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新興国のための新たな開発の枠組み

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世界の指導者が2003年の開発資金国際会議で採択した「モンテレイ合意」は、国際問題と開発の進化を示す一里塚だった。それは、過去の家父長的温情主義による手法を乗り越え、低中所得国と高所得国の間に、共同責任(shared responsibility)と相互説明責任(mutual accountability)という新たな21世紀型アプローチに基づく枠組みを確立するものだった。

そしていま、ミレニアム開発目標の達成年である2015年が近づき、世界各国の首都において次に向けた熱い議論がかわされている。この機会に、いくつかの基本的な原則、および21世紀になってからの世界の政治経済の風景の大きな変化について考えてみよう。

二国間援助や国連機関、開発金融機関などを含む既存の仕組みは、新たな原則に合わせて内容を再編成してきた。また、世界エイズ・結核・マラリア対策基金やGAVIアライアンスのような数多くの新しい組織が、モンテレイ合意の原則を具現化するような目的や構造により創設されている。これらの機関は、いまなお果たすべき課題を多く抱えているとはいえ、人々の生命を救い、生活のレベルを向上させるうえで、世界が目覚ましい成果を上げる助けになってきた。

今日では多くの国が、著しい経済成長を果たし、政治的影響力を高め、世界の舞台でますます重要な役割を担うようになっている。G20の確立と影響力の拡大はとりわけ顕著にこの新たな傾向を示すものだ。

共同責任と相互の説明責任の基本的な原則はどこでも適用できるものではあるが、開発に関する現在の枠組みは主として過去の家父長的温情主義への反省から生まれてきた。実際問題、変化は始まったとはいえ、開発分野で使われる「ドナー(拠出者)」「レシピエント(受益者)」「アシスタンス(援助)」― といった用語は、伝統的な開発の考え方に内在している非対称性の色合いをいまなお残している。こうした枠組みの中には、旧植民地や低所得国からの移行を果たし、当然のことながら、援助が必要な受益者と見なされることを望まなくなった国が存在する余地はない。

おそらく、開発分野における新興国の関与という観点から原則と枠組みを定義し直し、新しいモンテレイ合意をまとめるべき時がきたのだ。その新たな合意は、現行の健全な原則に取ってかわるものというわけではなく、ユニークな役割を果たしうる重要な国々であり、時間の経過に従い重要度が増していくメンバーでもある国々を枠組みの中に位置づけるためのものなのだ。

開発における新興国の関与を考慮した新しい国際合意には以下の原則が含まれるだろう。共同責任と相互説明責任という開発援助の基本原則を再確認する;支援が重複しないよう新興国も低中所得国の開発計画や資金調達の優先順位決定に参加できるようにする:投資を受ける国の国家戦略に基づき、他の開発パートナーとも協力して世界レベル、地域レベル、各国レベルの投資を焦点化して進める;技術交流;ガバナンスの面で新興国の重要性とユニークな役割を認める国際機関に対しては、ゆくゆくは資金提供者として参加度を高めていく。

新興国は、それぞれの存在する地域および世界全体の中で大きな影響力を発揮しうる立場にある。世界および地域の成長戦略をリードし、支援しながら、この影響力を前向きかつ互恵的なかたちで最大限に活かすべきである。しかし、様々な組織が錯綜している現状をさらに複雑にするのではなく、各国の国家戦略をいま支えているパートナーと共同して投資をするかたちをとれば、すでに存在する開発枠組みに適合したより高い成果があがることになるであろう。新興国にとって重要なことは、新たなかたちの温情主義や新植民地主義に走り、過去の過ちを繰り返す愚を避けることである。

最近になって開発の苦闘からの移行を果たした国は、その経験と専門知識を共有することで貢献できるユニークな立場にある。低中所得国にとってこれらの国は、高所得国よりも近い環境にあるからだ。しかし、そのためには双方向の交流が必要になる。新興国の多くが経験して分かっているように、大きな革新は資源の制約された環境のもとでこそ生まれるものなのだ。

G20や国連安全保障理事会の非常任理事国のように、これらの国に「席」と「声」を確保しようとする仕組みはあるものの、その仕組みは必ずしも有効に機能していない。国際社会共通の利益をめぐるこれらの国の発言に、意味があり実行可能な形での政治的重みを与えるものにはなっていなかった。代表性の確保を求め、自国のみの利益ではなく共通する利益のために指導力を発揮することは、新興国にとって世界の舞台でより強い影響力を発揮し、地位を向上させていくことにつながる。

過去数十年にわたり、多くの場面で多国間機関からの支援の恩恵を得てきた新興国にとって、今こそこうした組織を通じた投資の拡大を考えるときである。そうすることにより、世界との対話に全面的に参画することができ、また、共同責任と相互説明責任の原則を実現するうえで必要な投資アプローチに関与できるようになるだろう。
しかし、新興国に対しては、単に既存の開発モデルに適応することを求めてはいけない。世界が歓迎し、支援したくなるような独自のモデルを彼らが生み出すということもあるかもしれないのだ。そして、私たち開発コミュニティ全体が、どうすれば― 私たちのモデルや機関の中で ―新興国の潜在的な力を呼び込み、さらに引き出して、地域的、世界的な好影響につなげていけるのかということを真剣に考える必要がある。私たちはまた、新しいモデルと原則について、その効果を測定し、説明責任を果たしていくための新たな手法を考え、生み出していく必要もあるのだ。

第1次モンテレイ合意が開発の新たなアプローチの基礎をしっかりと築いたように、第2 ラウンドでは新興国の生産的な関与のための枠組みを確立することが可能である。これらの国々の完全な参加とリーダーシップがなければ、調和が取れ、持続可能な世界をポストMDG時代に築くことはできないだろう。

マーク・ダイブル 世界エイズ・結核・マラリア対策基金事務局長
フリオ・フランク ハーバード大学公衆衛生大学院学部長

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