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「LGBT差別禁止法って意味あるの?」専門家に直接聞いてみた

2015年10月14日 15時19分 JST | 更新 2016年10月12日 18時12分 JST
TORU YAMANAKA via Getty Images
Participants in fancy dress march during the Tokyo Rainbow Pride 2015 parade in Tokyo on April 26, 2015. About 3,000 people took part in the annual gay parade, amid growing calls for more legal protection for the sexual minority. AFP PHOTO / Toru YAMANAKA (Photo credit should read TORU YAMANAKA/AFP/Getty Images)

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LGBT差別禁止法

「LGBT差別禁止法」。LGBT法連合会が提案しているのは、果たしてどのような法律なのか、もし成立して施行されたら、その時のメリットはなんなのか、全く何も知らない大学生の筆者が直接取材してきました。LGBT法連合会のHPでは、日本で必要となると提案している差別禁止法の考え方について、さらに詳しい内容とデータをご覧いただけます。

直接取材させて頂いた方: LGBT法連合会のみなさま

スキャン_20151008 (2) 池田 宏さん:ニュージーランドで同性婚しているゲイ。特別配偶者法全国ネットワーク(パートナー法ネット)共同代表

スキャン_20151008 (3) 大江 千束さん:レズビアン。セクシュアルマイノリティためのスペースLOUD代表。

スキャン_20151008 (4) 筆者:Xジェンダー。大学生。

寺田さん:ゲイ。EMA日本 理事長。

スキャン_20151008 (9) 神谷 悠一さん:ゲイ。LGBT法連合会事務局長

Skypeで参加して頂いた

1 岩本 梓さん:トランスジェンダー。レインボー金沢スタッフ(LGBT法連合会担当)

Q. なぜLGBT差別禁止法が必要だと思ったのですか?

差別禁止法とは

寺田さん:私たちはどうして、このような活動をしているか。LGBTに対する差別をどうにかしようとする団体が全国津々浦々たくさんあり、取り組んでいる企業もあります。全体的にはいいことだと思うけれど、ただ、その中でなかったのが法律を変えるということでした。社会に訴えて理解をしてもらうというのは大切だけど、法律がないと。例えば大きな差別問題を引き起こした人を処罰する強制力がない。たまたま法律ということに多少経験なり知識のある団体がやらなきゃいけないな、と思い、今年始めました。

スキャン_20151008 (2) LGBTの当事者の中でもパートナー法や同性婚は話題になるけれど、差別禁止法を身近に感じない人もいる。オシャレなことには興味があるけれど、「差別」って言葉もついているし、私には関係ないわみたいに思う方もいる。とっつきにくいところはあるんです。GID(性同一性障害)の法律はあるんだけど、その他の問題については、法的根拠がないから対策が打てないみたいな反応が行政から返ってくることが多い。学校で教えてほしい、という要請をしても「法律にない」という返事がある。

Q. 日本のLGBTへの現状ってそんな悪いんですか?

2

スキャン_20151008 (9) 生きやすいところや居場所が水玉のようにぽつぽつあるだけで、他はまだ苦しい、生きにくいという感じではないでしょうか。都会はいいけど、地方は苦しいとか。ヨーロッパ、全てのEU加盟国では差別禁止法があります。ところで、カミングアウトできるようにならないと、パートナーシップも難しいんですよね。差別禁止法はカミングアウトできる社会を作る法律でもあります。法律作るのなんて関係ないやって思ってる当事者の中には、自分をさらさない(カミングアウトしない)で生きている人もいるでしょうし、さらせない(カミングアウトなんてできない)でしょって思っている人もたくさんいると思います。そういう人の中でも、居酒屋とか飲み会でホモネタ・レズネタ嫌だなって思ってるけど、しょうがないと諦めてる人は多い。差別禁止法は、「ホモネタ」や「レズネタ」のようなハラスメントをなくす効果もあるので、こういう人ほど対象になるんです。

