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『ラッシュ/プライドと友情』――自動車と持続的経済成長 宿輪純一のシネマ経済学(28)

2014年02月10日 00時26分 JST | 更新 2014年04月11日 18時12分 JST

『ラッシュ/プライドと友情』(2013年米国:『Rush』)

自動車レースF1(Formula One)の映画。Formulaとは規定の意味。F1レーサーのスーパースター、ニキ・ラウダとジェームス・ハントが壮絶なタイトル争いを繰り広げた1976年のシーズンを映画化。

性格も走り方も全く違うオーストリア人ニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)とイギリス人のジェームス・ハント(クリス・ヘムズワース)は自他共に認めるライバルで、激しく首位を争っていた。しかし、好事魔多し、1位だったラウダはドイツ大会(ニュルンブルク)で大事故に遭遇する。

生死の境を彷徨い(顔の半分にやけどの跡が残るが)奇跡的にレースに復帰し、日本の富士スピードウェイでのシリーズ最後のレースに臨むが、その日はサーキットに川ができるような大雨だった。この死闘とライバル関係を描くが、臨場感あふれるレースシーンにも力点が置かれている。

男性は一般的に車好きの方が多いように感じるが、特にF1好きの方には堪らないであろう。筆者も父が一時、日本のメガ自動車会社のデザイン室に勤務していたので、車に対する興味は強い。車は持っていないが、いまでもデザインの良い車は大好きである。

 

監督は名匠ロン・ハワード。彼は当初フランシス・コッポラ製作でジョージ・ルーカス監督の『アメリカン・グラフィティ』(73年)などで俳優として活躍していたが、監督業にも興味を持ち、映画学科に入学して学んだ。『バックドラフト』(91年)、『アポロ13』(95年)、『身代金』(96年)、『ビューティフル・マインド』(2001年)、『ダ・ヴィンチ・コード』(06年)、『天使と悪魔』(09年)と名作が並ぶ。

このうち『ビューティフル・マインド』でアカデミー監督賞を受賞している。陽気なハントのクリス・ヘムズワースは、この連載でも紹介した『マイティ・ソー』が当たり役。

自動車は、今やその国の製造業、そして経済にとって、重要な役割を果たしている。自動車売上高は、経済の重要指標となっている。米国ではGMの経営不振を国策として対応した。

工業的な製造業では、その製品の売上高が伸びることは大変良いことなのであるが、喜んでばかりもいられない。地球は宇宙船ともいわれる閉鎖的な空間であり、"持続的な成長"のためにはその環境的な影響も考えなければならない。宇沢弘文先生の『自動車の社会的費用』(74年)でも描かれている。宇沢先生はシカゴ大学・東京大学などで教鞭を執られ、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ先生はその門下生に当たる。(筆者も、討論会などでご一緒するが、いつも厳しい指導を受けている)

この"持続的な成長(Sustainable Growth)"ということが、今後の世界(地球)経済の長期的な発展には必要なことになる。景気が悪くなるとどうしても短期的な売上や経済成長率に目が向きがちになる。それはそれで仕方ないことである。

しかし、廃棄物の問題や二酸化炭素や有害物の排出の問題は、長期的には重要な意味を持ってくる。筆者は講義で、経済や経営などの人間の活動は、人の営みと同じであると説明している。短期的な風邪や体調の対応、そして日々の生活も必要なのであるが、長期的な健康、それは生活習慣といっても構わないが、そういった長期的なことを考えることが、人間の賢さと考える。

とはいえ、自動車の速さ、そして流線型を中心とした素敵なデザインには本当に惹かれる。我々、人には、機能と美しさの両方が必要なのであろう。

「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたにも分かり易い講義は定評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。22日で記念すべき150回を迎え、2014年4月で9年目になります。
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