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田中将大、アメリカ人記者があまりに的確な評価

2014年01月28日 00時55分 JST | 更新 2014年03月29日 18時12分 JST

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■米国記者の的確な分析

 マー君は本当にメジャーでも活躍できるのか。ヤンキースと7年総額1億5500万ドル(約160億円)の超大型契約を結んだことで、田中将大投手(25)を見る専門家やメディア、ファンの目は早くも厳しくなってきている。では、メジャーリーグでも結果を残すために必要なものは、いったい何なのだろうか。

 米ケーブル局ESPN(電子版)のデビッド・ショーエンフィールド記者は、ヤンキースとの契約が決まる直前の今月20日付の記事で、田中の投球について詳しく解説している。動画サイトYouTubeで投球映像を見て書かれたものだというが、その内容は的確で、実に興味深い。成功の鍵は、やはり「ストレート」ということになりそうだ。

 参考にされているのは、昨年3月に行われた第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2次ラウンドのキューバ戦での投球だ。田中はこの試合に2番手で登板し、2回を投げて3安打1失点を喫しながら、6つのアウトをすべて三振で奪った。ボールの出所が見えにくい投球フォームは1つの大きな特徴として挙げられている。

 ただ、ショーエンフィールド記者は最初にはっきりと記している。「彼はダルビッシュではない」と。もっとも、ダルビッシュ有(レンジャーズ)はメジャーのどの投手よりも素晴らしいため、その表現はフェアではないとも指摘。そして、田中の各球種を以下のように分析している。

 まずは速球。平均91~94マイル(約146~151キロ)で、直球に見える。いわゆるツーシームのような動くボールではないということだ。この見方は正しいと言えるだろう。

■制球力は黒田より上、岩隈と同じレベル

 次にスプリット。両サイドの低めに制球でき、球速は85~89マイル(約137~143キロ)。同じようにスプリットを武器とする岩隈久志(マリナーズ)と黒田博樹(ヤンキース)は、このボールを左打者に有効に使っている。彼ら2人は、外角低めに制球することが出来ているため、メジャーでも通用しているという。田中もメジャーで効果的に用いるには、同じように投げる必要があるとしている。

 また、田中のもう1つの決め球であるスライダーは、球速83~86マイル(約133~138キロ)程度。このボールも岩隈と黒田がよく使うが、黒田の方がより頻度が高い。そして、田中のスライダーは黒田と同様にメジャーでも武器になる球種として期待できるという。その切れ味は、ドジャースのザック・グリンキーに匹敵するもので、とてもいいと評価されている。

 さらにカーブは72マイル(約116キロ)程度。どのくらいの頻度で投げるかは分からないが、投球のペースや打者の目線を変えるために有効で、低めにコントロールする必要があると指摘している。その軌道は岩隈と似ているが、先輩右腕はメジャーでは1試合で平均6球程度のカーブを使っている。

 最後にカットボール。これはダルビッシュが大きな武器としている球種で、田中の場合は80マイル台(129~143キロ)となっている。ただ、昨季はカットボールで被打率2割7分1厘と打たれている。田中は典型的な日本の投手で球種も多いため、メジャーではカットボールは捨てることになるかもしれないという。

 総合すると、田中は「ヤングバージョン」の黒田になると、ショーエンフィールド記者は評する。制球力は黒田よりも少し良く、岩隈と同じレベルだが、球速は上だとしている。

■直球をコントロールできるかが成功の鍵

 そして、成功の鍵は、田中が直球をコントロールできるかにかかっていると同記者は見ている。日本ではパワーヒッターが少ないため、カウントを悪くした場合には、直球で大胆に勝負できていた。ただ、メジャーではそこでの1球が命取りになる可能性がある。松坂大輔は日本では制球が良かったが、メジャーでは積極的に振ってくる打者を恐れるあまり、制球を乱したと指摘されている。ダルビッシュでさえも、海を渡ってからは制球が悪くなっており、日本では1試合あたりの四球が2・4、最後の年(2011年)は1・4だったが、昨年は3・4まで上昇している。

 もっとも、ダルビッシュは打者を歩かせても、"破壊的"な投球で打者を打ち取ることが出来る。しかし、田中はダルビッシュほどのボールを持っていないため、四球の後は岩隈のように(丁寧に)投げる必要があるという。昨季はホームランを6本しか浴びなかった田中だが、メジャーではこれが増えることは確実だからだ。

 ショーエンフィールド記者のこれらの分析は、投球をYouTubeで見ただけとは思えないくらい的確と言えるだろう。

 思えば、プロ入り当時、楽天の指揮官だった野村克也監督は、田中の課題は直球だとしきりに指摘していた。「マー君は本格派ではなく、変化球ピッチャーとして初めて新人王を獲った選手かもしれない」が口癖で、変化球に対する評価は高かった。一方で、直球については「課題はストレート。ストレートで空振りを取れない」と厳しかった。現在では、田中の直球を打てる日本の打者はほとんどいなくなった。今度はメジャーでプロ入り当時の課題が再び突きつけられることになるかもしれない。

 ただ、それこそが田中の望んでいることなのだろう。強力な相手との対戦で自分のボールを磨き、レベルをさらに高めていく――。例えば、黒田は自分の直球が通用しないと受け入れ、打者の手元で変化するシンカーを多投することでメジャー屈指の投手となったが、田中はどのようにして自らの地位を確立していくのか。日本でも課題を1つ1つ克服し、もはや「無敵」と呼べるレベルにまで上りつめた右腕だからこそ、期待は高まる。米国でも唯一無二の存在になる日が来ることを、日本のファンは待ち望んでいる。

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(2014年1月28日フルカウント「マー君がメジャーで成功するための二つの鍵――"ストレート"と"制球"」より転載)

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