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デュアルユース技術の推進がイノベーションを起こすー防衛装備庁シンポジウムで講演

2015年12月07日 02時45分 JST | 更新 2016年12月05日 19時12分 JST

インターネットやGPSなど、もともと軍事技術として開発され、今や私たちの生活に欠かせない民生技術として定着した例は多い。このように、ひとつのテクノロジーが、民生としても軍事としても利用できることを、「デュアルユース」と呼ぶ。

東京・市ヶ谷で開催された防衛装備庁技術シンポジウム2015で、11月11日、政策研究大学院大学の角南篤教授が、「デュアルユース政策 デュアルユース・イノベーションシステムの構築に向けて」とした講演を行った。

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講演をする角南教授。

「デュアルユース」の考え方はもともと、豊富な軍事予算を持つアメリカで、ハイリスクだがイノベイティブな研究開発を牽引してきた。だが高度にテクノロジーが発展した昨今では、たとえば3Dプリンタや宇宙技術のように、技術から軍事・防衛への応用も可能になる方向性も出てきた。それを踏まえて、イノベーションの推進には、ハイリスク・ハイコストな研究開発を推進するために、民生・防衛の別け隔てなく官民で取り組むデュアルユース政策が必要だと、政策大学院の角南教授は強調する。

■アメリカで技術開発を牽引してきた「デュアルユース」


講演では、まず角南教授のアメリカでの科学技術政策の研究経験を踏まえて「デュアルユース」の考え方について紹介があった。

民生用でも軍事用でもどちらでも使える技術のことをデュアルユース技術と呼ぶが、アメリカでは、長く国防総省の研究開発プログラムが担ってきた、軍事技術から民生技術へのスピンオフがイノベーションを牽引してきた。

アメリカの国防総省は7〜8兆円という巨大な予算を持つ。国防総省でハイリスク研究を担う国防高等研究計画局(DARPA)の研究開発予算だけでも約3000億円だ。この予算は企業や大学・研究機関などに配分され、それによって企業の先端技術開発を政府が支える構造になっている。「アメリカ全体の産業を底上げしてきた」(角南教授)。

その巨額の予算が、ハイリスクだが実現すれば社会にとってハイインパクトでイノベイティブな研究開発を可能にしていると角南教授は指摘する。

従来デュアルユースと言えば軍事技術の民生応用というスピンオフが言われることが多かったが、民生技術が高度化した現在では、逆に「民生技術を軍事用途へのスピンオンが避けられなくなっている」(角南教授)。その現れとして、最近DARPAがシリコンバレーへオフィスを作ったことが挙げられた。シリコンバレーではITベンチャーを始めとして数多くのイノベーションが生まれている。「軍事技術開発だけではなく、研究開発の源であるシリコンバレーのダイナミズムを取り入れないとついていけなくなっている。DARPAもシリコンバレーでの連携を模索して、ちゃんとウォッチするようになってきた」(角南教授)。

一方で、技術のイノベーションの文脈ではしばしばゲーム・チェンジャー技術やクリティカルテクノロジーと呼ばれる革新的な技術開発が求められている。「これからの技術を語る上では、デュアルユースの技術が次の技術政策が欠かせなくなってきている」(角南教授)。

■日本の先端技術開発の厳しい現状


日本の先端技術開発力は、国際的に低下している。ここ数年は論文数が伸び悩み、投資を拡大している中国などから大きな差をつけられ、相対的な研究開発力は低下している。

その理由のひとつとして、企業の研究開発費が低下していることがあげられる。市場の競争力が働きにくい先端技術や基礎研究では、民間企業の研究であっても、国の投資で支援される。また、防衛技術は安全保障の一環として国として研究開発を推進していく分野だ。

「政府の科学技術はこれまで民間の活力にキャッチアップしてきたが、これからもハイリスクでインパクトのある技術開発を民間企業に頼っていけるのだろうか?リーマンショック以降、大きなインパクトを受けたのが民間企業の研究費削減だ。そのギャップを国が埋め切れていないのが我が国の問題だ。問題意識としては、政府から研究開発で企業に流れるお金が日本はアメリカと比べて少ない。ハイリスク研究はそこで、デュアルユース政策として、官民が連携して進めていくべきだ」(角南教授)

■官民がハイリスクでイノベイティブな研究開発に取り組むための「デュアルユース政策」


近年、民生と軍事・防衛の技術は境目がなくなってきつつある。たとえば、ビッグデータ、3Dプリンタ、宇宙開発、合成生物学、サイバーセキュリティなどの技術開発だ。「これらの研究開発を推進する政策は、常にデュアルユース政策としてのインプリケーションがあることを考えないといけない。もう一度、デュアルユース政策としてとらえなおす必要があるのではないか」と、角南教授は指摘する。

技術開発によるイノベーションには、最先端のハイリスクの研究が必要だ。それらの研究開発により勝ち残ることが、資源の少ない日本の産業競争力の強化につながる、と言われてきた。日本の科学技術政策は、その考えのもとで進められている。

「今不十分なのが、技術情報の収集、管理、分析、戦略立案というメカニズム。これまでデュアルユース政策という視点がなかったが、デュアルユース政策として考えるとこれらのメカニズムをどのようにして実現するかがカギになる。デュアルユース政策とは、ハイリスク・ハイコストの研究開発を、民間と公的部門の壁を取り払って新しい効率的な連携システムをつくることだ」と角南教授は主張する。

その実現に必要なのが、技術の選定にかかわる外部有識者、民間企業による投資・コミットメント、長期的で広範な経済効果、明確な事業目的とゴールポストの設定、日本の企業・研究者・技術開発者が主要アクターとした。

また、そのようなデュアルユース・イノベーションシステムのためには、司令塔となる組織を作る必要があると提言して、講演が締めくくられた。