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沖縄女性遺棄事件、「予防としての風俗活用案」は最悪の愚策です

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今月(2016年5月)発覚した沖縄女性遺棄事件に絡めた元大阪市長・橋下徹氏の発言が波紋を呼んでいます。
 
橋下氏は3年前に「性犯罪予防としての風俗活用案」を提案し、様々な批判を浴びた末に撤回したのですが、今回「やっぱり撤回しない方がよかったかも」とTwitterに投稿しました。彼に限らず、「性犯罪予防のための風俗活用」が良い案だと思っている人は後を絶ちません。

◆セックスワーカーを危険に晒して良いのか?


ですが、「予防としての風俗活用案」は最悪の愚策だと思います。それには2つ大きな理由があります。

一つ目は、セックスワーカーを危険に晒すからです。性暴力と殺人を同時に犯す人たちというのは、性欲と同等かそれ以上に強い支配欲・加害欲・嗜虐欲・殺人欲を有していることがほとんどです。

つまり「彼らの欲求をセックスワーカーで解消すれば良い」と主張するのは、性欲だけでなく、強い支配欲・加害欲・嗜虐欲・殺人欲の矛先も彼女たちに向けることになってしまいます。

セックスワーカーではない女性の安全が担保されれば、セックスワーカーの命は蔑ろにしても良いというのでしょうか? それはあまりにセックスワーカーの人権を軽視しており、女性蔑視と職業蔑視が酷い提案だと言わざるを得ません。

なお、今回のケースは容疑者には日本人の妻がおり、犯行は単純な性欲だけではない衝動が強かったと想像するのが妥当でしょう。

◆行くべきところは風俗ではなく病院だ


「予防としての風俗活用案」が最悪な二つ目の理由は、実効性の問題です。橋下氏は、自分の案を「きれいごとではない実効性の伴った対策」と思っているのかもしれないですが、それは大きな間違いです。潜在的な性加害者に行かせるべきところは風俗ではなくて病院です。

彼らのエネルギーの多くは女性に対する性欲ではなくて、女性に対する強い支配欲・加害欲・嗜虐欲・殺人欲なのですから、性風俗産業を利用させたところで、その犯罪欲求が止まるわけでは決してありません。衝動を抑えるためには事前に治療をしっかりと受けさせるべきでしょう。

以前、医学系の学会で性依存症加害者の治療を専門にしている先生の講演を拝聴したことがあり、倫理観では通じない加害者たちの性加害衝動を抑えるソリューションをいくつも持っていることに大変驚かされた経験があります。また、性加害者は認知の歪みを起こしている場合も多く、その場合は認知行動療法による治療も有用であるとのことでした。

もちろん彼らはその分野の専門家ですから、そのようなスキルをたくさん持っているわけですが、セックスワーカーは決してその手の専門家ではありません。

実際、性風俗産業の充実と性犯罪発生件数の間には一切相関関係は無いということは、様々な事例で証明されています。このように、予防のための風俗活用法というのは危険なだけでなく、効果が得るための対策としてもあまりに筋違いなのです。

◆再発防止が上手く行かない原因は日本にある


米軍基地問題が影響するために、米軍関係者による強姦事件は大きく報道されますが、そもそも日本人男性による日本人女性への強姦事件も、認知件数だけで毎年1,000件以上と、いまだに数多く発生しています。

にもかかわらず、日本の対策はあまりに不十分と言わざるを得ません。いまだに親告罪のままであることなどは明らかに政治家と官僚お怠慢ですし、二次加害をする人が多いせいで被害者が泣き寝入りをしてしまうケースが後を絶たないことなどは社会全体の欠陥です。

ですが、そのように性犯罪問題を放置しているために、性犯罪を劇的に減らすノウハウを日本社会は持ち合わせていません。出てきたとしても、橋下氏の「性犯罪予防のための風俗活用」のように愚策ばかり。

それゆえ、今回のような事件が起こっても、アメリカに対して効果的な対策を示すことができず、単に「再発防止を!」とだけしか叫べないわけです。

自国の問題を放置している国には、同様の問題で他国に解決するようまともに議論できるはずがありません。つまり、米軍関係者による性犯罪の再発防止がうまく行かない原因は、日本国内にもあるのです。

全世界では本当に数多くの性犯罪対策が存在しています。アメリカ国内でも「ミーガン法」等が存在しています。日本はありとあらゆる効果のある対策を徹底的に輸入するべきでしょう。そして「それらと比べて不十分である!」という具体的な内容でアメリカに訴える必要があると思うのです。

(2016年5月23日「勝部元気のラブフェミ論」より転載)