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あなたの脳を支配する、もう一つのSNS

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■えっ、恋愛を阻んでいるのはフェイスブック?

新成人の2人に1人が「恋愛経験なし」(結婚相談所オーネットによる調査:今年1月に成人式を迎えた男女800人に対し、昨年12月に実施)。
あちこちで取り上げられているので気になっていたら、アメリカの若者の調査も目にとまった。フェイスブックが失恋の傷から立ち直りにくくさせている、という仮説だ。

被験者が24人と少ないのでアカデミックに扱うことはできないが、デジタル世代の若者たちは、恋人との“思い出のデジタルデータ”を破棄できない? という参考情報にはなる。

カリフォルニア大学サンタクルーズ校のスティーブ・ホイテッカー教授によると、失恋経験のある24人の学生のうち、「別れた相手に関係している写真などのデジタルデータを、すべて破棄する」と答えたのは12人。残り半分の学生のうち8人は「捨てずに残しておく」、そして4人は「残すものと捨てるものを選り分ける」と回答した。
そして私がもっと驚いたのは、すべて破棄すると答えた学生の多くが「データを削除したことを後悔した」と回答していることだ。

彼らの心の奥底にはふれられていないが、そもそも昭和の恋唄のように、「思い出の手紙を焼やして旅立つ私~」になれないのが、デジタル世代だ。
たとえ捨てたつもりでも、誰かにシェアしたせいで実は保存されていて、忘れた頃に戻ってくることもある。別れた彼女(彼氏)が他の男(女)と笑顔でピース!な写真が、ネットで別の“お友達”のタイムラインに流れることもある。

デジタル世代の記憶は、アナログレコードとカセットテープで育った私の失恋のように、簡単に色褪せることがない。少なくともテクノロジーの理屈としては。

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■もっと厄介な、あなたの知らないSNS

だが、脳の働きに目を転じると、これは単にテクノロジーの理屈で終わらない可能性がある。

脳の中で記憶に大きく関わっているのが海馬という場所だ。ある体験や仕入れた知識などを、海馬は短期記憶用の貯蔵庫に入れる。また海馬では、それが重要な情報か否かを判断して、残すべきデータを選別する。
当人自身と同じように、その人の海馬もデータの取捨選択に頭を悩ませるのだ(頭そのものだけど・・・)。

さてここで重要な問題が浮かび上がる。当人ではなく当人の海馬は、何を基準にデータを選別するのだろう。ポイントは一つ、その情報が繰り返し入ってくるものか否かだ。

別れた相手との恋の痛手は、液晶画面に浮かび上がるたびに「忘れてはいけない大切な情報」と判断され、側頭葉にある長期記憶の貯蔵庫へと、海馬は確実にデータを送り込むのだ。
そこに追い討ちをかけるのが、脳の中にある、もう一つのSNSの働きだ。それは交感神経系(Sympathetic nervous system: SNS)と呼ばれる自律神経で、身体を興奮状態にする役割をはたす。
朝の通勤・通学時から深夜の就寝前までオンライン状態で、物理的にも心理的にも刺激をうけつづける生活。そんなデジタルライフでは、交感神経の出番が過多になりやすい。スポーツをしているときなどに分泌される、アドレナリンやノルアドレナリンといった物質が、脳のSNSを常時興奮状態にしてしまう。

こうしてデジタル社会のSNSと脳のSNSがタッグ組み、刺激に囲まれた生活の中で不必要な記憶の刺激が積み重なっていく。

■マインドフルネスで“PNS”を活性化させる

こんなサイクルにはまるを防ぎ、また抜け出すには、SNSとともに働くPNSに働きかける必要がある。PNSとは、もう一つの自律神経である副交感神経系(Parasympathetic nervous system: PNS )のこと。こちらはSNSとは反対に、身体をリラックスさせる働きをする。
いわゆる自律神経失調症の症例に多い食欲不振や不眠症、倦怠感などは、SNSがPNSを押さえ込み、働き方のバランスが狂っている状態から生じることが多いようだ。今は特に自覚症状がない人も、自分は無関係と考えるのは早計。なぜなら、人間の自律神経のデフォルトは、「闘争と逃走の神経」とも呼ばれる交感神経系が優位に働くように設定されているからだ。

他の部族や危険な獣などに取り囲まれていた原始の頃には、SNS優位でなければ生き残れなかった。その自律神経のデフォルトのまま、私たちは21世紀のデジタル世界を生きているのだ。
マインドフルネスのトレーニングは、これまで主に身体症状としての自律神経の乱れ、心的な症状としての躁鬱などの治療に組み込まれ、世界的に普及してきた。そして現在、表向きは健常で、むしろ社会の先頭を走っていたりする人に向けて、新たな処方が始まった。
その目的は、“いっけん元気な人たち”の脳の神経回路を更新すること。そう言っても過言ではないと思う。
なぜなら、社会や会社をリードする人たちのバージョンアップこそが、少々病み始めたデジタル社会という生命体の、根治療法につながると考えられているからだ。

(一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート理事 吉田典生)

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