BLOG

武藤嘉紀の台頭 アギーレジャパン、ポジション争いの行方

2014年09月12日 23時12分 JST

5日のウルグアイ戦(札幌)を0-2で落としたアギーレ監督率いる新たな日本代表。中3日を経て挑んだ9日のベネズエラ戦(横浜)が4-3-3の理解度が深まり、岡崎慎司(マインツ)と武藤嘉紀(FC東京)の入った後半は攻撃陣がいい距離感でプレーが出来て2ゴールを挙げるなど、前進は見られた。しかしながら、重要な初陣2連戦で勝てなかったのは事実。「日本代表はどんな時も勝つこと。そのためのサッカーをする」と岡崎も強調していたが、この結果ではその狙いは果たせなかったことになる。

指揮官が「2試合で4失点は多すぎる」と苦言を呈したように、全ての失点が組織的な守りの崩れではなく、個人的なミスから生まれたのは絶対に直視しなければいけない点だ。ウルグアイ戦の失点は新顔の坂井達弥(鳥栖)のトラップが大きくなりすぎてカバーニ(PSG)に拾われたのがきっかけだった1点目、酒井宏樹(ハノーファー)のクリアミスを拾われた2点目と集中していれば防げるものだった。ベネズエラ戦も水本裕貴(広島)のパスミスからカウンターを繰り出され、彼自身が戻って相手を倒してPKを献上した1点目、さらには絶対的守護神・川島永嗣(リエージュ)がまさかのキャッチミスから招いた2点目と、目を覆いたくなるような場面が続いた。DF陣の不甲斐なさが目立っただけに、今後は大幅な入れ替えが起こり得るかもしれない。

GKは守備範囲が広く、足技とフィード力に優れる西川周作(浦和)へのシフトが第一に考えられる。ただ、高さで見劣りする彼は世界レベルの相手には厳しいという評価もある。そこで林彰洋(鳥栖)にもチャンスが巡ってくる可能性もありそうだ。彼らの今後のパフォーマンス次第だが、10月のジャマイカ戦(新潟)はとりあえず入れ替えをしてみるべきだ。そうでないと川島も危機感を覚えないだろう。

DFに関しては、今回合格ライン以上のパフォーマンスを見せたのは吉田麻也(サウサンプトン)と長友佑都(インテル)の主力2人のみ。右サイドバックの酒井宏樹は前述の通り決定的なミスを犯し、酒井高徳(シュトゥットガルト)も普段とは違う右サイドでの起用でクロスの精度に難を垣間見せた。となると、やはり内田篤人(シャルケ)の再招集を考えなければならないかもしれない。一時は代表引退を示唆した彼だけに、本人との話し合いも必要だろうが、1月のアジアカップ(オーストラリア)で勝つためには、やはり実績ある内田が欠かせない。センターバックも坂井達弥と水本も失点に絡んでおり、このまま残留という訳にはいかないかもしれない。ただ、このポジションは植田直通(鹿島)や西野貴治(G大阪)、岩波拓也(神戸)などU-21世代に有望な若手が数多く揃っており、アジア大会後の10月ならA代表入りは可能だ。まずはアジア大会でのパフォーマンスを見てみたい。

アンカーのポジションは森重真人(FC東京)がそのまま残るのか、細貝萌(ヘルタ・ベルリン)が下がるのか、それとも負傷で今回は招集されなかった山口蛍(C大阪)ら別の選手が担うのかはまだ微妙なところ。森重はパス出し能力も守備力もあってこの役割は悪くないが、もう少し攻撃にダイナミックに絡める人材が欲しいのも確か。そういう意味では次のシリーズは違う選手がテストされるだろう。

インサイドハーフも今回は柴崎が一歩リードしたが、離脱した長谷部誠(フランクフルト)や山口や青山敏弘(広島)らブラジルワールドカップ組も候補だし、Jリーグで好調の米本拓司(FC東京)やJ2湘南のキャプテン・永木亮太らも可能性がある。左に関しては指揮官はレフティを起きたがっているため、田中順也(スポルティング・リスボン)の残留は濃厚だが、まだまだ人材を掘り起こす必要はある。誰が滑り込むか気になる。

そして3トップの両サイドは大激戦だ。このシリーズでは右は本田圭佑(ミラン)の定位置となっていたが、岡崎やJリーグ組の小林悠(川崎)や工藤壮人(柏)らも候補者で、誰が台頭するかは未知数だ。左に至っては、香川真司(ドルトムント)、原口元気(ヘルタ・ベルリン)に加え、宮市亮(トゥエンテ)、宇佐美貴史(G大阪)もいて大激戦なのは間違いない。今回大活躍した武藤には勢いが感じられるが、彼といえども定着が約束された訳ではない。不完全燃焼に終わった柿谷曜一朗(バーゼル)を含めて、ここから来月までクラブでコンスタントに結果を出すことがまずは肝要だ。

1トップはベネズエラ戦でいい働きを見せた岡崎が現時点ではリードしている状況だろう。それでも大柄な体躯を生かして存在感を示した皆川佑介(広島)、今回はアピールがうまくいかなかったもののポテンシャルの高い大迫勇也(ケルン)もいる。それ以外の候補者も出てくると見られるだけに、まだまだ流動的だ。

これだけ各ポジションの競争が繰り広げられる状況はザックジャパン時代にはなかった。それだけでも監督交代の効果があったと言える。この先、チームがどうまとまっていくのかを慎重に見ていきたい。

2014-06-06-4.jpg
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

(2014年9月10日「元川悦子コラム」より転載)

ワールドカップ美女 総集編