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ベトナム:憲法改正でも 人権面は遺憾な内容

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(ニューヨーク)-ベトナム議会が11月28日に可決した憲法改正案は、変化と改革を望むベトナム国民の切なる願いを反映するものではない、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ベトナムへの開発援助国・機関は、表現や結社の自由といった基本的権利を保障する憲法などの国内法の改正をめぐる働きかけを、同国政府に対しこれまで以上に強めるべきだ。

憲法改正案の起草が開始された今年1月2日、ベトナム政府と議会は広く一般に提言を求めた。結果、何十万もの人びとがこれに応え、法的改正の過程における一般市民の参加は同国史上先例のない様相を呈した。支配政党であるベトナム共産党に批判的なものも多く、提言の大半が一党支配体制に終止符を打ち、真の選挙を定期的に行う旨定めるよう求めるものだった。ヒューマン・ライツ・ウォッチは11月22日、ベトナム議会に書簡を送付し、諸権利を促進・擁護するための改正提言を受け入れるよう要請している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「憲法改正案は活発に議論されたものの強硬派が勝利を収め、新憲法は共産党による統制をより強固なものとする結果に終わった」と指摘する。「広く一般の求めや国際的な人権保障の責任に応える代わりに、体制に都合の良いあいまいな根拠を基にした基本的権利の制限を許す新憲法とともに、ベトナムは一党支配体制を堅持したのだ。」

国会議員の98%(うち90%が共産党員)による圧倒的賛成多数で11月28日、政府案が可決された。共産党が許容できる限度内に収まる提言を一般から集めて検討する配慮が示された一方で、国際人権基準に見合う抜本的な改革を新憲法に盛り込むべきという一般市民の提言は無視された。結局議会は、政府案にわずかばかりの修正を付け加えるのみにとどまった。

改正された憲法は来年1月1日に施行されるが、同憲法には共産党による一党支配体制強化のカギが2点含まれている。第4条は、共産党は労働者階級のみならず、国民と国家全体の先頭に立つと定めており、多元的で自由に争われる選挙の権利を行使する法的余地をさらに狭めるものだ。また第65条は、共産党に対する軍の絶対的忠誠義務についての新たな法制化を、正式に定めるという政府の意向に沿ったものとなっている。

第16条、31条、102条、103条に加えられた諸条項は一見、表現の自由ほか基本的権利を認め、政府批判者の恣意的逮捕やでっちあげの罪状による政治的裁判の終焉を約束したもののようにみえる。だが、これら条項は事実上、そのほかの条項に込められた抜け穴や不十分な保障により無意味になっている。第14条は、国防、国家安全保障、公共秩序、社会の治安・道徳に必要であれば、関係当局がほかで謳われる人権尊重を無視できる旨を明確にしている。

同様に、第24条の宗教の自由や第25条の表現の自由といった諸権利の再確認においては、あいまいで広範な法的制限を可能にする修正が付け加えられた。第70条、88条、105条は、共産党の司法制度に対する強硬な支配をこれまでどおり可能にするものであり、ベトナムに公正かつ公平な裁判の保障は依然として存在しないことを意味する。

前出のアダムズ アジア局長は、「今回の憲法改正は、活動家や政府批判者の弾圧のために、厳しい法律と政治的に統制された裁判所が今後も用いられる可能性を大いに残すものだ」と述べる。

今回の憲法改正案可決はベトナム政府にとって、11月12日に国連総会で人権理事会入りを果たして以来、最初の主要な人権関係の動きと言える。

前出のアダムズ アジア局長は、「ベトナム新憲法は、人権理事会理事国選挙の際に『人権の促進と擁護に最高の基準を用いる』としていた同国の主張に相反するものだ」と述べる。「同憲法はベトナムの人びとにとって大変な失望であり、ベトナムが人権尊重の国とみなされたいと仮に政府が願っているのであれば、その道程は限りなく長いものとなってしまった。」

(この記事は、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のサイトで12月3日に公開された記事の転載です)