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サイボウズ式:社長の僕が、率先して会社に通勤するのをやめてみたら?

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自宅などオフィス以外の場所で働く「リモートワーク」を認める企業が徐々に増えていますが、それでも"月に何度まで"といった制限がついているケースが大半でしょう。

「社員全員がリモートワーク主体に」と、ワークスタイルの大変換を実現したのが、倉貫義人氏が率いる株式会社ソニックガーデン。倉貫氏は、『リモートチームでうまくいく』で実際、どのようにリモートで働いているのかを詳しく述べています。

これに興味を示したのが、『チームのことだけ、考えた。』を刊行し、ワークスタイル転換の必要性を強調しているサイボウズの青野慶久社長。なぜ今、リモートワーク導入が求められるのか、成功させるには何がポイントになるのか。活発な意見を交わします。

まず社長の僕がオフィスに出社するのをやめた

青野:ソニックガーデンさんでは、もうみんなリモートワークが当たり前という感じですか?

倉貫:そうですね。去年、完全に導入を完了しましたね。

青野:社員のどれくらいの人が、どれくらいの頻度でリモートワークをしているんですか?

倉貫:ウチの会社では、東京で働いている社員と、地方で働いている社員の割合が半々くらいなんですが、東京で働いている社員も、もう当たり前のようにリモートワークしていますよ。午前中は自宅で仕事をして、午後に出社するというのもごく普通です。

今日も、メンバーの1人が、奥さんの体調が悪いので午後から出社しますと言っていたのですが、午後になっても回復しなかったので、やはりずっと自宅で仕事をします、となりました。社員全員、「会社に出社しなくてはならない」という考えがなくなっていますね。

青野:直前に出社する、しないを決められるところに、フレキシビリティを感じます。リモートワークを導入している企業でも、普通、事前に申請が必要だったりしますよね。する人も、「よし、明日はリモートワークするぞ!」といろいろ準備したりして(笑)

サイボウズでも「ウルトラワーク」という制度があります。これは、在宅勤務を含めた、時間や場所にしばられない働き方の制度ですが、回数や場所の制限はないものの、認めるのは総労働時間の10%程度までとしています。

倉貫:当社ではもう「出社と通勤はイコールではない」という考えが浸透していて、どこで仕事をしているかについては誰も気にしていないですね。

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倉貫義人さん。1974年京都生まれ。株式会社ソニックガーデン代表取締役。1999年立命館大学大学院を卒業し、TISに入社。2011年、自ら立ち上げた社内ベンチャーをMBOで買収し、ソニックガーデンを創業。「納品のない受託開発」というITサービスの新しいビジネスモデルを確立し、注目を集める。新著は『リモートチームでうまくいく

青野:そこまできていますか。そもそもなぜ、全社的にリモートワークを導入しようと考えたんですか?

倉貫:当社も、もともとはみんなオフィスに出社して働くというスタイルだったんですが、だんだん地方で働くメンバーが増えたんですよ。とはいえ、地方のメンバーは社内的にはマイノリティなので、情報を取るのにも気をつかうという状況になってきたんです。

ずっとマイノリティでいると、地方のメンバーは辛くなってやめてしまうかもしれない。だったら、東京のオフィスが中心みたいな中央集権的な発想をやめ、全員、リモートワークを基本にして、「自分が存在する場所が働く場所」というフラットな環境にしようと考えたんです。

青野:なるほど。社内にはすんなり定着しましたか?

倉貫:そのために、まずは社長である自分が率先して会社に行くのをやめたんです。それって、結構勇気がいるんですよ。「社長だけズルい」みたいになるかも、とか考えてしまい(笑)。でも、僕が出社しなくなったら、社員も「あ、ホントにいいんだ」となり、徐々にみんな、リモートで仕事するようになりました。

青野:普通の会社でも、社長が帰るまでみんな帰れない、みたいなことってありがちですもんね(笑)。やはり社長が先陣を切ることが大事ですね。

会社とは概念的なもの。ならば出社も「論理出社」でいい

倉貫:「どこでも働ける」という意味では、最近、クラウドソーシングというのも出てきていますが、僕らの考えるリモートワークの定義とは違うんです。

クラウドソーシングは、"離れた場所にいる、会社組織に所属していない人に、スポットで仕事をお願いする"わけですよね。それに対し、"会社の社員として、仕事があろうがなかろうが給料は払うけど、働く場所はどこであっても構わない"というのが、僕らのリモートワークの定義です。