スキャン_20151008 (2) 企業は、法律をすごく気にします。法律の中に「企業も手を打つことが義務ですよ」と書かれたら、勉強して啓発して、きちんとやるでしょう。文句を言われない存在になろうと努める。まず大企業からであっても、徐々にあらゆる企業がきちんと対策を取るようになる。経営者や責任者は、普段の言動を振り返って改めるようになる。

スキャン_20151008 (3) 性同一性障害の性別変更のための特例法についても、司法が立法に期待した側面があって。当事者の方々が性別変更したいと訴えをおこしたが、家庭裁判所では判断がつかなかったんです。立法化することによって、世論の社会的容認も少しずつであっても広がっていく。最初は職場や学校内の環境改善からかもしれないし、遠回りかもしれないが、パートナー法や同性婚も最終的には立法できるはず。

スキャン_20151008 (2) 最初は同性婚やパートナーシップ法がやりたいと思って、政治家に接触を始めたんです。「外国はそうかもしれないけど、伝統的な日本の良い家族観を壊すな。私たち日本人には日本人らしい価値観があるからダメ」と、水掛け論になってしまった。同性婚やパートナーシップを訴えるだけでは保守的で政権を担っている方々の、そもそものLGBTに対する理解が上がっていってくれないわけです。男女雇用機会均等法が制定されるまで、女性を男性より劣ったもののように扱ってきました。しかし人々の認識に、それはだめだと浸透していきましたよね?LGBTの場合も、それが起こるわけで。みんなの意識の水準が上がって、次のステップとして同性パートナーを受け入れていこうとなる。

スキャン_20151008 (9) ビジネスの観点から言えば、差別禁止法がないと、なかなかLGBT向けのサービスが浸透していかないと思います。サービスを使うには「自分がLGBT」とカミングアウトする必要がある。けれど、差別や偏見が多ければ、中々カミングアウトできないし、しようとも思わないかもしれない、結果サービスも使えないし、使わない。セクシュアリティを公にできない人はまだまだ沢山いると思うんです。逆に差別禁止法が出来て、差別や偏見がなくなれば、カムアウトのハードルも下がり、例えば「LGBT」向けのサービスを使える人も増えていくと思います。母集団が増えないと、LGBT向けビジネスもどっかで頓挫してしまう。LGBT向けサービスを使う人も少ない、みたいな話になって、行き詰ってしまう。

1 私は地方にいますが、「海外はそうでしょう、東京にはLGBTもいるでしょう、でも地方は違う」という反応をされます。実際には地方にもいるけれど、なかなかカムアウトできないし、存在が目に見えないので現状が前に進まない。だからこそ全国で一律に、企業も学校も自治体も対応しなきゃいけないですよ、とルール化してほしい。そうすれば仕事でLGBTに接する人々も対応しやすくなるし。

スキャン_20151008 (2) いろんなLGBT当事者に、なんでカムアウトしないのって聞いたとき、「親が悲しむ。友達・同級生にいじめられる。出世できなくなったり、職場に居づらくなったりする」という答えが思いつきますね。この状況は、差別禁止法が出来ても、あっという間には変わらないかもしれないけど差別禁止法は第一歩だと思う。昔、私より年代が上の人たちは、職場で「女性を女の子って言う」雰囲気がありました。女の子のお尻くらい時々触って冗談で和ませるほうがいいと、本気で思っていた上司もいたくらいです。LGBTに対しても、冗談やハラスメントとかをやってはダメだと(笑)出世できない、と思えるだけで全体が変わっていく。ただ、法律の効果でどれだけの当事者が安心してカムアウトできる状況になるかは、私もわからないですよ。

1 昔だったら、学校で男の子が女の子のスカートめくりをしても、元気がいいと大目にみられることもよくありました。今は変わりましたよね。男の子も女の子も先生も、それはセクハラでだめなことだと知っている。でもLGBTには、いじめや差別をしても、許されたり見逃されたりしています。差別しているということに気付いてすらいなかったりしますね。

