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世界から忘れ去られたもう一つの大虐殺-平和を願うブルンジのハチミツ

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「アフリカの大地で起きた大虐殺(ジェノサイド)」と聞いたら、あなたは何を思い浮かべるだろう。
きっと、20世紀アフリカ最大の悲劇とも呼ばれる、ルワンダ大虐殺が頭に浮かぶかもしれない。

1994年、フツ人系の政府とそれに同調する過激派フツ人の手によって、100日間で少数派ツチ人と穏健派フツ人約80万人が殺害された。同年4月にフツ人系大統領が何者かに暗殺されたことをきっかけに抗争が激化。ツチ人系のルワンダ愛国戦線 (Rwandan Patriotic Front) が同国を制圧するまで虐殺は続いた。

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虐殺の跡地に安置された犠牲者の遺骨。老若男女問わず、100日間で80万人もの人々が虐殺された。(photo by Kanta Hara)
 
 
2004年のアカデミー賞でノミネートされた作品『ホテル・ルワンダ』でも映画化されており、多くの人がこの悲劇について一度は耳にしたことがあるだろう。

一方で、国際社会から忘れ去られたもう一つの大虐殺がある。それはルワンダの隣に位置する、ブルンジという小さな国で起きた。しかし、このブルンジで起きた大虐殺にメディアの光が当てられることは、ほとんど無い。

 

奇跡のルワンダ、最貧国のブルンジ


100日間で80万人の犠牲。ルワンダ大虐殺での死亡率は、第二次世界大戦中にナチス・ドイツによって行われたユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の3倍に匹敵するとも言われている。

ルワンダ大虐殺の伏線に対する国連の判断ミスや、アメリカの躊躇と安全保障理事会の無機能など、国際社会はルワンダ大虐殺において「大失敗」を犯した

フツ人とツチ人の停戦を監視することのみを目的とするように命令が与えられていた国連平和維持活動(PKO)もほとんど為す術がなく、結果としてわずか100日間で80万人以上が殺害された(詳細→なぜ「世界」は80万人の死を防ぐことが出来なかったのか?―ルワンダ虐殺から22年(後半))。

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一夜にして45,000人もの人々が虐殺された技術学校の跡地(photo by Kanta Hara)
 
 
国際社会はその「反省」を活かし、紛争後のルワンダには莫大な援助を投入。「アフリカのシンガポール」と言われるほど、近年のルワンダは著しい経済成長を見せている(関連記事→なぜ欧米諸国はルワンダ大統領ポール・カガメの「独裁」を黙認し続けるのか?

その一方で、隣国ブルンジは未だ世界で最も貧しい国の一つだ。2015年の一人当たりGDPは対象188か国中188位と、世界最下位となっている。また、最近では干ばつと洪水の影響によって約60万人が食糧不足となっており、「食の安全保障」は極めて深刻な状態だと指摘されている。1000人中142人もの子供が5歳の誕生日を迎えることが出来ないのも、特筆すべきかもしれない(2013年統計)。

忘れ去られたブルンジ大虐殺


ブルンジはルワンダと同様、ベルギーの植民地下でツチ人とフツ人という2つの民族対立が煽られ、独立後も両民族の間では緊張と対立が続いていた。

独立後、ルワンダでは多数派のフツ人が政権を担ったのに対して、ブルンジでは植民地下での構造を引き継ぎ少数派であるツチ人が支配を続けた。この支配に対して、1972 年にはフツ人がツチ人に対して反乱を起こすも、それに対する報復としてツチ人系政権は約20 万人のフツ人を数ヶ月で殺害。また、1988 年にも5 万人の民間人が虐殺されており、多くの難民が近隣諸国へと逃れた。

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ブルンジの風景(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)
 
 
長年続いた「ツチ人対フツ人」の対立構造。両者の緊張も、1993年の民主的選挙によってフツ人のンダダイエ大統領が歴史的勝利を収めたことを受けて、一件落着かと思われた。しかし、就任わずか4ヶ月にして同大統領がツチ人強硬派によって暗殺されると内戦が勃発。さらにその翌年4月には、ルワンダ大統領と共にフツ人系のンタリャミラ大統領が何者かによって暗殺され、内戦が激化。結果として30万人もの命が奪われ、40万人のフツ人の人々が難民として国外に逃れた。

