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サイボウズ式:認められたい願望が強い会社員ほど参加すべき? 山崎亮「社会人からのコミュニティ入門」

2015年04月02日 22時36分 JST | 更新 2015年06月01日 18時12分 JST

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働き過ぎを減らし、プライベートを充実させたい──。 そう思う人がワークライフバランスを実践する中で難しいのが、プライベートの時間の有効活用です。それを埋める可能性の1つが「コミュニティ」の存在です。

「コミュニティは忙しく働く人ほど、自己研鑽の場になる」と話すのはstudio-Lの山崎亮さん。コミュニティデザインの第一線に立ち、日本各地で地域問題の解決に奔走する山崎さんに、日々忙しく働く人が生活の質を高めるヒントを話してもらいます。

「楽しさの増幅」と「寂しさの解消」がコミュニティの意義

小沼:コミュニティ活動ってとても幅広い言葉ですよね。

山崎:コミュニティという言葉について、みんながイメージする内容がかなり違っているんですよね。会社もサークル活動もコミュニティって言ったりしますし、「mixiのコミュニティが」とか「Facebookのコミュニティで」と話す人もいます。

自分が住んでいる場所の地域共同体のことを指さねばならないと思っている人も多いはずですが、コミュニティの定義って言ったら160種類出てきたという社会学者の研究もあります。要するに、定義が広がり、いろんな意味で使われてきているのが今ですね。

小沼:コミュニティを明確に定義するのは難しいですね。

山崎:コミュニティ活動は、自治会や町内会の活動だけではないことを意味し始めています。本当の意味で言うと、実はアソシエーション活動って呼んだ方がいいのかもしれないです。

小沼:コミュニティは働く人にとって必要なものですか?

山崎:そう思います。なぜかというと、やっぱり寂しいからでしょうね。人間関係が希薄になっていると、「楽しいことが増幅しない」のと「寂しいことが解消されない」という2つのデメリットがあります。

おいしいものを食べた時に「うんまっ!」と一人で言うか、誰かと「うまいよね、これ」とわかちあうのとでは、大分違いますよね。例えば、SNSでお昼ご飯の写真を投稿している会社員の人がよくいるじゃないですか。「おいしいです(笑)」って文を書いていても、顔は全然笑ってないんですよね。そうじゃなくて「うまいな」みたいな話を実際に共有することで、おいしさが倍増すると思うんですよ。

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山崎亮さん。studio-L代表、東北芸術工科大学教授(コミュニティデザイン学科長)、慶應義塾大学特別招聘教授。主な著書に『コミュニティデザイン(学芸出版社)』『ソーシャルデザイン・アトラス(鹿島出版会)』『コミュニティデザインの時代(中公新書)』『まちの幸福論(NHK出版)』などがある

山崎:アメリカの研究で「寿命は作り笑いをすることで2年延びる」というものがあるらしいんです。作り笑いでもそうだったら、本当に笑う機会があればもっと寿命は延びるはずなんですよ。

我々の健康にとって、これは重要なことです。実際に誰かと会って、会話をすると、寿命が少し延びていくし、「おいしい!」と感じることも多くなる。こういったメリットを感じられるのがコミュニティという場所だったりします。

小沼:人とつながるコミュニティが、健康面でも大事だとは思いもしませんでした。

山崎:「孤独は喫煙よりも体に悪い」とも言われているんです。だから、禁煙をするよりも誰かとつながった方が健康に良いんですよね。つながることが生活の健康・保健面でも大事だし、「楽しい」ものを倍増させるためにも大事です。SNSでも会話はできますが、そこに表情が出てこないので、あんまり自分の体にプラスに働かないんですよね。

承認欲求が高い会社員ほどコミュニティに参加すべき?

