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「おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本」で本当に子どもは眠るのか? 世界的ベストセラーを読み聞かせてみた

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冒頭から私事で恐縮だが、4歳の女の子を育てている。ワーキングマザーのご多分に漏れず、育児に追われる日々を送っているわけだが、最近はある悩みを抱えていた。彼女をお布団に入れて寝かしつけをしようとしても、なかなか夢の国へ旅立ってくれないのだ。

彼女は寝る前に絵本を読んでもらうのが大好きなので、必ず1、2冊は読み聞かせをしている。怪獣や妖怪、おばけが出てくる絵本が特にお気に入りで、読んで読んでとせがまれるままに張り切り、「がおー!」「お前を食べちゃうぞ〜」などと大騒ぎして、彼女はケラケラと笑っている。

そして、ますます夢の国は遠ざかる。夢の国がだめならば......と、「こんな時間まで起きてる子は、おばけにされて、おばけの国に連れて行かれるよ」と脅してみても、「ほいくえんのおともだちとやっつけるから、だいじょうぶだよ」と根拠のない自信をみせる。一体、誰に似たのだろうか。親の顔が見たい。

寝つけない彼女は、やがて「ママもいっしょにねて!」とぐずりだし、私を布団へと引きずり込む。そこまですれば、さすがに彼女も眠ってくれるのだが、問題は私も一緒に寝落ちしてしまい、自宅へ持ち帰った仕事ができずに朝を迎えてしまうことだ。これには本当に困った。

■スウェーデンの行動科学者が自費出版した本が世界的ベストセラーに

そんなある日、保育園のママ友がFacebookで、「本当に寝ました!」と投稿していた。一緒にアップされていたのが、この絵本の写真だった。「読むだけで子どもがすぐに寝る」という触れ込みの「おやすみ、ロジャー 魔法のぐっすり絵本」(飛鳥新社)。ワラをもつかむ気持ちとはこのこと。脊髄反射でネット書店に注文してしまった。

あれこれ調べてみると、この絵本は世界的に売れているらしかった。世界中の親が、寝かしつけに悩んでいるに違いない。見たこともない海外の親たちに、勝手ながらシンパシーを抱く。実際、子どもが寝たというママたちを何人もTwitterで見かけた。本当だろうか? 本当だとしたら、何かこれまでの絵本と違うのだろうか?

特設サイトを見れば、発売元である飛鳥新社が週末、「『おやすみ、ロジャー』に学ぶ寝かしつけ講座」なるイベントを開くという。これは、取材しない手はない。子連れOKとのことだったので、子どもと出かけてみることにした。

そもそも、「おやすみ、ロジャー」はどのような絵本なのだろうか。

担当編集者である飛鳥新社出版部第二編集・副編集長、矢島和郎さんによると、この絵本は、もともとスウェーデンの行動科学者であるカール=ヨハン・エリーンさんが2010年に自費出版したもの。2014年に英訳されると、口コミで話題となった。ハフポスト米国版など大手メディアが取り上げたことで人気が出て、イギリス、アメリカ、フランス、スペインでAmazon総合1位を獲得。アメリカでは初版30万部、イギリスでも初版19万部で出版されるなど世界的なベストセラーになっており、今後、40カ国で翻訳が決まっているという。

矢島さんは英訳版を入手、実際に自分のお子さんに読み聞かせをしたところ、ぐっすり寝たことから、日本で出版する権利を得ようと決断した。「国内で売れるかどうか、半信半疑でした」という矢島さんの心配とは裏腹に、11月13日に発売して1カ月経たないうちに6刷25万部という異例のヒットとなっている。グローバルな悩みなわけだから、当然、日本でも同じ悩みを持つ親たちがどれだけ多いか、想像に難くない。

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世界的なベストセラー「おやすみ、ロジャー」。

■眠るためのメソッドが物語に組み込まれ、体験できる

「おやすみ、ロジャー」が書かれたきっかけは、著者であるカール=ヨハン・エリーンさんが自分の母親とドライブをしている時に語りかけていたら、母親がぐっすり眠ったという体験だった。それから3年をかけて構想を練り上げ、「すべての家庭の助けになるように」と自費出版したのだという。

物語は決して、複雑ではない。なかなか眠れないうさぎの子、ロジャーがお母さんうさぎのアドバイスにしたがって、必ず眠らせてくれるという「あくびおじさん」に会いに行くというストーリー。途中で、カタツムリやフクロウなどさまざまなキャラクターが登場し、どうやったら眠れるかを助言してくれる。

最初に読んだ印象としては、繰り返しのフレーズが多いと感じた。絵本の読み方の手引には、「ゆっくり静かな声で読む」と指示されている場所や、実際に「あくびをする」と指示されている場所もあり、それだけでも普通の絵本とは読み聞かせる方法が違っているようだった。