青野:あくまで会社の一員として、チームで働くということですよね。

倉貫:そのとおりです。僕らはそうしたリモートワークを前提として働くチームを、本のタイトルにもあるように「リモートチーム」と呼んでいます。

ウチの会社のメンバーは基本的に、みんなでワイワイガヤガヤ、アイデアを出しながら仕事をするのが好きなんですよ。でも通勤は嫌い(笑)。通勤はしたくないけれども出社はしたいというのにぴったりなのが、デジタル上で出社する「論理出社」というスタイルなんです。

青野:論理出社ですか! おもしろい言葉だなあ。

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青野慶久。1971年生まれ。サイボウズ株式会社代表取締役社長。今治西高校、大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役に就任(現任)。3児の父として3度の育児休暇を取得。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)がある。

倉貫:プログラマなら意味がすぐわかると思います。プログラムの世界では、データベースの中身を本当に消すことを「物理削除」と言い、消えたと論理的に判断することを「論理削除」と言います。

それと同じように、オフィスに来る、来ないというのはあくまで「物理出社」の話で、オフィスには来ていなくてもどこか別の場所で働いていればそれは「論理出社」している、となる。ウチの会社では、東京にいようが広島にいようが岡山にいようが、全員が論理出社して仕事をしているわけです。

青野:新しいなあ。未来の会社では、物理出社するか、論理出社するか、休むか、ということになるんでしょうね。

倉貫:当社では物理出社はもはや1つのオプションなんです。今日は天気がいいからオフィスに行こうかな、くらいの感じ。渋谷にあるオフィスはサテライトオフィスのようなもので、本社はソフトウェアの世界にあります。

青野:論理オフィスが本社なんですね。

倉貫:先日、大雪が降った数日後に、サイボウズの社員の方と講演でごいっしょする機会があったんです。その際、サイボウズでは雪が降ったら誰もオフィスに来ません、とおっしゃっていたのですが、いやいや、ソニックガーデンは小雨でも誰も来ませんよと。靴が汚れるから(笑)

青野:ははは! 「今日は寒いから会社に行きません」みたいな。いいですねえ!

倉貫:人間の発想って、モノにしばられすぎていますよね。「会社」というと、ビルや場所を連想しますが、会社の本体は物理的なものではないと思うんです。もちろん登記簿謄本や銀行口座でもないですし。会社とは、実は概念的な、ソフトウェアのようなもので、だったら出社も論理出社でいいのではないか、というのが僕の考えです。

青野:確かに。会社とは何か、という議論を始めると、みんな指しているものが違うんですよね。単なる概念でしかない。

倉貫:特にIT業界だと、成果物もデジタルで表現できる。そうなると、わざわざ物理的な場所に縛られる必要がないんです。

リモートワークは経営者にとって「逃げたらヤバいもの」

青野:より積極的な意味で、リモートワークの「必要性」についてはどうお考えですか? なぜリモートワークが必要なのか、という。

倉貫:「働く人」「社会」「経営者」それぞれにとって、必要性の意味合いが変わってくると思います。

まず、働く人にとっては、リモートワークはいいことずくめですよね。時間の融通もきくし、通勤時間もなくなるし。ただ、従来の働き方のように、ただ会社に来て座っていれば給料がもらえる、ではなくなり、成果物を出すことが求められるという大変さはあるので、「モチベーティブに働ける人にとっては」ということになりますが。

社会にとっては、これから日本がよりいっそうの少子高齢化社会を迎える中で、リモートワークが解決の糸口の1つになるのではないかと考えます。両親を介護するために田舎に帰らなくてはいけない、けれども地方には働き口がない、となった時に、リモートワークで働き続けるという選択肢が出てくるわけですから。

経営者にとっては、...あ、僕の意見をお話しする前に、青野さんの意見を聞いてみたいですね。経営者から見たリモートワークの必要性や価値について、青野さんはどのように考えますか?

