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震災時「LINE Out無料開放」の何が問題だったか

2016年04月15日 16時32分 JST | 更新 2016年04月15日 16時32分 JST
LINE公式アカウント

4月14日の21時26分ごろ、熊本県を震源とする最大震度7の強い地震が発生した。これを受け、携帯電話事業者は、Wi-Fiの無料開放や通信料減免などの支援措置を発表している。

各報道によると、震災直後は電話などのトラフィックが集中し、通信に混雑が発生。通信規制もひかれていた。現在では解消されているものの、被災地への不要不急な発信は、緊急時の通話のさまたげになる。最悪の場合、救助を求める電話がつながらないといった事態を招くことにもつながる。

被災地以外のユーザーは、通信事業者の提供する災害用伝言板をはじめとするサービスを利用するのが鉄則だ。通信事業者と連携している、Googleの「パーソンファインダー」を利用してもいいだろう。

LINE Outの10分無料は何が問題だったか

こうした中、メッセンジャーアプリのLINEが、同日、23時16分に、「LINE Out」の通話料を最大10分まで無料にする施策を発表した。LINEとしては善意から始めたこともうかがえる上に、ネット上では称賛の声も挙がっている。一方で、LINE Outの無料開放には、大きな問題もはらんでいる。結論から言うと、これは、善意でも絶対にやるべきことではなかったサービスだ。

LINE Outは、仕組み上、発信側がデータ通信を使い、一般的な携帯電話や固定電話に着信する。いわゆる中継電話と呼ばれるサービスと、LINEの音声通話のようなIP電話サービスを組み合わせたものと言えるだろう。LINE同士でつながっていない人や施設にまで電話することができるのが、大きな特徴だ。

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通常の電話への発信が可能なLINE Out

ただ、全国に向け、無料開放を発表してしまうと、被災地への発信がさらに増えることが想定される。その際に圧迫されるのは、被災地側の電話網だ。一般的に、災害時は、被災地からの発信以上に、被災地への安否確認やお見舞いの電話が殺到する。

総務省の資料によると、東日本大震災発生時には、ドコモで通常時の最大50倍から60倍の通信量が発生したと記載されている。当時は基地局の倒壊や、電力源の喪失もあり、通信状況はさらに悪化していた。東日本大震災の教訓を生かし、緊急時に利用できる大ゾーン基地局の導入や、非常用電源設備の増強などは行ってきてはいるものの、トラフィックが増える傾向に変わりはなく、緊急時の通信に完全に耐え、平時と同様に通信できる設備を作るのは困難だ。

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総務省「大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方」別紙3

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総務省「大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方」別紙3

このようなときに、音声通話網に接続するLINE Outを推奨するのは、厳しい言い方をすると「通信の妨害」にもなりかねない。テレビでも「不要不急な電話はお控えください」と訴えている中、逆に「じゃんじゃん電話してください」と言っているに等しいのだ。当のテレビまで、そのLINE Outの施策を取り上げたのは非常に残念だった。

災害時の行動はきちんと準備しておくべき

仮に善意から出た行動だったとしても、災害時に、こうしたスタンドプレーは厳に慎むべきだ。そのためには、平時に、災害時を想定した行動やサービスを決め、しっかり準備しておくことが必要になる。

通信事業者と連携して安否確認可能な掲示板を立ち上げたり、現在のステータスが一目で分かるようにしたりと、やれることはもっとほかにあったはずだ。少なくとも、データ通信網を使ってトラフィックも少ないメッセージサービスへユーザーを誘導をするのは、事業者としての責務と言える。

かつて筆者が幹部をインタビューしたときにも語られていたが、LINEは、東日本大震災を機に企画されたサービスだという。また、LINEは日ごろから、「インフラ」を標榜している企業でもある。こうした発言の数々が口先だけと思われないためにも、災害時を想定した準備はきちんと行っておくべきだった。

また、LINEの後追いをする事業者も出てきている。楽天も同様に「Viber」の通話料を無料にする施策を発表したが、同様の理由で、通信混雑を助長しかねない行為は慎むべきだ。

(2016年4月15日「Yahoo!ニュース個人(石野純也)」より転載)