さて、イベントは12月5日、東京・渋谷で大勢の親子連れが参加して開催された。講師は、「おやすみ、ロジャー」を監訳した快眠セラピスト、三橋美穂さん。三橋さんは、寝具メーカーの研究開発部長を経て独立、不眠に悩む人などの睡眠に関するカウンセリングを行ってきた。

イベントでは三橋さんが実際に絵本を朗読。「パパ、ママが落ち着いて読むこと。早く寝かせようとすると、子どもにそれが伝わるので、自分が眠ってもいいぐらいに物語の世界に入っていくこと」など、読み聞かせの「コツ」を教えてくれた。

三橋さんによると、「おやすみ、ロジャー」のすごいところは、「ひとつひとつの眠るためのメソッドは知っていましたが、それらを物語の中に組み込んでいること」なのだという。たとえば、お母さんうさぎがロジャーにこうアドバイスするシーンがある。

考えごとをぜーんぶ、頭の中から取りだして、おふとんの横にある箱に入れちゃうのはどう?

つい考えごとをして眠れなくなる大人にも効きそうなセリフだ。他にも、「足首の力を抜いて」と言われる場面がある。「リラックスしている時、手足が重く、暖かく、呼吸がゆっくりしていますが、リラックスするための自律訓練法という、医療の現場でも使われてるメソッドが入っているのです」

また、三橋さんはこうも語る。「絵本の最後に、『きみはあした、もっと早く眠りに落ちるよ』と書かれています。この絵本は、どうやったら眠れるか体感させてくれる。私たちは誰にも眠り方を習ったことはありませんが、睡眠の習慣を身につけることができるのです」

■大人にも子どもにも効果のある「眠りの薬」とは?

なんとか子どもが寝た後に、仕事をする時間を捻出したいという下心から「おやすみ、ロジャー」に興味を抱いた私だが、日本の子どもの睡眠時間が少ないという記事を読んだことがある。成長期の子どもにとってどれだけ睡眠が大切なのか、三橋さんにあらためて訊ねてみた。

「睡眠の周期には、レム睡眠とノンレム睡眠という2種類がありますが、レム睡眠は大人にとっては記憶を整理する眠りで、子どもにとっては脳を育てる眠り。眠り始めは深いノンレム睡眠が多く、その時に分泌されたホルモンが体を作ります。ですから十分に睡眠を取ることは、子どもの脳と体の発達のためにとても大事です」

イベントで三橋さんは、子どもにも大人にも効く「眠りの薬」を教えてくれた。

  • 暗くなったら眠る。
  • 疲れたら眠る。
  • お風呂などに入って、深部体温が下がると眠る。
  • リラックスしている。

これら4つが重なるようにすれば、よく眠れるようになると三橋さん。そして、「おやすみ、ロジャー」は、4つ目の「眠りの薬」として効果があるという。

私自身、眠る直前までスマホを見てしまうが、これも望ましくないとのことだ。

「スマホやPCのブルーライトは睡眠を抑制するので、寝る1時間前には切りましょう。それから、お酒も睡眠にとって良いことは一つもありません。寝付きが良くても、眠りが浅くて、アルコールの分解された後は、交感神経が刺激されて目が冴えてしまいます。眠るためにお酒を飲むのはやめたほうがいいですね」

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「おやすみ、ロジャー」を監訳した快眠セラピスト、三橋美穂さん。

■果たして我が子は「おやすみ、ロジャー」で「おやすみ」できるのか?

イベントから帰宅して、さっそく寝る前に子どもに「おやすみ、ロジャー」の読み聞かせを試してみようと、話しかけた。

「今日は、眠くなる絵本を読んでみようか?」

「やなの! ねむくなりたくないの!」

おかしい。「おやすみ、ロジャー」の帯には、「たった10分で、寝かしつけ!」とあるのに、読み聞かせをスタートする前のやりとりで、すでに10分は経過している。それでもなんとか、彼女を説得して、読み始めたところ......

およそ半分のところで、「もう、やめて!」と言い出した。「失敗か?」と焦ったが、絵本を閉じると、彼女はそのまま掛け布団をかぶって寝入ってしまったのだ。

これはもしかして成功? いや、昼間に外で遊んだから、単純に体が疲れていただけかも?

疑い深い私は、その後も何回か試してみるが、やはり途中で彼女は絵本を止めて、寝入ってしまう。これまでの寝かしつけより、時間は確実に短縮されているのだから、一応、成功したと言ってもよいだろう。なるほど、これは世界中の寝かしつけに悩む親たちが、「おやすみ、ロジャー」を買うわけだ。世界的ベストセラーの理由が分かった気がした。

しかし、ここで新たな問題が発生する。物語がいつも中断されてしまうのだ。結局、私たち親子は、すぐに眠らせてくれるという「あくびおじさん」に会うことなく、夢の国へと旅立っている。まあ、著者の方には申し訳ないけれども、彼女が十分な睡眠をとることができるのであれば、このまま「あくびおじさん」に会えなくてもかまわないとは思っている。

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