また、内戦中は最大14,000人の子どもたちが戦闘に駆り出されており、その多くがわずか12歳前後だったとも言われており、多くの子ども兵が紛争に関わっていた。

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子ども兵(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)
 
 
しかし、『ホテル・ルワンダ』や『ルワンダの涙』といった映画や、ドキュメンタリーなどでルワンダ大虐殺が扱われる一方、ブルンジでの悲劇がメディアに取り上げられることはほとんど無い。内戦で数え切れないほど多くの人々が犠牲になったにも関わらず、ブルンジ大虐殺は国際社会から忘れ去られていった。

平和を願う蜂蜜「アマホロ・ハニー」


1993年からの紛争で30万人以上の命が失われたブルンジ。2000年以降の和平交渉は難航するものの、2000年代末になって反政府軍側の武装解除も進み、治安も段々と回復していった。

この紛争の影響を最も受けた地域の一つムランビヤ県で現在、認定NPO法人テラ・ルネッサンスの支援の下、貧困層及び紛争の被害を受けた人たちによって平和を願う蜂蜜「アマホロ・ハニー」が作られている(アマホロとは、現地の言葉で「平和」という意味)。

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ハチミツを生産するブルンジの人々とテラ・ルネッサンス理事長の小川真吾(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)
 
 
ブルンジでは、昔からハチミツは医薬品や栄養価の高い食品として消費されており、栄養失調や乳幼児死亡率の高いこの地では重宝されている。収入とするのみではなく、自分たちが活用することもできる。元々この地に根付いていたハチミツ、その「伝統」にテラ・ルネッサンスは目を付けた。

「ブルンジの人々が養蜂の技術を得て、自分で生計を立てられるようにする」という目標を掲げながら、テラ・ルネッサンスでは地元の人々が助け合いながら安定した生活を送る事を目指し、養蜂技術を身につけるように支援を行ってきた。

現地の人々がハチミツの生産技術を身につけ、それを現地の産業として根付かせることで、労働者は自ら収入を得て生活ができるようになる。よく言われるように、「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」のだ。しかも、この「釣り方」は決して外部から持ち込んだものではなく、彼らが昔から受け継いできた「釣り方」でもあった。

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(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)
 
 
テラ・ルネッサンスが大切にする支援の在り方、「自立と自治」。ブルンジの人々が、自分たちで生産→販売→消費する"地産池消"が大切なのだ。

そしてプロジェクトの開始から半年後の2014年11月、ついに村人たちがハチミツを生産できるようになり、販売が始まっている。

しかも成分分析の結果、このハチミツはミネラル類が非常に高く、糖度も82%を超えるほど上質なものということが分かった。昨年生産した分は1ヶ月で売り切れるほど人気の商品となっている。

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アマホロ・ハニー(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)
 
 
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このブランド名やラベルも対象者のアイデアにより考案された。(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)
 
 
世界から忘れ去られたブルンジの大虐殺。そこには数え切れないほど多くの苦しみと悲しみがあったはずだ。

その「絶望」とさえ言える状況から、力強く立ち上がる人々。平和を願うハチミツ。

テラ・ルネッサンスが促進する「自立と自治」、その先に広がるブルンジの人々の笑顔は、いつしかアフリカが失ってしまった「誇り」を映し出しているのかもしれない。

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(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)
 
 
記事執筆者:原貫太
1994年、神奈川県生まれ。早稲田大学文学部社会学コース4年。認定NPO法人テラ・ルネッサンスインターン生。
大学1年時に参加したスタディーツアーで物乞いをする少女に出逢ったことをきっかけに、「国際協力」の世界へと踏み込む。2014年に学生NGOバングラデシュ国際協力隊を創設、第一期代表。国内での講演多数。
交換留学生として、カリフォルニア州立大学チコ校にて国際関係論を専攻。帰国後、赤十字国際委員会駐日事務所や認定NPO法人テラ・ルネッサンスでインターン生として活動。政治解説メディアPlatnewsでは国際ニュースの解説ライターを務める。
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(photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)