年末年始はマンガを読んでみない? 人生を豊かにしてくれる“良作”との出会いかた

「ちひろさん」「左ききのエレン」 などなど...オススメマンガを紹介します。
Aya Ikuta / HuffPost Japan

おもしろいマンガとの出会いは、人生を豊かにしてくれる。

でも、星の数ほど生み出されるマンガの中から、どうやっておもしろい作品を探せばいいの?

そんな疑問を出発点にしたイベントが、12月7日にブルーボトルコーヒー中目黒カフェで開催されました。

話し手は、マンガのセレクトショップ「マンガトリガー」編集長、小禄卓也さん(@coroMonta)。ハフポスト日本版ニュースエディターの吉川慧が聞き手になり、「マンガの読み解き方」「最近のおもしろいマンガ」について話してくれました。

小禄さんが「マンガ愛」を込めて、コーヒーを片手に語ってくれたお話を紹介します。

ハフポスト日本版ニュースエディターの吉川慧(左)、「マンガトリガー」編集長、小緑卓也さん(右)
ハフポスト日本版ニュースエディターの吉川慧(左)、「マンガトリガー」編集長、小緑卓也さん(右)
AYA IKUTA/HUFFPOST JAPAN

「僕はジャケ買いと言っているんですけど、基本的には、一目見たときにインスピレーションを感じたものを手に取ればいいと思うんです。だって、500円でチャレンジできるんですよ。それなら失敗しても、そこまで痛くない。そして、ジャケ買いするなら書店に行くのをお勧めしています。表紙の質感にも触れられますし、視覚だけでなく触覚も使えば『探す』という行為も楽しくなりますね」

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書店員さんのレコメンドを聞いてみるのもいいですね。最近は、書店のポップアップもすごく凝ってて。それを見てこれ読んでみようかなと思うこともあるかもしれません」

基本的にはセレンディピティなんですよ。本当に偶然の出会いで見つけたものの方が、記憶に残るんです。自分の足で書店に出かけてみてほしいですね」

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「『弟の夫』というマンガがあります。来年ドラマ化もされるのですが、すごくストレートにゲイや同性婚の現実を描いている」

「日常で接する機会の少ない世界を、マンガを通して知れるのはいいですね。理解を深めたり、そこから興味を持ったり」

「あとは、『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』。これ名前だけ聞くとビックリするかもしれないんですが、うつの女性がレズ風俗に行って感じた感覚や感情を、すごく繊細に描いている。全然エロいわけでもなく、とにかく心に刺さるんですよ。だからSNSで共感の輪を呼びました」

繊細な環境、繊細な感情。こういう苦しい想いを、マンガに落とし込んで吐露するという作品が、増えてきている

小禄さんは、実際にマンガを持参して参加者に紹介。パラパラとめくってみて、「すぐにでも読んでみたくなった」と話す参加者も多くいました。

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「書く人も読む人も多様化してきています。今のマンガのトレンドとしては、個人的な趣味・嗜好を強く反映しているものが多い印象です。すごくニッチなやつ。一人称視点のマンガが増えているんですよ」

『木根さんの1人でキネマ』は、アラサーの女性が一人で映画を観てブログを更新する、という日常を描いたものです。マス的価値観がまかり通ってきた時代から、インターネットによってライフスタイルの多様化が可視化されるようになり、自分の楽しみと言えるものや共感のポイントがどんどん細分化し、個人的なものになってきているんです

「SNSの発展も手伝って、共通言語がなくなってきている今、マンガも面白い広がり方をしていますね」

「国民的なマンガ、努力!友情!勝利!みたいなジャンプの王道的なマンガも良いけど、もっとニッチなマンガたちにも注目してみてほしいですね」

「10年前にLGBTQなどの性的マイノリティの人を題材にしたマンガは、あったとしてもコミュニティ限定でしたよね」

「ダイバーシティが広がるにつれて、マンガの世界でもLGBTQなどの性的マイノリティの方々の目線を描く作品なども増えました。個人の趣味や嗜好を、一人称で巧みに描く世界も広がりつつあります」

社会が多様化していくにつれて、マンガでも、『マス』から『個』への流れが加速しつつあるようです

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「マンガのキャラクターを一人の人格として捉えてみると、台詞回しに作者さんの意図が見えてくるようになるんですよ。そういう作品に出会えると嬉しいですね」

「あと、これは僕の持論なのですが、そうした人格が見えるキャラとの出会いは、実社会にもいい影響を及ぼしてくれると思っています。例えば、第一印象が最悪だった人がいたとしても、『ベジータだって最初はイラつくヤツだったけど、実はいいヤツだったしな』みたいに、人に対して無駄に寛容になれます(笑)。そういう意味では、マンガは僕にとっての手のひらサイズの社交場なのかもしれません

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「「マンガっていうメディアの力は大きいと思います。難しいことも、マンガから入るとわかりやすい。マンガにすることの訴求率の高さが伺えます。マンガはビジネス書にもなるんです。原作をコミカライズしてみると、驚くほど学べることが多い」

小禄さんが、特にオススメと紹介してくれたのは、以下の3作品。

1. 『ちひろさん』安田弘之

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元風俗嬢という経歴を隠さず、明るく強く生きる「ちひろさん」の話。「誰だって、『誰にも言えない』悩みみたいなものもあるわけで。自然にすくい上げて、ろ過してくれるのがちひろさんなんですよ。仕事で疲れた時や悩んでいる時に、すっと背中を擦ってくれるような存在です」(小禄さん)

2. 『左ききのエレン』 かっぴー

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広告代理店に勤めるサラリーマンが主人公。「『天才になれなかった全ての人へ』とあるように、何者かになりたかったけど何者にもなれなかった凡人サラリーマン人のあがきを描いている作品です。自分を鼓舞したい時に、すごく刺さります」(小禄さん)

3. 『BLUE GIANT(ブルージャイアント)』石塚 真一

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「世界一のジャズプレーヤーになる」ため、サックスを吹き続ける宮本大の話。まるで音が聞こえてきそうなほど、演奏シーンに迫力がある。「『左ききのエレン』が凡人を描くなら、『BLUE GIANT』は天才を描いたマンガです。その天才性に周囲は無情にもふるいにかけられるのですが、自分の目標を実現させようとする強靭な意志と行動に勇気を与えてもらえます」(小禄さん)

その他にも、レズビアンの女性向けの風俗に通う体験談をつづった『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポや数学の"天才少年"を描いた『はじめアルゴリズム』、『ロッタレイン』、『マイホームヒーロー』、『BEASTARS』、『「坊っちゃん」の時代』『鼻紙写楽などなど...。

たくさんのイチ押しマンガを紹介してくれました。

最近のマンガのトレンドや、読み解き方を解説した2人ですが、マンガがマイノリティを支えたり、突き上げたりする動きが出てきていることが分かりました。そういったマンガに触れることで、「今の世界を作っている前提とか常識を、一度疑ってみる」ことの必要性が見えてきます。

年末は、ゆっくりマンガを読んで過ごしてみてもいいかも...。

AYA IKUTA/HUFFPOST JAPAN

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