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福島・浜通りから~相馬市の空間線量は西日本と大差なく - 坪倉 正治

2013年11月17日 02時08分 JST | 更新 2014年01月15日 19時12分 JST

この原稿は朝日新聞の医療サイト「アピタル」より転載です。

南相馬市立総合病院

非常勤内科医 坪倉 正治

2013年11月15日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  

相馬市でのガラスバッジ(外部から被曝する放射線を測るガラス線量計)の検査結果が公表されました。乳幼児から中学生、妊婦の計3,173人を対象に平成2013年5月から7月までの3カ月間に行われた計測の結果です。

相馬市では年に1回ずつ検査が行われていますので、これで3回目です。

このガラスバッジの結果は、コントロールバッジ(自然界にもともとある放射線量のこと)からみて、外部被曝がいくら増えているかを示しています。コント ロール値は震災前の茨城県の大洗の空間線量がベースになっており、約0.5mSv/年からどれだけ増えているかを示します。なお、年間の被曝線量は、3カ 月の計測期間分を単純に4倍して計算します。

全体の値は、年を追うごとに下がってきていることが分かります。相馬市では年間の追加被曝が1.6mSv/年を越える方を重点的にフォローしていました が、今回の計測に参加された方の中には、それを越える方はいらっしゃいませんでした(81名→16名→0名となりました)。

過去の空間線量より値が上がったことは確かだと思いますが、すでに相馬市の町中では、西日本の線量と大差がない場所が多くなったと言っても過言ではないで しょう。知り合いのお母さんの中に西日本のある地域にお姉さんが避難されていた方がいたのですが、同時期にガラスバッジを持っていると、相馬市在住の妹さ んより高くなったという例も出ています。

値は人によって異なるので、この話は一般論とはもちろん言えません。これで事故の影響は無いと言い切るのは、また違うと思います。

100mSvの云々や、20mSvに設定しなおして......とか、LNT(しきい値無し直線)で考えるとゼロだとは言えないとか、色々言うことはできます。とはいえ、今回の結果では大多数がそのレベルの範疇にはありません。

もともと放射線がゼロの場所は存在しません。ある程度のばらつきが国内であろうと、国外であろうと存在します。現在の相馬市内の線量は、日本国内にある外部被曝線量の差の中に治まるレベルになりつつあります。

インドのケララやイランのラムサールのような、もともと自然放射線量の高い地域に住んでいる人もいるといった例を出す必要すらないレベルです。アメリカに住んだ場合の平均被曝量より低くなる方がほとんどなのです。

ただ、いくつか注意も必要です。第85回、第86回でもご紹介していますが、これは小児の結果なので、恐らく住民全員を検査した場合はもう少し高めの値になるだろうとみられます。子供は昼間に学校に行っているため、遮蔽される場所にいる時間が長いからです。

大人で特に昼間に山間部などで作業される方は少し高めになることもあり、個別で対応が必要な場合があります。

今回の最高値は約1.5mSv/年程度でしたが、その方は乳幼児で、ご兄弟も同時に測定していました。ご兄弟は学校に行っているためだと思いますが、この乳幼児の半分くらいの値でした。やはり長時間滞在する場所の線量が重要なのです。

(すでに十分低い値だと考えていますが)この家庭は、家の周辺の除染が終わり、家の中の線量も測定し、どの場所に子供さんを寝かしていれば一番線量が低く なるかなどもチェックした後でした。たとえ家族の方から「さらに下げたい」という要望をいただいても、さらに線量を下げることは、現実的になかなか厳しい かとも思います。

県内の他の市町村では、全体の平均は相馬市より高い場所も多く存在しますが、全体の平均値は下がってきています。子供に関して言えば、その多くが、ガラス バッジで年間追加被曝線量が日本国内にある外部被曝線量の差の中に治まるようになってきています。かといって、全員低いとしてしまうことなく、高い方から 順番にフォローしながら、検査を続けていくことが必要だと思います。

写真: 東京大学医科学研究所でシンポジウムがありました。今後の福島県の教育について、先生たちが議論を戦わせました。

http://apital.asahi.com/article/fukushima/2013111400010.html

(※この記事は2013年11月15日発行のMRIC Vol.282 「優秀な医療機関はごく一部、医療のビッグデータが示す現実とは」より転載しました)

福島第一原発事故