小沼:コミュニティには健康面以外のメリットもあるのでしょうか? 特に仕事一直線で忙しい人などは、健康面以外の価値もないとなかなかコミュニティ活動に参加しなさそうです。

山崎:「自分の欲求を満たせる」という一面もあります。コミュニティ活動に参加することについて、「楽しい」を前提にして、自分自身がどれくらい価値を高められるかを考えられるきっかけができます。

例えば、職場でもっと出世してもいいと思っているけどなかなか認めてもらえない人が、インターネットを使えてプログラムが組めたりすると、町内会や地域の集まりではもう大絶賛ですよね。Facebookの使い方講座をするだけで、すごく盛り上がると思う。自分のできることをコミュニティに持っていくだけで、承認欲求を満たすことになると思うんですね。

小沼:周りの人の役に立ち、自分の欲求も満たせるなんて一石二鳥ですね。

山崎:そうなんですよ。欲求を満たすという観点では、コミュニティ活動をするにつれて、「こうなりたいな」と思っていた自分に近づけると思いますから、自己実現という一面もあります。特に先進国で重要とされる「自己実現の欲求」と「尊敬・評価の欲求」の2つの欲求段階を満たしていくという意味では、コミュニティ活動は自己研鑽だともいえますね。

小沼:他者のためではなく、自分のためにコミュニティ活動をするというのが新しいですね。

山崎:そうですね。たとえば、近隣の家の前にたまっている落ち葉が、自分磨きの対象になるって想像できますか? ただ掃いて捨てるだけではなくて、「一緒にやりませんか?」と仲間を募ってみるといいんです。

仲間が集まるとアイデアが出てきて、落ち葉を斜めのストライプ状に歩道に敷き詰めてみる。それをスマホで撮ってFacebookページにあげてみると、次第にその投稿をシェアする人やいいね! する人が増えていくかもしれない。捨てるはずだった落ち葉はアート作品となり、コミュニティ活動のきっかけとなる。その活動がより多くの人の目にとまれば、発案者は有名な落ち葉アーティストになるかもしれないんですよね。

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小沼:落ち葉アーティストとは考えもしませんでした(笑)

山崎:楽しいとか自分磨きとか、やらねばならんと思う強い気持ちとコミュニティ活動を一致させて、ちょっとずつ街をよくできたら、ありがとうと感謝されるわけですよね。それで、また次の図案を考えて、「こんなデザインにしたらまたおもろいんちゃうか」みたいにつなげていく。

人々が困っていることと自分がやりたいと思えることをうまく一致させていく人間が街で活躍し、それが賞賛される社会になっていくといいですね。

「何ゆうてんねん」と言い合える関係性をデジタルでつくれるか

小沼:SNSのようなデジタルのコミュニティに所属している人は多いですよね。デジタルなコミュニティにはどのような特徴があるのでしょうか?

山崎:デジタルなコミュニティにはいくつかの層でできているんです。主に3つくらいのグラデーションがある気がしますね。

まずは、会ったことがない人とインターネット上で会話する時。正直かなり疲れてしまいます。Facebookでメッセージをもらって返信するときは、相当気をつかっちゃいますね。

小沼:たしかに言葉選びにも慎重になってしまいますね。

山崎:次に、リアルで何回か会ったことがある人とSNSで会話するときです。これは、気をつかう度合いは少なくなりますね。相手の人となりがちょっとはわかっているので。SNSでも割と色々言えるし。

最後に、かなりリアルで親しい人とSNSで会話するとき、これは「何ゆうとんねん、アホか」みたいなことも普通に言えます。なので、デジタル上のつながりやコミュニティと言われるものにもグラデーションがあるんだろうと思うんですよね。

小沼:目に見えない境目を自分の中で作っているわけですね。

山崎:>結局、リアルでどれくらい仲がいいかだと思うんですね。その両者は深く、「リアルで知っているからデジタルのつながりはいらない」とはならない。リアルがあってこそのデジタルのコミュニティなんです。

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小沼:デジタルの登場は山崎さんのコミュニティ活動にどんな影響をあたえましたか?