Q. 昔はもっと酷かったんですか?

スキャン_20151008 (2) 誰かの言葉遣いが女の子っぽいとか男の子っぽいとか、昔は、それを指摘することが差別だとすら思わず多数派は言っていましたよね。先生や大人たちはそれを指摘すること自体が教育だと思っていたりしました。その人のアイデンティティだから尊重しなきゃという考え方はなかった。私の両親には、ありませんでした・・・。

スキャン_20151008 (4) うちもそうですね。Xジェンダーの私が、あまり自覚がなくとも男性っぽくなっていく。「声を高くしてしゃべれ、気持悪い」とか、「女なんだからこれ以上背を伸ばすな」とか、毎日いろいろ言われました。心理的虐待の被虐待児として診断を受けました。田舎の山奥の300年続く家なので、お墓を守ってねとか言われて育ってきました。3年前は自分を「オレ」と呼んでいたこともありましたが、帰省したときにひどく怒られました。今はもっと仲良くなっていますけれどね。親戚には、セクシュアリティの話をしないでと言われることもあり、親戚の集まりではタブーになっている。そう言ってくる中には、実際にLGBTと親しい人もいる。LGBTが嫌いというよりは、田舎の空気を理由にして拒まれていると思います。

スキャン_20151008 (2) この法律の効果が出るのが比較的早いのは企業とか学校だと思う一方、最後に偏見が残りかねないのは家族ですよね。例えば、あなたの親に育て方を指図できる人はいないし。ただ、自治体の相談機関に行けるようになる。小さな町や村だったら、相談機関の人が親戚だったらどうしようとか、なかなか難しいところもあるけど。男女雇用機会均等法が始まる前、つまり私たちの世代だと、「女の子に勉強させてどうするの」という感じがありました。変に知恵をつけたら面倒くさいからと、大学行かせないとか。昭和30-40年代のことです。最後になっても、この法律による効果は、家族まで波及してほしいですね。

スキャン_20151008 (4) 私は美大生ですが、先生たちは偏見はないけど知識もないです。アートの世界なので、LGBTの友達がいるから偏見はない。でも、生活の中で、ストレートの人がLGBTの知識を求めにいくのはすごい大変だろうという感じを受けます。その辺りも改善されますよね。また、ボランティア先の市会議員事務所で勝手にアウティングされたことがあります。議員さんにカムアウトしたら、知らないうちに事務局長に伝わっていた。尊敬している2人だからいいんだけど、一応「本人に承認を取らないでアウティングするというのはタブー行為ですよ」と説明しました。

Q. 政治や企業はどう動いているのですか?

スキャン_20151008 (2) 今、我々から国会議員に対して、LGBTとは何かの理解を深めていただくよう、働きかけを進めています。性的指向や性自認という言葉や概念をご存知かと思いきや、話を聞いてると勘違いしているまま、喋っていたということがあった。差別禁止法が施行されたら、「知らないままじゃまずい」と思い始めてもらえますよね。法律ができたら、「マニュアルを作ってほしいとか、トレーニングしてほしいとか、管理者向けの話とか」要請が来るようになると思うし、実際、意識の進んだ企業からは既に要請が来始めています。

スキャン_20151008 (9) 私も先日、さまざまな企業の人事向けにLGBT研修をさせて頂きました。社内のハラスメント規定の具体的な作り方を講義したり、トランスジェンダーのトイレをどうすればいいのか分からないので教えてほしいと声がありましたね。でも、差別禁止法のような法律ができれば、これが関心のない方にも取り組んでもらえるようにさらに広がるというのが法律のできるよいところではないでしょうか。

注:「LGBT法連合会」の正式名称は、「性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会」であり、ここで説明している「LGBT差別禁止法」の正式名称は「性的指?