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アメリカ大統領選で盛り上がるティーパーティー運動

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■盛り上がるティーパーティー運動

米国の草の根右派運動「ティーパーティー運動」でシンクタンクとしての役割を果たす「フリーダムワークス」主催の全国大会「Morning in America Summit」に参加するために、ティーパーティー運動の名前の由来であるボストンより、オハイオ州シンシナティに足を運びました。

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(サミット開始前の会場の様子:執筆者撮影)

米合衆国の国歌斉唱から始まるこのサミットは、2016年11月の米大統領選でティーパーティーのメンバーたちがどの候補を支持していくか、方向性を定めるうえでも重要な大会でした。

支持者の中では不動産王ドナルド・トランプ氏と上院議員テッド・クルーズ氏の2人の「アウトサイダー」で二分されていると見られていましたが、この日の大会で主催者が発表したアンケート調査によると、クルーズ氏の支持が9割近くを占め、圧倒的な人気の高さを見せつけました。

ティーパーティーの支持者らは、トランプ氏の過去の言動に懸念を示し、クルーズ氏を「本物の保守」と見なしたようです。

また、大会では、ティーパーティー運動のシンボル的存在であるグレン・ベック氏(右派ラジオのホスト)ら著名な活動家や、ティーパーティーの議員連盟に加わっている連邦議員らが参加し、大きな盛り上がりを見せました。

1000人程入りそうな会場は超満員であり、ティーパーティー運動を支持するグッズや、支持する保守系シンクタンクによる寄付のブースなどがあり、日本の選挙とは全く違う次元の空間でした。参加者はそのほとんどが白人中間層、年齢も40〜60代あたりでしょうか、アジア人は私たち以外ほとんどおらず、ヒスパニック系、黒人も数える程度でしょう。何よりも、一部の米国民の、特に白人中間層の「怒り」を直接感じることができる場であったと言えます。


■ティーパーティーの支持者たちが求めるものは?

ティーパーティーの支持者たちは、オバマ政権の看板政策である医療制度改革である「オバマケア」を「社会主義的だ」として強く批判しています。

彼らに取ってみれば、オバマ政権の政策は1930年、当時のフランクリン・ルーズベルト大統領による世界恐慌を克服するために行った一連の経済政策「ニューディール政策」から始まる「大きな政府」の延長線上にあり、政府を際限なく肥大化させ、「個人の自由」を奪うものだと考えているからです。

しかしここで注意しなければいけないのは、一般的に言われている米国民の怒りと、ティーパーティーメンバーの主張は分けなければいけないことです。

仮に米国における白人中間層の怒りとした場合、グローバリズムによる中国(日本を含む)など他国への産業、富の流出が大統領選でのトランプ氏やサンダース氏に対する支持の広がりの理由になると考えられるからです。


■名前の由来はボストン茶会事件

話は戻りますが、そもそもティーパーティー運動とは、2008年のリーマン・ショックをめぐり、オバマ政権の取った大企業救済策に対する反発から始まった右派による新しい「草の根運動」(Grassroots movement)のことです。

彼らは自分たちの運動を1773年に英国の植民地であった当時の米国が、英国の植民地政策に反対して、英国本国から運ばれた紅茶を海に捨てた事件「ボストン茶会事件:Boston Tea Party」の史実に重ね合わせ、ティーパーティー運動と呼ぶようになりました。つまり、英国が戦争で抱えた負債を、米国民(当時の英国植民地)に税金という形で負担させることに反対した人達が起こした事件であり、アメリカ独立戦争へと発展していきます。

この事件が意味するように、ティーパーティー運動のメンバーらは「小さな政府vs大きな政府」の戦いにおいて、英国から独立して自由の国アメリカを建国したことを思い出し、自分たちのティーパーティー運動こそ、暴政からの「個人の自由」を求めた建国の理念へと回帰する運動だ、と考えているわけです。

2012年の総選挙で安倍晋三自民党総裁(現首相)は「日本を取り戻す」というスローガンを掲げましたが、彼らにしてみれば「米国を取り戻す」という精神と似ているのかもかもしれません。
(この場合は現在の多様化した人種と価値観のアメリカからといっても過言ではないかもしれません。)