青野:経営者にとっては、逃げたらヤバいものだと思っています。時代背景として、少子化で労働人口が減り続けているという課題があるわけですよね。そこで「社員を絶対に出社させる」という選択肢を採り続けていると、労働者を雇用できなくなり、ひいては会社を縮小させることにつながる。逆にリモートワークができる会社は、労働者を増やし、拡大していける。だからこそ逃げられないなと。

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倉貫:僕も同じような考えです。長期的に考えた時に、リモートワークができる会社は、働く人にとって、選択肢になりやすいですよね。

ただ、短期的な視点しか持っていない経営者もいて、そういう人が経営する会社は、リモートワークをやらないほうがいいと思うんです。なぜかというと、リモートワークを導入するとなると、従来のマネジメントのやり方を大きく変えないといけないから。少なくとも席に座っている時間の長さで社員を評価することはできなくなるし、細かい指示命令もできなくなる。短期的な視点だとメリットがないですよね。

しかし、それは社員のためになるのかなと。

青野:そうですよね。

倉貫:こんなことを言ったら物議を醸すかもしれませんが、「今は大変だけど、将来的な会社の姿や、社員の働きやすさを考えて、リモートワークを認めよう」と考えられるのは、その会社がホワイト企業であることの証の1つになると思うんです。多様性を認めることにもつながりますしね。

青野:本当にそのとおりですね。

自立した人材を生み出すのにもリモートワークはもってこい

青野:今、倉貫さんのお話を伺っていて、経営者はリモートワーク導入に、より積極的に取り組まなくてはならないという意を、ますます強くしました。

なぜかというと、"リモートワークでは細かい指示命令ができなくなる"のだから、リモートワークに対応できない人を集めることは、すなわち、"細かい指示命令をしないといけない人を集めることになる"わけですよね。それではイノベーションが起きるわけがない。

倉貫:おっしゃるとおりです。

青野:リモートワークをあえて導入することで、いい意味で社員を混乱させることができます。離れた場所で働きながら、自分の出せる成果は何かを考えてアピールできないと評価が上がらない、ということを突きつけることになりますから。そうなると、社員は主体性を持って自立するしかなくなる。これは、教育の手段としても使えるのではないかと。

倉貫:日本ではただでさえ労働人口が減少しているのに、何も考えずに指示待ちで働く人を増やしていいのか、と思います。1人ひとりがより価値を出せる仕事をしていかなくてはなりません。

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青野:サイボウズは2015年7月、オフィスを移転しましたが、新しいオフィスをつくるにあたり、「そもそもオフィスって本当にいるのか?」というところから議論をしたんです。

その際、「オフィスがほしい!」と言った人の多くは、意外なことに若手だったんですよ。若手には、当然、細かい指示がないと動けない人もいて、早く仕事を覚えるために、オフィスで先輩たちの近くで働きたいという要望が強かったんですね。逆を言うと、ある程度育ったら、リモートワークに押し出すぐらいにしたほうが成長を促進できるのかもしれません。

倉貫:ソニックガーデンでも、リモートワークが中心とはいえ、会社に来なくてはならないと決まっている人もいて。それは新卒の新入社員。

青野:あ、なるほど!

倉貫:新卒社員に「給料以上の成果を出せ」と言っても無理。会社に来て、先輩から言われたことのお手伝いができる、というのが彼らのバリューなんです。また、朝ちゃんと会社に来て、規則正しい生活をすることを通じて、セルフマネジメントができるようにもなる。それができるようになるまでは物理出社して働きましょう、という考え方です。

青野:まずはセルフマネジメントをできるようにする、という考えには非常に共感できますね。サイボウズでも、在宅勤務制度を導入した当初は、上司の承認制にしていたんです。そうすると、在宅勤務を許可される人とされない人が出てくるんですね。

何が基準なのかというと、まさに「セルフマネジメントができるかどうか」。毎日ちゃんと決められた時間に会社に来て、成果物もちゃんと出せる人なら、どうぞ在宅で、となりますが、ダラダラ遅刻してきて報告すらできない人だと、「お前、家にいても絶対働かないだろう!」となる(笑)。社員1人ひとりがきちんとセルフマネジメントできることが、リモートワークを成功させるための重要な要素だと思いますね。

倉貫:まったく同感です。

中編」に続きます。

執筆:荒濱 一/写真:尾木 司

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本記事は、2016年2月23日のサイボウズ式掲載記事「社長の僕が、率先して会社に通勤するのをやめてみたら?」より転載しました。