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なぜ、マック赤坂は立候補し続けるのか。「永遠の泡沫候補」の真実に迫る

2017年07月24日 19時54分 JST | 更新 2017年08月20日 23時39分 JST

小池旋風が吹き荒れた7月2日の東京都議選。マック赤坂氏(68)の13度目の挑戦は今回もかないませんでした。

「永遠の泡沫候補」「10度、20度、30度!の人」「今度はどんなギャグを政見放送でやるんだろう」。マック氏に対する印象は大方、こんな感じではないでしょうか。しかし今回、マック氏はこれまでの戦略を10度、20度、30度どころか180度転換し、地道に選挙運動して真面目に当選を狙っていました。これまで知られていなかった様々な謎について、自ら語ってもらいました。

■「極貧は俺にとっての原点だよね」

マック氏最大の謎は「なぜ立候補し続けるのか?」です。2011年の大阪府知事選を密着取材したドキュメンタリー映画『立候補』では、藤岡利充監督の「なぜ立候補するんですか?」という問いを最後まではぐらかし続けます。

■マック赤坂氏「0勝13敗」の内訳
2007/04/22 東京都港区議選(定数34)179票(50位)
2007/07/29 参院選東京選挙区(改選数5)6190票(18位)
2009/08/30 衆院選東京1区 987票(7位)
2010/07/11 参院選東京選挙区(改選数5)7599票(17位)
2011/04/10 東京都知事選 4598票(9位)
2011/11/27 大阪府知事選 21479票(7位)
2012/10/21 新潟県知事選 17884票(3位)
2012/12/16 東京都知事選 38855票(8位)
2013/07/21 参院選東京選挙区(改選数5) 12228票(15位)
2014/02/09 東京都知事選 15070票(7位)
2014/03/23 大阪市長選 18618票(3位)
2016/07/31 東京都知事選 51056票(5位)
2017/07/02 東京都議選世田谷区選挙区(定数8) 9021票(13位)

終戦直後の名古屋市生まれ。父は事業に失敗し、母は美容院勤め。おかずはコロッケが週に1回、3人きょうだいで1個という極貧の家庭に育ち「弁当なんて作ってもらえないから、昼休みは毎日、トイレにこもって泣いていた」。逆境から抜け出そうと猛勉強し、公立高校から京大を経て伊藤忠商事へ。独立して希少金属(レアアース)の輸入で大金持ちに。ここまではよく知られているストーリーです。

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「極貧は俺にとってキーワード。原点だよね」と語るマック氏。

順調な商社マン人生の一方で、大学受験や商社の仕事で挫折感も味わい「モノの売買だけでは虚しい」とも感じていました。伊藤忠商事を辞める前後に、遠戚の女子中学生が抗うつ剤の大量投与で亡くなるという出来事もあり、独立から6年後「アメリカ西海岸流のスマイルでコミュニケーションを円滑に。気持ちをポジティブに」と説く財団を設立するのですが、商売と違ってこちらはさっぱり知名度が高まりません。

「宣伝効果を狙ったのが選挙だったんだ」

しかし長男は「親子の縁を切る」、周囲の親族は「落選したら近所からつまはじきだ。どうしても出るというなら本名を名乗るな」と猛反対します。本名の「戸並誠」と会社の所在地、赤坂に由来する「マック赤坂」は、こうして生まれたのでした。

「(供託金)300万円でテレビに出られる」と臨んだ政見放送。最初の数回は真面目にネクタイを締めて、独自に編み出した「スマイルセラピー」の効用を説きましたが、自身もスマイルセラピーも認知されませんでした。

■「ネクタイ背広では誰も聞かない」

「ネクタイ背広では誰も聞かない。メディアも注目しない。記事にもならない。何かでインパクト与えないと」と試行錯誤する中で立候補した2012年の都知事選、たまたまディスカウントショップで見つけたという9800円のスーパーマンの衣装で「(国政に転身した)石原慎太郎知事に見捨てられた都民を救うために、スーパーマンになって帰ってきた」という設定で政見放送に出演したところ、3万8000票余りを獲得し、ネットでの人気を不動のものにしたのです。

