、小高商の菅野光先生(30)の呼びかけに応じた両校の生徒9人が、三春町のアニメ会社「福島ガイナックス」と協力してアニメを制作した。それが、「小高区PRアニメ製作プロジェクト」だ。

生徒は脚本や登場キャラクターの原案作り、声優などを務める。原画や動画作りは福島ガイナックスが担った。生徒たちは同社の浅尾芳宣社長の指導を受け、2016年夏から話し合いを重ねてきた。

会場で公開された作成途中のアニメ

アニメは6分前後で、都会から小高産業技術高に転入してきた女子高生が主人公。原発事故で打撃を受けた地域の風景、小高区の伝統行事なども盛り込まれる見通しだ。遠藤さんによると、「主人公は東京から小高に帰ってくる女の子。小高の良いところが分からず、すごく悪く言ってたんですけど、友達のある言葉がきっかけになって、小高を好きになっていく」というストーリーだという。

3月12日現在、アニメ制作は大詰めを迎えていて、19日に小高区の浮舟文化会館でお披露目される。4月以降、新高校の入学式や公式サイトで公開するほか、学校説明会などで上映する予定だ。

菅野先生は「新世紀エヴァンゲリオンを見て育ったので、ガイナックスが福島にスタジオを作ってから、何か一緒にできないかとずっと考えていた。小高区に戻る人は高齢者が多いので、若者が郷土に戻るきっかけになれば」と話していた。

3月19日の完成披露試写会の告知ポスター

■関連スライドショー(南相馬市小高区 震災直後〜2015年)

2011年4月8日 小高駅前周辺には津波の後が残る

南相馬市小高区 震災直後〜2015年(画像集)

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