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宿輪純一 Headshot

『更年奇的な彼女』―分かりにくい中国の恋愛的生活と経済 宿輪純一のシネマ経済学(101)

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(我的早更女友/MEET MISS ANXIETY /2014年)

不思議と「観ると結婚できる映画」と話題になっている作品である。原題がすごい。『我的早更女友』なので、直訳すれば「私の若年性更年期の女友達」となる。さすがに「更年期的な彼女」もなんなので、捻りをいれて、この『更年"奇"的な彼女』としたのであろうか。

『猟奇的な彼女』(韓国)、そして『僕の彼女はサイボーグ』(日本)と強い彼女を主人公にヒットを飛ばしてきた韓国の巨匠クァク・ジェヨン(郭在容・곽재용)監督が「アジアの彼女3部作」の完結編として、若年性更年期と診断された20代の女性を描くラブコメディー。

女主人公は『小さな中国のお針子』などの中国四大女優の一人のジョウ・シュン。ヒロインの破天荒ぶりと、髪型を始めとしたキュートさでさらにブレイクした。日本では藤原紀香が吹替。さらに、主題歌「君がそばで」を華原朋美が歌うのも話題。

劇的なプロポーズをするも、劇的に断られて20代で更年期になってしまった女主人公と、彼女を思うどこまでも優しい男の物語。彼女は、最初はこの男のことは全く気にならないが、友人に助けられ、最後、新しい一歩を踏み出していく。

中国の美しい港町・福建省アモイ(厦门)が舞台。2009年、親友の取り計らいもあり、自分の大学卒業式で、かねてから同棲中の恋人とのサプライズ結婚式を上げることになったチー・ジア。しかし、相手の男性から「まだ結婚は考えられない」とその場で拒絶される。このことがトラウマとなり、なんと26歳の若さで「若年性更年期」となる。

偶然、酔っ払った彼女を介抱した男子学生ユアンと同居人として暮らすこととなる。しかし、失恋から立ち直れないチー・ジアは、彼を男性としては全く感じられない。その後、ユアンは上海へ栄転するが、そうなって、初めてチー・ジアは彼への思いと自分の思いにようやく気づく。世界中に捨てられた女性はいるし、それを支える男性もいる。そして、お約束であるが、それを知るのは遠くに行ってからである。

数年後、同じくチー・ジアのルームメイトだったリン・シューアールから、ユアンはチー・ジアの更年期障害の症状がひどくなり、上海の病院に入院したことを聞く。すぐさま入院先に駆けつけるが......。

アジアの彼女3部作で、今回は舞台は中国である。現在、中国は世界経済のエンジンの一つであるが、最近、経済成長率が落ちてきている。しかも、情報が取りにくく、経済統計の信頼性も100%ではないともいわれている。要は分かりにくいのである。

本作はそんな食事や生活ぶりを見て、街中やインフラを見て、分かりにくい中国の実体経済をイメージすることができる。映画でみるとある程度は実感として理解できるのである。やはり視覚というものは、イメージの理解を確かなものにしてくれる。こういうのが経済を理解するのに大事なのである。そのイメージに経済分析を肉付けしていく。現場主義に近いかもしれないが、そのように血の通った経済分析が大事だと筆者は考えている。

筆者は以前、中国北京の清華大学に招聘され特別講義をした。その時の宴会時の雑談で交わされた言葉、(先方教授)「宿輪先生は中国経済についてどうお考えですが」、(筆者)「(ヤバいと思いながら)大きいし、成長していて良いと思います」、(先方教授)「我々の考えは違います。中国に諺があります、生き残るのは大きい魚ではなく"動きの早い"魚である」。(政治的なことはよく分からないが)個人的には良い諺だと思った。その時、日本も現状維持政策ではなく、経済改革を進め成長率を高めてほしいと思った。


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