しかし2013年の参院選では一転、平和運動家となります。前年の第2次安倍政権誕生で、憲法改正や集団的自衛権の容認が現実的な政治日程に浮上していました。政見放送ではガンジーに扮して第2次大戦中の特攻隊員の遺書を読み上げ「今度はあなたが書くことになるかもしれない」と、自民党の憲法改正に向けた動きを批判しました。

「平和を守る。ただそれを訴えたくて、政見放送ではスマイルセラピーを封印した。東大に落ちて京大、そして非財閥系商社の伊藤忠と歩んできた私の人生は泡沫路線、反主流。政治もスタンスは野党なんだ。座頭市みたいなもんだよ」

しかし、散々な結果に。

「理解されなかった。『何で坊さんになったんだ』と言われた。得票数はがた落ち、ファンも離れた。でもその失敗が政治家への道を変えたね。世のため人のために大金をはたいて正義感持って動ける奴は自分以外にいない。政治家になりたい(want)から、ならねばならない(must)になったんだ」

選挙直後には引退宣言して「今まで何で選挙に出るの? と聞かれてきましたが、答えが出ました! 平和運動です」と語っていたマック氏ですが、翌2014年2月の都知事選には引退を撤回して再び「スマイルセラピー伝道師」の道に入ります。

そして2016年6月、前知事の舛添要一氏が「政治と金」の問題を問われて辞任。翌月の知事選の政見放送で、マック氏は「議員天国、役人天国」を正面から批判し、スマイルセラピーを封印したにも関わらず過去最高の5万票余りを獲得します。

マック氏は落選後も都議会傍聴を続けました。2017年3月20日には、豊洲への市場移転を検証する都議会の特別委員会の傍聴席から立ち上がり「我々は主人公であり、君たちはサーバントだ」と叫んで退場を命じられたことも。

「落選した人間が傍聴に行って彼ら(都議)にプレッシャーを与えるぐらいにならないと都政は変わらない。127人で1人あたり2500万、合計32億の税金を使っている。しかも権力の座に座って自分が主人公だ、権力者だと思っている。舛添氏の公私混同はごく一部がばれただけで、後になって石原氏も何倍ものお金で海外豪遊していたことが分かった。しかも我々の血税だよ。俺は都民税を何億と払っているから、これは許さん。そもそも議員が多すぎる。議員改革して、そこから財源を取り出して福祉に向ける。『お子様手当3万円』の財源、いっぱい出るよ」

■「ネクタイだけでやってたら無名で終わってたかも」

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対話集会でマック氏は、集まった若者らと政治を目指す動機やこれまでの人生を語りました。「68歳で当選して、4年務められますか?」「まったく問題ない。下半身は10度、20度、90度だよ!」といったやりとりも。

「ネットの人気だけでは、永遠に当選できない」。今回の都議選では、これまでの空中戦から地上戦に舵(かじ)を切り、当選を狙っていきました。

都議選なので政見放送はありません。縁もゆかりもない世田谷区から立候補したのは「定数が多い、現職が立候補しない、知事選で得票率が高かった」から。600万円を投じて新聞に折り込みチラシを入れ、個人演説会を5回開きました。ボランティアが自主的に集まってチラシを投函したり、ミニ集会を企画したり。いずれも選挙では定石ですが、マック氏には初めての経験でした。

結果、9021票で18人中13位。世田谷区の無所属候補の中では最多得票でした。供託金没収を免れたのも、最初に出た港区議選以来でした。

「政見放送があったら、コスプレの誘惑に負けていたと思う。コスプレを封印せざるを得なかったのは、プラスになったんと違うかな。ただ、今回は無所属の限界を感じたね。政党の公認候補を1人も抜けなかった。今後、仮に出ることがあったら、やはりどこかの組織なり政党の支援がいるよね」

