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国際刑事裁判所:コンゴの反政府勢力指導者に有罪判決 検察はコンゴ民主共和国での調査を続けるべき

2014年04月04日 20時01分 JST | 更新 2014年06月04日 18時12分 JST

カタンガ氏に対するボゴロ虐殺事件での有罪判決は、現地の被害者に一定の正義をなしただけでなく、コンゴ全土で人権侵害を行う人びとへの明らかな警告でもある。同時に今回の判決は、ICCで被告の容疑変更時に裁判官が果たす役割について、未解決の問題があることを浮き彫りにした。

ジェラルディン・マティオリ=ゼルトゥネル、国際司法アドボカシー・ディレクター

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(ハーグ)国際刑事裁判所(ICC)はコンゴの武装勢力指導者に有罪判決を下した。これはコンゴ民主共和国での虐殺の犠牲者に一定の正義を果たすものだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ICC検事はコンゴでのさらなる捜査を公約し、今回の判決を発展させるべきだ。

2014年3月7日、国際刑事裁判所第二法廷は2対1で、ジェルマン・カタンガ氏を、2003年2月24日に起きたイトゥリ州ボゴロ村での殺人と襲撃の共犯で有罪とした。なお強かん、性奴隷制、子ども兵士の使用では無罪とした。カタンガ氏はコンゴ愛国的抵抗戦線(FRPI)の元指導者。被告側は今回の判決について上訴裁判部の判断を仰ぐことも可能だ。

「カタンガ氏に対するボゴロ虐殺事件での有罪判決は、現地の被害者に一定の正義をなしただけでなく、コンゴ全土で人権侵害を行う人びとへの明らかな警告でもある」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ国際司法アドボカシー・ディレクターのジェラルディン・マティオリ=ゼルトゥネルは述べた。「同時に今回の判決は、ICCで被告の容疑変更時に裁判官が果たす役割について、未解決の問題があることを浮き彫りにした。」

カタンガ裁判の判決では、過半数の裁判官が、裁判で提出された証拠、なかでも本人の証言によって、ボゴロ襲撃事件に氏が深く関与し、火器や弾薬を提供すれば犯罪が行われることも承知の上であったことが示されたと判断した。裁判官は判決の中で、裁判所規定が認めるところに従い、カタンガ氏の犯罪への関与を定義し直し、容疑となった犯罪の「実行」ではなく「寄与」とした。裁判官は全員一致で、訴訟で示された証拠では、FRPI兵士による強かん、性奴隷制、子ども兵士の使用について、カタンガ氏に刑事責任があるとの合理的疑いを超えることは示されていないと判断した。

裁判官3人のうち1人は判決に反対し、カタンガ氏が追及される犯罪を変更したことは、適切な防御の準備を阻むものであり、公正な裁判を受ける権利を侵害するものだと述べた。しかし多数意見は、カタンガ氏の弁護団は容疑の変更について十分な周知を受けており、証拠を追加収集し、弁護戦略を見直す時間も資源も十分に与えられていたと結論づけた。

そしてカタンガ氏が公正かつ迅速に裁判を受ける権利は、容疑の変更にかかわらず守られたと判断した。

コンゴ当局はカタンガ氏を2005年に逮捕し、ICCの逮捕状発令を受けて、2007年に身柄引き渡しを行った。2009年11月、カタンガ氏の裁判は、FRPIと同盟関係にある民兵組織、国民主義・統合主義戦線(FNI)司令官マチュウ・キュイ・ングジュロの裁判と併合された。FNIもボゴロ村虐殺事件に関与したとされたためだ。裁判は2012年5月まで続いた。2012年12月、ングジョロ氏に無罪判決が下された。

2012年11月、法廷はカタンガ氏とングジョロ氏の裁判の分離を決めた。このとき法廷は、カタンガ氏の弁護団に対し、容疑とされた犯罪について、氏の関与の法的性格の変更を検討していることを通知した。ICC上訴裁判部は2013年3月にこの変更を認めたが、裁判部にはカタンガ氏の公正な裁判を受ける権利を侵害しない責任があることを強調した。

「カタンガ氏への有罪判決は、容疑とされた犯罪への関与が後になって変更されたため複雑さを帯びた」と、前出のマティオリ=ゼルトゥネル アドボカシー・ディレクターは述べた。「この判決にはきわめて重要な問題が存在している。カタンガ氏個人の責任を問う犯罪の対象を変更したことは、裁判所規則で認められているにせよ、問題含みのものだ。ICCは、被告人の容疑変更にあたっては、本件をはじめ複数の事案を教訓とすべきだ。」

カタンガとングジュロ両氏の裁判で明らかにされた証拠は、コンゴとウガンダ両国の軍および政府高官が、2002年~03年にかけてのイトゥリ紛争で戦略決定や、FNIとFRPIへの資金・軍事支援で果たした役割にかんするヒューマン・ライツ・ウォッチの調査結果と一致した。とくに複数の証人から、軍事作戦を立案し、中央政府と同盟関係にある地元民兵組織(ングジュロ氏のFNIやカタンガ氏のFRPIなど)への武器・資金提供も担った、コンゴ政府軍内部の秘密部門について詳しい説明があった。カタンガ氏の裁判で提示された基本的な証拠は、ICC検察官が、人権侵害を行う地元民兵組織の支援者をコンゴで以後調査するにあたり、その戦略に影響を及ぼすべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

1999年から2005年のイトゥリ紛争では、すべての地元武装勢力が、コンゴ国内や隣国ルワンダ、ウガンダの軍と政府高官から大量の支援を受けていた。紛争は州内にある金などの鉱山資源の支配権をめぐるものだった。これら軍・政府高官はコンゴの武装勢力に対し、国際人道法違反を広範に行っていることが十分示唆されていたにもかかわらず、支援を行っていた。地元民兵組織に外部から支援が行われているとの懸念は、コンゴ東部に関し頻繁に持ちあがる。最近では2012年から13年の北キヴ州で、ルワンダ軍高官が反政府武装勢力M23(3月23日運動)への援助を行った事例がある。

ICC検察官事務所は現在までにコンゴでの犯罪について6人に逮捕状を出している。うち4人はイトゥリ州の武装勢力司令官だ。トマ・ルバンガ氏は2012年3月に有罪判決を受けた。共犯とされたボスコ・ンタガンダ氏はM23を主導していた。イトゥリ紛争で2人と争ったのが、ングジュロ、カタンガだ。残り2人はルワンダ解放民主軍(FDLR)の司令官だ。FDLRは南北キヴ州一帯で活動するルワンダ人フツ民族主体の反政府組織で、一部は1994年のルワンダでのジェノサイドに参加した。1人は、ICC裁判官が容疑を認めなかったため、釈放された。もう1人はコンゴ国内で訴追を逃れている。ICCのコンゴでの活動全体は今までのところ不十分な状態に留まっていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

「ICC検察官事務所は、コンゴでの捜査と容疑者選択の質を上げる必要がある」と、マティオリ=ゼルトゥネル・ディレクターは述べた。「法による正義が確実になされるために、検察官は、地元民兵に武器と資金を提供したコンゴ、ルワンダ、ウガンダの高官に焦点を絞るべきだ。」

カタンガ氏の裁判は、ICCで判決が出た3つめの訴訟。このほか3件が進行中で、中央アフリカ共和国とケニアでの犯罪行為が対象となっている。コンゴの反政府組織指導者ボスコ・ンタガンダと、元コートジボワール大統領ローラン・バグボの容疑確定については決定がまだなされていない。

(2014年3月7日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)