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政府にも企業にもできなかったことに挑戦し 日中を親友同士にしたい ーー 顧しょうたさん

2014年02月03日 20時15分 JST | 更新 2014年04月05日 18時12分 JST

日本で2014年を迎えてから1ヶ月、中華圏を中心としたアジア各国で"旧正月"を迎えました。皆様、改めて「明けましておめでとうございます!」

そこでハフィントンポストの読者の皆様には、My Eyes Tokyoがかつて行った、旧正月をお祝いする国々にまつわる方々のインタビューをお送りしたく思います。複数人を予定しておりますが、まずお1人目は、中国と日本にそれぞれほぼ同じ年数生活した経験から、日本と中国、そして日本人と中国人をリアルとバーチャルの両方でつなぐ活動をされている方をご紹介します。中華精英会代表の顧しょうたさんです。300年という長期スパンで物事を考えられている顧さんが目指す、日中関係の在り方を伺いました。

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私はある日、1通のメールを受け取りました。「新しいメディアを立ち上げるので、意見を聞かせてほしい」- それが、今回のインタビュー相手である顧 瀟燾(こ・しょうた)さんでした。

顧さんとは、今年初めの訪日観光客誘致セミナーで出会いました。その時は単に名刺交換だけで終わりましたが、私の存在を覚えて下さっていた顧さんは、拙いながらも自分のメディアで発信を続けてきた私に、アドバイスを求めて下さったのです。

そして約半年ぶりの再会を果たしました。日本と中国での生活年数がちょうど同じくらい、日本語も中国語もネイティブレベルの顧さんは、日本と中国の両方を深く知る者として、これまで日本人と中国人との交流会や、両国をより深く知るための勉強会を開催してきました。そしてもうすぐ、日本と中国の両方を知る者たちが発信するメディアを立ち上げます(*筆者注:2012年にすでに立ち上がっています)。

私は彼の話を聞いて思いました。「私が教えるべきことなど何もない」と。まして顧さんは情熱的な口調で、彼が運営する「中華精英会(China Elite Club *以下"CEC")」の事業や、彼に与えられた使命について話してくれました。そして私は、自分に足りなかったものが何なのかをはっきりと知ることができたのです。

今回のインタビューで、アドバイスを求められたはずの私は、逆に顧さんに勉強させていただきました!

*インタビュー@有楽町

■ 300年かけて実現させたいこと

これまでの歴史を振り返ると、アジアや中東、インド、アフリカなどは全て欧米の論理に従って動いてきました。日本と中国との間にも微妙な空気が流れていますが、でも欧米の論理のもとに生きてきたことでは共通します。

だから私には構想があります。それも、300年かけて到達させる構想 - 欧米とアジアの逆転です。具体的に言えば、欧米人が「生まれ変わったらアジア人になりたい」と思う - それくらいに世界を変化させるのです。そのためには、欧米人よりも先の未来を見つめているアジア人がいることを、欧米の人たちに伝えることが重要だと思います。

ただし、誤解しないでいただきたいのです。私が考えているのは「アジア vs 欧米」の対立を促すことではありません。資本主義も社会主義も完璧ではないように、全てにおいてマイナスの側面はあるのだから、新しい仕組みを作ることでそれらのマイナス面を補っていくのです。

例えば2008年の米大統領選でヒラリー・クリントンがバラク・オバマに敗れた時、ヒラリーはオバマと抱き合いました。それまで散々お互いが論戦し合っていたのに、です。たとえそれが演技だとしても、欧米人が客観的に物事を見ることができる証とも言えます。アジア人にそれができるかと言えば、正直言って疑わしい。

ただ一方で、アジア人は人情にあふれていると思います。欧米人のように合理的で客観的になれない分、利益よりも人情を重要視する傾向にあるように思います。だから社会貢献活動は、本来はアジア人の方が向いているのではないでしょうか。

後で詳しく述べますが、かつて私は日中ビジネスに携わっていました。ビジネス活動をする中で、ますます「大事なのはお金じゃない」という思いが強くなりました。これからのビジネスで重要なのはB/S(貸借対照表)やP/L(損益計算書)に書かれている数字などではなく「どれくらい社会貢献できているか」ではないだろうか。ある会社が上げた利益は、社会貢献をしたことによるものなのか、そうではないのか・・・そのようなことで会社の価値が問われるようになると思います。

■ 真のエリートとは?