■ティーパーティーのイメージする古き良きアメリカ

このティーパーティー運動の支持者は、会場を埋め尽くす白人達からわかるように、年配の労働階級白人中間層が中心になっています。

つまり、ワシントンDCの政治家やウォール街の大企業ら「エスタブリッシュメント」(既得権益層)に反感を持つ一方、不法移民らの増加によって自分たちの生活が脅かされていると危機感を抱く人たちです。

エリート官僚が統治する中央政府を批判し、個人の自主性を重んじてそれぞれの努力により成功を実現させる、彼らがイメージする古き良きアメリカンドリームへの回帰とも言え、いわゆる結果の平等ではなく、挑戦出来る権利の平等を求めていると言うこともできるのではないかと思います。


■右派が主張する「立憲主義」

大きな政府への怒りが渦巻くこのティーパーティー運動において、現政権批判以上に耳に入ってきた言葉が「憲法上の権利の回復」です。

ボストン茶会事件から続く米国独立戦争を経て、米国建国の父祖達は、横暴な英国連邦政府から個人を守るためにアメリカ合衆国憲法を制定しました。

そして米国民は200年以上にわたって自由を追求し、家族のために個人的および経済的自由を活用し、その元で米合衆国という国家が繁栄したのであり、米国人の富は、個人の直接的成果であると主張しています。

つまり、政府は課税を増やして支出を増やしていくのではなく、国民の自由を保護する事のみに専念するべきであるということです。

これらの憲法原理主義的な考え方が、ティーパーティー運動が「憲法保守」とも言われる所以です。

日本ではリベラル勢力が「立憲主義」を主張するのに対し、米国では右派が「立憲主義」を主張しているところが好対照と言えるでしょう。


■ティーパーティー運動に何をみるか

さらに注目すべきは、ティーパーティー運動は政党の結成等を指すわけではありません(ほぼ例外なく共和党候補者に投票するものの、共和党の既得権益層に対しても批判をします)。

フランス革命に始まり、アラブの春に例をみるこのような草の根的な大衆運動(特定のリーダーがわからないことが特徴でしょう)は、SNSやインターネットが発達した現在、巨大なムーブメントを巻き起こすということを証明しています。

オバマ政権の中間選挙において、政策方針転換まで受け入れさせたこれらのティーパーティー運動もソーシャルメディアを徹底的に駆使しており、米国内では既得権益層は無視できない、確固たる政治勢力となっています。

今回の大会ではほとんどの登壇者は「我々は怒っている」と訴え、聴衆もその言葉に対して大きな拍手を送っていました。

ティーパーティー運動を支持する人々の怒りは、巨大な力となり、これからの米国大統領選の結果を大きく動かすかもしれません。

対日政策ばかりが注目されますが、米国と比べて民主主義の歴史が浅い日本は、このようなティーパーティー運動の中から、新しい政治運動のあり方を探るヒントを、そしてさまざまな教訓を見つけられるかもしれません。

□編者:北原 秀治(きたはら しゅうじ)
日本政策学校 第2期生 ボストン在住
ハーバード大学博士研究員、UJAW(全世界日本人研究者ネットワーク)世話人、
BJRF(ボストン日本人研究者交流会)幹事。
東京女子医科大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。
癌研究をする傍ら、日本政策学校、ハーバード松下村塾(ボーゲル塾)で政治を学ぶ。
専門は解剖組織学。「政治と科学こそ融合すべき」を信念に活動中。

□編集協力者:クリストファー・セジウィック
フレッチャー法律外交大学院修士課程修了。
プリンストン大学東アジア研究学部を経て2009年~2012年まで
在サンフランシスコ日本国総領事館政務班補佐兼総領事スピーチライターを務める。
2012年~2013年まで日本政府国費研究留学生として
東京大学大学院法学政治学研究科に在学。
専門は東アジア研究、国連平和維持活動、紛争分析など。

【参考文献】
1:ティーパーティー運動 藤本一美、末次俊之著、東信堂
2:Freedom Works
http://www.freedomworks.org/about/about-freedomworks
3:Tea Party
http://www.teaparty.org
4:Boston Tea Party
http://www.bostonteapartyship.com

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