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通信傍受法の教訓に学ぶ

2013年12月02日 15時40分 JST | 更新 2014年01月31日 19時12分 JST

特定秘密保護法案について、マスメディアは依然として反対の姿勢を変えようとしていない。今と同じような状況が過去に起きたことがある。それが、通信傍受法の制定・施行である。

通信傍受法は、正式には「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」という名称で、1999年に成立し、2000年に施行された。この法律は、平穏かつ健全な社会生活を守るために、数人の共謀によって実行される組織的な殺人、薬物及び銃器の不正取引に係る犯罪等の重大犯罪について、犯人の相互連絡等に用いられる通信の傍受を行うために、要件、手続などを定めるものである。

毎日新聞の1999年5月20日付の社説は「通信傍受法案 厳格化の要件欠いている」であった。社説は、「憲法違反が指摘され、多くの批判が出ている法案である。国会審議も十分になされていないのに、とんでもない話である」と主張した。「憲法の保障する『通信の秘密』や『プライバシー』を侵しかねない法案であり、国民的合意がぜひとも必要である。だから、表舞台での真摯な論戦が求められていたが、自民、自由、公明の動きは水面下で決着を図ろうとしているようにみえる」とも指摘した。

同年5月29日の朝日新聞社説は「不信と不安が深まった 通信傍受法」。捜査機関による傍受を認める以上は、一般市民のプライバシーまで侵されることのないよう、できるかぎりの防止措置と運用の保証がなければならないが、「それが果たされたとは到底思えない」と批判した。「自分たちで決めた採決日程に合わせ、『数』で押し切った印象をぬぐえない」というのである。特定秘密保護法に対するメディアの主張と、きわめて類似していることがわかるだろう。

それでは、通信傍受法はどのように実施されているだろうか。政府は毎年国会に報告しているが、それを見ると、2012年には、わずか10件の通信傍受が実施されたことがわかる。件数は毎年この程度にとどまり、通信傍受は限定的に実施されている。

抑制的に実施されている理由の一つは、国会への報告である。国会への報告で、突然、数十件・数百件に増加すれば、そのわけを問われるし、強権的と批判されるだろう。「誤魔化しているだけで、実態はわからない」と言いたい人もいるかもしれないが、政権交代が起きれば嘘は暴かれてしまうので、それはできない。数と概要だけで内容がわからないとしても、国会という場に報告することは歯止めになりえるのだ。

特定秘密保護法においても、衆議院での修正で、特定秘密の指定と解除の状況・適正評価の実施状況を報告する義務が政府に課せられた。したがって、国会は、特定秘密の数があまりに膨大ならその理由を問うことができるし、国民は選挙を通じて秘密主義の政権を交代させることもできる。

通信傍受法の教訓からは、何から何まで特定秘密に指定される、という反対派の意見は納得できない。メディアは通信傍受法制定時と同じように、情緒的行動を取っているとしか思えない。