私たちCECの強みは、お金が目的ではなく社会に恩返しがしたい人が集まっていることです。フルタイムのスタッフは私だけで、他に10数名の方々が、それぞれの専門分野を生かしたボランティアとしてお手伝いいただいています。

私たちは民間団体でありながら、企業ができないことができる。きちんとこの活動を続けていければ、企業が行う以上の成果を出せるし、企業が得る以上の信頼を得ることができるという自信があります。なぜなら、私たちは目の前の利益を求めてはいないからです。

我々が言う「精英」(エリート)とは、地位や名誉、お金がある人のことでは決してありません。極端な例ですが、儲けたお金を独り占めして豪遊するような人は、果たしてエリートと言えるでしょうか?

私にとってのエリートの定義は、明確に「周りの人たち、そして我々の子孫のための良い環境作りに貢献できる人」です。高学歴や高収入のいわゆる一般的な「エリート」という言葉の意味も、社会や人の進化によって変わっていくでしょう。

お金なんて、元々は価値のないものです。国が紙切れに価値を与え、そして一部の人たちによって、その値打ちを操作されているのです。いま世界中で起きている金融混乱は、まさに貨幣本位によって物が持つ本来の価値が見えなくなったことが原因だと言えるかもしれません。一方で豊かな精神は、たとえ自らの存在が絶えても後の世代に受け継がれ、深みを増していくものだと思います。

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「CEC-True」(大人数イベント)「CEC-More」(少人数イベント)「CEC-HighFive」(娯楽イベント)「CEC-Special」(非レギュラーイベント)など、硬軟織り交ぜたイベントを通じて日中の相互理解を促進する。

写真提供:中華精英会

■ 複数のアイデンティティ、複数の視点

最近、あるドキュメンタリーを撮りました。それは私の母と、旧日本軍兵士だったあるおじいさんの交流の物語です。そのおじいさんは現在福岡県におり、母にとっては「日本のお父さん」的な存在です。戦争というと悲惨さや残酷さばかりが強調されてしまうもの。でも一方で、兵士であれ一般人であれ、戦争に巻き込まれた人の大半が罪の無い市民であり、彼らの間にはそのような美しい物語も生まれているんですよね。

CECが今立ち上げているメディアは「日本にも中国にも偏らず、日中両方を経験した人たちが運営し、日中両方を経験した人たちにフォーカスする、最も客観的な日中メディア」を目指しています。有名人だけを取材対象にせず、出身地、性別、業界、業種、ポジションなどあらゆる属性を満遍なく、日中に関わる人たちを取材します。

私たちは既存メディアで報道されなかった、彼らがもつ"私の日中物語"をどんどん発信していきたいのです。そうすれば、どの角度からでも自分に近い人が中国と関わっているんだと気付いてもらえると思いますし、やがてきっと日中の距離がもっと近いものに感じられるはずです。少しでもそのような人たちの存在に興味を持ってもらえればそれでいいと思います。

これからは、一人の人間が複数のアイデンティティを持つ時代になるでしょう。私の場合、中国人であると同時に「東アジア人」「アジア人」という自覚はしっかりと持っています。いつかこういう考えを持つアジア人が増えれば、アジアがもう一度世界をリードする時代が近づくと思います。

■ ビジネスの限界

私は上海で生まれ、そこで14歳まで育ちました。安定した収入を得るために両親が先に日本に渡り、私は両親を追いかける形で、日本に移住しました。

様々な経験をし、前職では某金融グループで中国の銀聯カードのネット決済システムの代理権獲得に携わりました。それにより中国の人たちが自国にいながらにして、手持ちの銀聯カードで日本のお店から買い物ができるようになりました。その後も中国向けのネット通販サイトや、訪日中国人観光客向けのサイトを作り、中国に進出する日本企業向けの市場調査やコンサルティングを行う日中合弁会社の立上げを担当し、その会社の役員に就任しました。在籍していたわずか3年強の間に役員にまで就かせていただけたのは、日本で仕事をしている外国人の中では、比較的成功した方だと思います。それにビジネスで日中をつなぐという私の目標は、ある程度実績として残すことはできたと思います。でも、限界があったのです。