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6月8日、都庁で記者会見し「スマイル!」のポーズを取るマック赤坂氏。

——コスプレで知名度を高めたが故に、真面目さを疑われますよね。

「信頼感がなくなった。だから政党の推薦が来ない。だけど分からないよ、人生なんて。ネクタイだけで最初からやってたら、結局は無名で終わっていたかも分からん」

——コスプレの誘惑ということですが、サービス精神なのか、受けないと不安なのか。話していると真面目さは伝わるのですが...。

「自分の中では完全に融合していますよ。一つはエンターテイメント性を政治に持ち込まないと意味がない。真面目に眉間にしわを寄せてやったって民衆は着いてこない。もう一つ、ユーモアを与えたいというのは、世のため人のための一部。ピエロなんだよ。『こんなコスプレでおかしなおじいちゃんがいるよ』と、スマイルだけじゃなくて勇気と自信を与えるんだ」

■「やってみないとわからない。未だにわかっていないけど」

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「選挙打ち上げ」で「支持者」に頭を下げるマック赤坂氏

2017年7月8日。東京・赤坂のファミレスで、マック氏恒例の「選挙打ち上げ」がありました。各地から集まった約40人のファンを前に、マック氏は力不足をわびた後「次につながる貴重な財産を見せていただいた。メンタル的には当選です」と、支援に感謝の意を示しました。そこで、

「今回、来て下さった皆さんは、強制的にスマイル党に入党していただきます。さらに、強制は致しませんが、党員と後援会員をご紹介ください」。

次の選挙に向けて、王道の後援会作りに乗り出したようです。

「『逆だろ』って言われても、いいじゃない。それが俺のやり方だよ。やってみないとわからないわけだよ。未だにわかっていないけどね。ただ、スマイルセラピーで始めたけど、今は世のため人のため。やりながらおぼろげがら筋道ができてきた。これはまさしく陽明学の行動主義だ。今回も、迷ったけど立候補してよかった」

■「出ないと私のファンが許さないよな」

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「『最初から本名とネクタイでずっとやっていればよかった』という人もいるよ。だけどそうしたらここまで有名にはなっていなかった。大切なのは、次どうするかだ」と語るマック赤坂氏

——ところで今回の「都民ファーストの会」圧勝をどう見ましたか。

「都議会のブラックボックス体質が小池知事によって、逆に温存された。箱の色がブラックからグリーンになっただけで、中身は全然変わっていない。むしろ議員の資質は経験と能力、人格からいって自民党議員の10分の1だと思っているから、変わらないどころか退化していく。2年持たないと思うね」

——選挙戦では小池知事が都民ファや公明党の応援演説に立ったことを「公職選挙法違反だ」と批判していました。根強い不信感をお持ちのようですが、知事の選挙応援は過去にも前例はありますが...。

「知事が地方公務員法の特別職だから、政治的中立義務の例外だということは知っている。ただ、前回の都知事選でも21人立候補して、テレビ出演は軒並み主要候補3人だけ。自分が主要候補に選ばれたら『他の泡沫を壇上に上げなさい』と言うよ。そういう見識のある人格者が知事になるべきだよ。泡沫とか弱者に耳を傾けられないような人間がやるべきじゃない」

「思った通り、都議会の二元政治を自らぶち壊した。都民ファーストじゃなくてどんどんファシストになっているよ。都知事選もまた2年以内にあるんじゃないの? 希望的観測もあるんだけど、国政に行ってくれないかな」

——そうしたらまた出ますか?

「やっぱり出ないと私のファンが許さないよな(笑)」

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もう一つ、興味のある選挙は別荘のある静岡県熱海市長選だとか。

次の選挙については明言しなかったものの、2018年4月には京都府知事が任期満了を迎えます。打ち上げでは、

「京都の芸者遊びのハードルの高いこと。あの『一見さんお断り』の雰囲気を、京都府知事選でぶっ壊したいんだよ」

と宣言。早くもやる気満々のようです。