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『風立ちぬ』 - 宿輪純一のシネマ経済学(3)

2013年07月29日 01時28分 JST | 更新 2013年09月26日 18時12分 JST

宮﨑 駿(みやざき はやお)が、自身の連載漫画を、スタジオジプリによってアニメーション映画化した作品。この7月20日に公開されたが、早くも大ヒットの兆しを見せている。ちなみに『風立ちぬ』の「ぬ」であるが、これは少し古文的ですが完了の助動詞。「風が吹いた」という感じでしょうか。

彼が映画の監督を務めるのは、『崖の上のポニョ』(2008年)以来。彼はテレビアニメに携わったあと、名作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)で映画監督デビューした。ちなみに、スタジオジブリのジブリとは、サハラ砂漠に吹く熱風(Ghibli)のことで、第二次世界大戦中のイタリア・カプローニ社の偵察/爆撃機の名前に由来するともいわれており、宮﨑監督のこだわりが見える。カプローニ氏は本作品の中にも登場する。

宮﨑監督が"ゼロ戦設計者"の堀越二郎と"作家"の堀辰雄の話を一体化させ、1930年代の日本で飛行機作りに情熱を傾けた青年の姿を描いた。"美しい"飛行機を製作したいという夢を抱く青年が成し遂げた名作飛行機"ゼロ戦"の誕生、そして結核の少女との出会いと悲しい別れが絡まる。大正から昭和にかけての日本が舞台となっており、関東大震災や世界恐慌で世間は重い閉塞感に覆われていた。航空機設計者の堀越二郎はイタリア人飛行機製作者カプローニ氏を尊敬し、いつか美しい飛行機を作りたいという強い夢を持ち、設計の仕事に打ち込む。関東大震災のさなか汽車で出会った菜穂子と恋に落ちるが、彼女はその頃は不治の病であった結核にかかって人生を閉じていく。そんななかゼロ戦が誕生するが、戦争も終わりに向かっていく・・・。

筆者も飛行機も好きであり、本作品の中でもドイツの名門飛行機ユンカースも登場してワクワクする。また、この映画のテーマは"美しさ"ではないかとも思う。主人公の生きざまと共に、大正から昭和の町の様子や日本の原風景が、進歩したアニメ技術もあってとても美しい。また本作品に出てくる人は皆、気持ちが"美しい"良い方が多い。このような人格は現代社会の中で失われつつあるものである。

この設計に向けた主人公の"情熱"には心を打たれる。この情熱が物事を成し遂げていくときに最も必要なものである。日本には"職人"という世界がある。もちろんいわゆるしきたりもあるが、基本的には自分の仕事においては、新しいものを取り入れて"自由"に創作できた。この自由ということが、価値向上においては必要になってくる。

たとえば、構造改革・成長戦略の要である"イノベーション"であるが、新しい発想が重要で、当たる・当たらないかは判断が難しい。つまり、軟らかい頭で自由にやることが大事なのである。つまり、政府が自ら組織的に行うよりは、規制緩和を前提として民間が対応することこそがその戦略の方針となるべきなのである。

ひところ、京都の企業群が大躍進した時期があった。その時には特徴が一つあった。創業者がよそ者であること多かったことである。誤解をしないようにして欲しいが、京都はやや閉鎖性があるということを聞く、よそ者として入って来た人にはなにも言わない=自由に行動できる、ということも強さの一因となったのではないか。

とにかく、何事も新しいことを行うためには、規制で縛るのではなくて"自由"にやらせることが肝要なのである。

筆者の書籍紹介

円安vs.円高 どちらの道を選択すべきか』(東洋経済新報社)


アベノミクスによる円安は救世主か亡国か!? アベノミクスによる急激な円安で「為替」への関心が高まっている。円の切り下げは日本経済再生の切り札となるのか? それとも輸入物価の高騰を招き国民生活を疲弊させてしまうのか? 「円安は日本再生の最強の処方箋。1ドル=200円になれば日本の景気は回復する」(藤巻)vs.「日本経済を再生させるには、円安よりも産業競争力の強化を優先すべき」(宿輪)――伝説のカリスマ・トレーダー藤巻氏と国際金融論を専門とするエコノミスト・宿輪氏とが日本のあるべき通貨政策をめぐって徹底討論。