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東名事故で夫婦死亡、なぜ「危険運転致死傷」容疑ではないのか? 疑問の声も

一家の車の進路をふさいで停車させ、追突事故を引き起こしたなどの疑いなのに…

2017年10月11日 12時56分 JST | 更新 2017年10月11日 14時17分 JST
時事通信社
東名高速道路で夫婦が交通事故死した事件で逮捕され、神奈川県警本部に入る石橋和歩容疑者(中央)=10日夜、横浜市中区 

神奈川県大井町の東名高速で6月、ワゴン車が大型トラックに追突され、夫婦が死亡した。

この事故は、別の車がワゴン車の進路をふさいで停車させ、追突を起こした。

夜間の高速で無理やり停車させるのは、悪質で危険極まりない行為。

ところが、逮捕された男の容疑が、自動車運転処罰法違反の「危険運転致死傷」ではなく「過失運転致死傷」だったことから、Twitter上などで疑問の声があがっている。

「過失運転」は注意不足、「危険運転」は危険な行為による事故に対して、それぞれ適用される。

■駐車を注意され逆上、追跡して妨害

時事ドットコムによると、事故は6月5日午後9時35分ごろ、下り線で発生。静岡市清水区の自営業の夫妻が死亡、15歳と11歳の娘2人がけがをした。

手前のパーキングエリアで、枠外に駐車した建設作業員の石橋和歩容疑者に夫が注意しトラブルとなった。

逆上した石橋容疑者が追跡し、一家のワゴン車を追い抜いた後、前に割り込んで減速。追い越し車線上で停止させた。事故はその直後に起きた。

神奈川県警は10月10日、車を運転していた石橋容疑者(25)を逮捕。石橋容疑者は、一家の車の進路をふさいで停車させ、追突事故を引き起こしたなどの疑いが持たれている。

■警察の対応に疑問、危険運転致死傷を求める声も

一連の報道を受けて、Twitter上では県警の対応に疑問の声があがっている。

「こういうのこそ、危険運転致死傷容疑にしてほしい」「これを危険と言わずに、何を危険というの?」などと、より罰則の重い容疑の適用を求める声が相次いだ。

車の事故で、直接衝突していない車の運転手を逮捕するのは異例というが、石橋容疑者の行為は、「危険な運転」には当たらないのか。

■危険運転致死傷とは?

危険運転致死傷とは、自動車運転処罰法が定める罪の一つ。自動車事故を起こし、人を死傷させた際、特に次のような「危険な行為」があった場合に適用される。

①アルコールや薬物の影響で正常な運転が難しい状態

②制御できないほどのスピードの出し過ぎ

③無免許など運転技術が極めて未熟

④人や車の妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入したり、著しく接近したりする。かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する

⑤赤信号を無視して、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する

⑥通行が禁止されている道路を進行し、重大な交通の危険を生じさせる速度で運転する

一方、今回適用された過失運転致死傷の要件は、同法で「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させる」と定められている。

警察は、事故のさまざまな要素や状況を基に容疑を適用するため、一概には言えないが、今回のケースは④の「人や車の妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入したり、著しく接近したりする」に該当するようにもみえる。

朝日新聞デジタルによると、神奈川県警は今回の事故で、より罰則の重い危険運転致死傷容疑の適用も検討したが、石橋容疑者の妨害行為が事故に直結したわけでないと判断したという。

危険運転致死傷と自動車運転過失致死傷では、罰則に大きな違いがある。

危険運転致死傷:人にけがをさせたら15年以下の懲役、死亡させたら1年以上の懲役が課せられる。

自動車運転過失致死傷:7年以下の懲役や禁錮、または100万円以下の罰金が課せられる。けがが軽い場合は、情状により刑が免除されることもある。

■危険運転致死傷罪、きっかけは1999年の東名飲酒事故

危険運転致死傷罪が成立したのは2001年。2001年12月2日付の朝日新聞の朝刊などによると、東名高速で1999年11月、飲酒運転していたトラックに追突され、幼い姉妹が死亡した事故がその背景にあった。

トラックの運転手は、業務上過失致死罪などで懲役4年の判決が言い渡されたが、飲酒運転という悪質な事故に対して「刑が軽すぎる」との声が広がった。被害者の遺族が集めた37万4000人分の署名が原動力となり、危険運転致死傷罪が新設されるきっかけとなった。

当時、業務上過失致死傷罪の法定刑(懲役5年以下)から「1年以上の有期懲役」(最高15年)に変わった。

その後、2007年の刑法改正で自動車運転過失致死罪が新設。2013年には現行の自動車運転処罰法が成立し、危険運転致死傷罪の適用対象が拡大されるなど、交通犯罪への厳罰化が進んでいる。