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「タカタ」はなぜ転落したのか。超優良メーカーが民事再生を申請するまでの軌跡【UPDATE】

2017年06月16日 17時36分 JST | 更新 2017年06月26日 15時14分 JST
Issei Kato / Reuters
Takata Corp. Chief Executive and President Shigehisa Takada bows as he leaves a news conference in Tokyo November 4, 2015. REUTERS/Issei Kato

欠陥エアバッグ問題で経営危機に陥った自動車部品メーカーのタカタが、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、6月26日、受理された。同社の公式サイトなどで発表された。史上最大規模のリコール(回収・無償修理)によって、実質的な負債総額は1兆円を超えるとみられている。

タカタ製エアバッグの異常破裂を巡っては、因果関係が特定できないものも含め世界で17人が死亡。そのうちアメリカで11人が亡くなっており、今後も事故の被害者や遺族などからの訴訟で債務が膨らむ可能性がある。自動車メーカーからは、裁判所の管理の下で明確に負担額を決めておく法的整理を求める声が強まっていた。

日本が誇る超優良企業とされていた「タカタ」は、なぜ転落したのか。

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ミシガン州にあるタカタ社屋のロゴ=2015年5月20日、アメリカ ミシガン

●何が起きたのか

タカタに一体何が起きたのか、簡単に説明すると…

■タカタのエアバッグで2000年〜2008年の間に製造されたものに、破裂につながる不具合があった。

■タカタは不具合があることを認識しながらも数年間に渡り、事実を隠蔽して製造・販売を続けていた。

■アメリカで2014年にNYタイムズなどに大きく報じられ、大規模なリコールへ発展。

■最終的に負債額は1兆円を超える規模に膨らんでいるとみられている。

時系列でタカタをめぐって起きた出来事を紹介する。

●2000年頃~ 不具合のあるエアバッグが製造・出荷されはじめる
 

問題となった、不具合のあるエアバッグは、2000年〜2008年ごろアメリカ国内の工場で作られた。ホンダ、トヨタ自動車など国内外の10社の車に載っていたという。朝日新聞2014年11月7日の朝刊が伝えた。

●2004年 エアバッグの破裂を隠蔽?
 

タカタは、社内で行なったエアバッグの部品の試験で破裂につながる兆候が出た結果を隠蔽していた。タカタは、米アラバマ州でエアバッグが破裂した事例報告があった後、ミシガン州の米国本社で、通常の業務時間外に秘密裏にエアバッグの試験を行なった。試験では事故時にエアバッグを膨らませる「インフレーター」と呼ばれる部分にひびが入り、破裂につながる兆候が見つかった。だが、タカタの幹部はこのデータを消去させ、部品をゴミとして処分させていた。米ニューヨーク・タイムズが2014年11月7日に伝えた産経ニュースなどによると、タカタはこの後の公聴会で、隠蔽の事実を否定した。

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タカタのエアバッグのインフレーター=2015年6月25日、アメリカ、マイアミ

●2014年9月 米NYタイムズが隠蔽を報道
 

米ニューヨーク・タイムズがリコールの原因であったエアバッグの欠陥をホンダとタカタが長く認識していた、と報道。米国で大きな騒動に発展。米ニューヨーク・タイムズが9月12日に速報として伝えた(その後11月に詳報した)。

●2014年10月 集団訴訟へ
 

米高速道路交通安全局(NHTSA)はホンダがエアバッグの不具合に関連した死傷事故の報告を怠っていた可能性があるとして、調査を始めた。 

米国内の消費者らは2015年2月、重要な情報を消費者に隠していたなどとして、タカタ、トヨタ、ホンダなど12社を相手取り、フロリダ州の連邦地裁に対し、損害賠償を求める集団訴訟を起こした。また、事故にあった被害者は公聴会で証言をした。

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エアバッグ事故で右目を失明したステファニー・エルドマンさん=2014年11月20日、アメリカ・ワシントン 