「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」- 有名な孫子の兵法のひとつですが、日本はずっと"彼"、つまり相手を知らずに来ました。中国のことをよく知らない日本企業が仲介に入り、言葉は悪いですが日本企業が日本企業をだましている風潮が目につきました。中国ビジネスを行う前に、普段から中国人との接することが非常に大事です。顔立ちが近いが、価値観や考え方が真逆な場合が多い両国です。会社のトップまたは意思決定者は日中双方をある程度知らないといけないということです。

中国人とビジネスをするためには、まず相手のことを知らなければならない。でも日本企業は、その過程を飛ばそうとする傾向があります。メディアの影響かもしれませんが、中国人に対して一種の恐怖心を抱いています。その状況が続く限り、日中ビジネスがうまくいくわけがないのです。

会社ではいろんな経験をさせてもらい、感謝しています。ただ、日中の間にそびえる根本的な壁をビジネスでぶち壊すことはできないと感じました。日中の根本的な壁を崩していくためには「ビジネスの前に、日中がお互い深く知るダイレクトコミュニケーションの機会を提供すること」が必要だと考えました。それを実現するために私は会社を離れました。

実は、私は自分の利益のためだけには頑張れない人間であり、大きな使命や私の支援者を背負って走る方が、力を無限大に発揮できるような気がしたのも事実です。

■ 日中を"親友"に

私は政府も企業も否定はしません。だけど政治活動と営利活動の二者択一ではなく、私たちが新しい要素を加えていく必要があると思っています。

決して政府や企業が、私たちのやろうとすることができないというわけではありません。しかし政府は国益を追求し、企業は自らの利益を追求します。お互いが利益追求をするようなレッドオーシャンではなく、静かな「ブルーオーシャン」を別に作ろうというのが、私たちの考えなのです。

本当の友人同士なら、何でも腹を割って言い合えるはず。「お前のここがダメなんだ」みたいに・・・でもただ指摘するだけでなく、それを踏まえて「でもお前はこうすれば良くなるんだ!」という建設的な意見が言えるかどうかだと思います。そこまでできるのが本当の友人であり、親友だと思います。私が日中に求めるのは、そのような関係なんです。

先ほども言いましたが、生物が生きる価値はどこにあるか。それは「子孫を残すこと」であり「子孫のためにより良い環境を残してあげること」です。だから大事なのは現在よりも未来です。でも人間は、現実世界ではこれに反した行動をとっています。「自分たちの世代だけ良ければいい」と。

でも一方で、それについて真剣に考えている中国人がいるんだということを、日本の人たちに知っていただきたいし、同じような日本人がいることを中国の人たちにも伝えたいのです。CECは新しい中国人像や中国人のイメージを創っていくことがミッションの一つでもあります。だからもしすぐに理解されなくても、1年後、2年後、5年後、10年後に理解していただけるように努めていきたいと思います。

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東日本大震災で被災した宮城県女川町では、地元企業である「佐藤水産」専務・佐藤允さんが、自らの命を投げ打ち中国人研修生を津波から救った。その恩返しの気持ちを込め、中華精英会の有志が現地でのボランティアに赴いた。この活動は、これまでに2度行われている。

写真提供:中華精英会

日本のこれからについても、本当に考えます。もしもの話ですが、私が日本の総理大臣になったら、政策はひとつだけです。「高校の3年間の課程を廃止し、学生全員を途上国に送り込む」。こうすれば、20年後の日本は絶対に変わっているでしょう。

日本では、アルバイトをしても普通に暮らしていけます。1日アルバイトで働いて1万円を得られる。一方で途上国では、10数時間働いて1000円またはそれ以下しか手に入れることができないかもしれません。それでも現地の人々の目は輝いている。そういう光景を目の当たりにすれば、自ずと生きることの意味を考えるようになるでしょう。それにより世界観や人生観が変わり、自分の進むべき方向も定まってくると思います。

私の運営する会はCEC、中華精英会ですが、日本と中国の関係を変えることができれば、世界を変えることに繋がると思っています。

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顧さんにとって、日本って何ですか?
まず、私の第二の故郷です。日本はたくさん勉強させてもらった場所だし、信頼できる人たちがいる場所ですね。そしてこれから、中国と共に自分の夢を実現するための基礎であり、自分にとって無くてはならない場所なのです。

【顧さん関連リンク】

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(※2012年7月24日「My Eyes Tokyo」に掲載された記事を転載しました)