山崎:実際に会わなくても話ができる点ではかなり便利になりましたね。地域の方々ともなかなか会えず、ワークショップも1ヶ月に1回程度しかやれていませんが、その間にFacebookグループで話ができて、相当いろんなことが進められますので。デジタルがあるとないとじゃ、だいぶ違いますね。

現実で会ったことを前提に、デジタルな場で会話ができるようになったことは、コミュニティデザインの分野としてはすごくありがたいことです。ただ、デジタル空間で会話している時は、そうとう言葉を選んでいる気がしますね。相手とどれくらいの深くつながりを持っているかにかなり依存している気がしますね。

地域で行う「やりたい」ベースのコミュニティ活動が働く人を救う

小沼:これからコミュニティは増えるのか、減るのか、どちらだと考えますか。

山崎:コミュニティによって増えるものと減るものがあると思います。まず地域の中でつくられる「地縁型コミュニティ」は年々減っていくでしょうね。もうひとつは趣味の団体のような「テーマ型コミュニティ」です。こちらの方は増えていくと思います。

小沼:「地縁型コミュニティ」は減少し続けるのでしょうか?

山崎:いや、地縁型コミュニティである自分たちの地域の自治会や町内会は、ある程度減っていって平衡状態になり、これ以上無くならないという線がでてくると思うんですよね。どうしてもつながってないと生きていけないって人達も出てきますから。

自治体の加入率でいうと、都心部ではもう6割を切っているみたいですね。つまりその自治会や町内会のうち4割の人は、自治会で決定したことがわからない、それに従いたくない、っていう人達ですねマンションで賃貸に住んでいる人達とか。

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小沼:地域のつながりは年々薄くなっていますよね。

山崎:でも地域の中で何かを決めたり、何か災害があったときに助け合ったりするためには日々地域の人達と顔を合わせている必要があります。だから自治体に加入していることはすごく大事なんです。

例えば震災があって、自分が2階の床の下敷きになったとします。この時に大事になってくるのは町内会を代表する地縁型コミュニティなんです。地域の人たちはそこに誰が住んでいるかわからなければ、助けに行くこともできないからです。

小沼:地縁型が減少するのに対して、テーマ型が増えていくのはなぜですか?

山崎:「テーマ型コミュニティ」はよりマニアックなコミュニティに細分化されていくからです。かつてサークル活動やクラブ活動はそんなに多くはなかったんですが、今では新しいサークルをポンポン生まれるようになっているんです。その分、1クラブあたりの加入人数は減っていきます。でも、「それ俺が入りたかったんだ」と思うようなものすごいニッチなコミュニティが生まれ、そこに属している人の数はかなり増えてくると思いますよ。

小沼:コミュニティ活動が盛んになるのに必要な要素とはなんでしょうか?

山崎:地縁型とテーマ型の2つのコミュニティをどういう風に地域で結合させていくかが重要ですね。落ち葉アーティストのコミュニティを地域の中で作っていく例は、ハイブリットですよね。5人が「落ち葉アート作りたい」と集まった場合、これは自治会とか町内会とは違います。だけど地域の中の5人ですよね。

こんな人達のつながりを作っていくと、地域の中で「自分たちがやりたい」と思っているテーマ型のコミュニティをつくることができるようになっていくと思います。

小沼:やりたいことを自分たちの住む地域でできたら理想的ですね。

山崎:そう思います。地域の中でテーマ型コミュニティを作り、自分がそこで住んでいることを楽しくしていく。そうすることで、いざという時に助けてもらえる可能性がグッと高まるんです。そういう意味では、地域の中でちゃんとコミュニティを作っていくことにつながる活動が必要だし、そういうコミュニティが増えていくことがリアルな社会の中では大事になってくると思いますね。

(取材:小沼悟、撮影:橋本直己

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(サイボウズ式  2015年3月9日の掲載記事「認められたい願望が強い会社員ほど参加すべき? 山崎亮「社会人からのコミュニティ入門」」より転載しました)