●2014年11月 公聴会に呼ばれる
 

タカタは、この問題について米議会公聴会に呼ばれた。公聴会には、タカタの品質管理を担当する東京本社品質本部の清水博シニア・バイス・プレジデントに加え、ホンダ、クライスラー幹部2人らが出席した。

米国ではこの時までに、タカタのエアバッグに関連したとみられる事故で5人の死亡が判明していた。公聴会では、米議員が5人全員の死亡についてタカタに「全面的な責任」を取るよう迫る場面があった。

これに対し清水氏は5人のうち2人の死亡事故についてはまだ調査中だと述べ、この時点で全責任を負う姿勢までは示さなかった。ただ死亡事故に関連し、エアバッグに異常があったことは認めた。

また、清水氏は被害者らに対する謝罪を述べたが、米メディアが報道した不具合の「隠蔽」については否定したと産経ニュースなどが伝えた。

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米上院公聴会に出席したタカタの清水博シニアバイスプレジデント(左)とホンダの北米幹部=2014年11月20日、アメリカ・ワシントン 

タカタは「原因が特定されていない」ということを盾に対応を後手にしてきたことによって、米国メディアを中心に大きな批判を浴びた。また、公聴会にタカタの代表として出席した清水氏は取締役ですらなく、問題発覚以降、経営トップである高田重久・会長兼最高経営責任者(CEO)とステファン・ストッカー社長兼最高執行責任者(COO)が表舞台に一切姿を見せないことにも、不信感と批判が相次いだ。12月にストッカー氏は自ら社長を辞任した。

●2015年5月 エアバッグの不具合を認める 
 

タカタが、これまでの姿勢を一転し、全面的にエアバッグの欠陥を認めた。米運輸省に対して全米で約3,400万台のリコール(回収・無償修理)を行うと合意。タカタが前面に出て、トヨタ自動車やホンダなど11社の自動車メーカーなどとリコールを進めるとした。米国で史上最大規模のリコールであった。

前年の11月に当局がリコール対象を全米に拡大するよう要求したが、タカタは「原因が特定されていない」などとして支払いを拒否していたため、ホンダなどが自主的にリコールを進めていた。2月にNHTSAが、当局の調査へのタカタの協力が「不十分」だとして罰金を科すと発表し、対立は深まっていた。

タカタの"全面降伏"に対して、米運輸長官は会見で「タカタは今まで欠陥を認めてこなかった。だが、今日それが変わった」と語ったという。

●2015年11月 ホンダが決別宣言
 

ホンダが、タカタ製エアバッグ部品を今後一切使わないと米国で発表。米国での集団訴訟の動きなどを受けて、「タカタと距離を置いていることをアピールする狙いがあったのでは」という見方もあり、「蜜月関係」ともされていたホンダとタカタが決別することになった

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会見した本田技研工業株式会社の岩村哲夫副社長(当時)=2015年11月4日

●2017年1月 隠蔽を認め、和解金10億ドル(約1150億円)支払いで合意
 

米司法省はタカタが和解金10億ドル(約1150億円)を支払うことで同社と合意した。またタカタの元幹部3人が、製品の欠陥を知りながら隠蔽していたという詐欺罪で刑事訴追された。タカタ側は詐欺罪を認めた

裁判所は、罰金と被害者補償基金、自動車メーカー向けの補償金を合計した約10億ドルの支払いを命じた。

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会見での米国の弁護士バーバラ・マクケード=2017年1月17日、アメリカ ミシガン

●2017年4月 経営再建に向けて調整へ
 

タカタの主要債権者である自動車メーカーが、経営再建に向けた最終的な調整に入ったと朝日新聞デジタルなどが伝えた。

世界で1兆円超に上るリコール費用の大半を肩代わりするメーカーは、裁判所の関与のもと、公平に負担額を確定させる法的整理を主張したという。

【UPDATE 2017/6/26】

タカタが正式に民事再生法の適用を東京地裁に申請し、受理されたことを受けて、一部記事を修正しました。